オールライフマガジンALL LIFE MAGAZINE

「介護現場のストレスケア」その5(人間関係とストレス)

2010年08月01日

介護現場における人間関係とストレス

 これまでのコラムで介護特有のストレスについて述べてきました。そこで、ストレス原因の上位にランクされる人間関係について、介護現場の観点から、もう少し理解を深めてみることにします。
介護現場で特にストレスの原因として反応の強いものから、「上司との関係(上司が相談にのらない、仕事の評価を適切にしない)」、「従事業務の関係(利用者の前では明るく振舞わなければならない)」、「利用者との関係(利用者からの要求が多い:特に居宅、利用者の横暴)」という項目に注目してみると、これらはすべて、人間関係による要因であることに気づくことだろう。
 一般の職場であっても、上司との関係はストレスの原因の上位にランクされることが多い。これは職場という環境がもつ運命であると定義するものがいるほど定番の問題である。基本的には、管理者と使用者という立場のもたらす問題となるが、そこには世代間の考え方や物事の捉え方にギャップがあることも問題を大きくする要因となっている。一般の職場での現象では、管理職(団塊の世代:右肩上がりの成長期に育ち、就業してきた世代)と従業員(バブル崩壊後、かつて経験のないほどの長引く不況により、右肩下がりの現状)の間にコミュニケーションが成立しにくい。それは、管理職側の経験のみを前面に出した発想と指示が、現在の不況下で苦しむ従業員に響かない結果、管理職側から見れば指示した内容が実行されないというストレス原因を持ち、かたや従業員側では指示と現状のギャップに悩み続けるというストレス原因が発生する。お互い歩み寄らず平行線のままであるならば、この職場が崩壊することは容易に想像できる。
 介護現場でも同様である。介護保険前の発想や組織論をもつ管理者と、介護保険によりガラス張りとなったサービス提供に日々努力する職員との間には、やはりコミュニケーションが成立しにくい。その結果、「上司が相談にのらない」、「仕事の評価を適切にしない」などの発言が出てくるのである。


人間関係構築は個人の仕事・・・?

 マネジメントは個人の問題でなく組織の問題である。ということは、組織的に何かをしなければならないということになるはずである。上司と部下との人間関係の構築は、個人の仕事としてそれぞれの力量に任せてはいないだろうか。介護現場の管理者には、冷静に考えていただきたい。現代はストレスの多い社会である。誰もが、自動車や交通機関の数とスピード、建物の数や高層化、携帯電話など通信機器の発達、核家族化による世帯数の増加とトラブルなど数え始めるときりがないほどのストレス要因に囲まれて生活をしている。介護現場というコミュニケーションが大切な職場で、そのようなストレスを抱えたもの同士が、良好なコミュニケーションをもつことが、困難な状況にあるのであれば組織的な一定の介入をすべきである。
 介護職の方々の個々の勉強熱心さには頭の下がる思いである。しかしながら介護現場で活かされているのであろうかと省みると疑問符が付く。職場でのコミュニケーションスキル訓練や上司とのコミュニケーション、部下とのコミュニケーションにおけるスキルを改めて組織的に研修するという環境を整えたいものである。


コミュニケーションは技術・・・!

 最近、ヒヤリハットをはじめ、さまざまなカンファレンスが職場内で開かれている。その現場を覗いてみると、そこには、必ずといっていいほど無口な人たちが存在する。その人たちは、自分の意見を持っていないのかというと、そうではないようだ。では、何が原因であるのか。それは、上司の仕切り方に問題があることが多い。以前、ヒヤリハットについての輪に入らせていただいたときの話である。ヒヤリとしたことハットしたことを、若い職員が発表した。そのときに経験豊かな上司がその発表に対してすぐに対処方法を指示していた。確かに、これでコミュニケーションは成立しているように見えるが、かなり一方的なものであることに気づいていただきたい。この若い職員は、次の瞬間から下を向いて発言をしなくなり、当事者意識という大切なものを徐々に失って行った。この手のカンファレンスは、そこに出席する全員の意見をうまく引き出して、現状を把握し、その現状認識を統一したところで、出席者全員が対処方法を考え、意見を出し合う過程・プロセスにこそ「意思疎通(コミュニケーション)」の意義があるのである。

(監修:アイエムエフ研究所)

以上