オールライフマガジンALL LIFE MAGAZINE

「介護現場のストレスケア」その6(ストレスの理解と環境づくり)

2010年09月01日

ストレスの理解

 今回は、誰もが感じているストレスを理解することで、介護現場における職場の環境作りについて考えることとする。そもそもストレスとは、外部からの一定の刺激に適応しようとする生体内部の反応であると理解して欲しい。そして、その刺激のことをストレスの原因と言う。この原因は、2つに分けることができる、ひとつは、暑い・寒い・うるさい騒音や怪我などに代表される「物理的・生理的」なもの、もうひとつは、仕事や生活上の出来事など本人の解釈や意味づけから影響を受ける「認知的」なものである。前者は、比較的大きなインパクトを持つストレスの原因であり、後者は心理的ストレスなどが含まれるが、具体的な大きさの測定が難しく、個人差もあることから、外から見ると理解に苦しむことが多いのである。


ストレスの影響

 ストレスの反応は三段階で何らかの反応の変化が起こる。風邪の症状のように体が危険信号を発することや、体が抵抗した結果の症状であると考えると解かり易い。第一段階は、ストレスの原因により血圧が急低下するなどの一時的な抵抗力の低下が始まり、次に、それに対して人間のもつ防衛本能が抵抗力を強めていく。ストレスに関するさまざまな研究でも証明をされているが、ストレスによる急性疾患はここで起こると言われている。第二段階では、そのストレスの原因に対して抵抗力が増してゆくので、症状の改善が図られる。しかしながら、別のストレスの原因に対しては、抵抗力が弱まってしまうのである。そして、第三段階では、自分の適応能力を超えてストレスの原因が継続的に刺激を与えた場合には、疲れ切ってしまい、当然のことながら、抵抗力は低下し、急性疾患の症状が再発して衰弱していくという経路をたどる。管理職としては、できる限り早い段階で、職員の異常に気づいて速やかに対処をすることが必要である。その対応が職員を活性化させ、結果として信頼される介護現場と環境を作るのである。既にお気づきのことと思うが、「物理的・生理的」なストレス原因には、物理的な環境整備など軽減策を講じることは容易であるが、「認知的」なストレス原因には、本人の感じ方を変化させることなど、成果の出るまでには少々時間のかかる対処法が必要なのである。それゆえに、研修の導入やこころの専門家の協力を得るなど環境整備のための的確な経営判断が求められるのである。また、影響のレベルは、ストレスの原因に対して、個人のさまざまな事情がかかわりあって決定するものであるため、その判断の際、経営側が一方的に、ストレスの原因に関して業務への影響を考えようとした場合、その度合は、経営者側の自分なりの尺度による判断となる可能性が高く、適切な対処策の導入は、より難しくなる傾向がある。
 一般的にストレスについては、基本的な知識を持つことで、管理職として、また自分自身のために役に立つことは明確である。しかしながら、職場への影響などを客観的に判断することは大変難しい。一方、ストレスの身体への影響に関する研究では、免疫力の低下にいたるまで実証されている。これらの研究のさらなる前進は、悪性新生物などさまざまな疾病とストレスとの関係の解明などにおいてその役割は大きい。しかしながら、そのような前進する研究の中でも、ストレスそのものを測定できるような方法は、個人の事情の影響という感じ方の部分であることからも難しいことが分かる。そこで、ストレスの原因自体を点数で表して、その影響などを判断する際の指標として代用する試みがある。しかも、それは心理的ストレスといわれる生活上の出来事についてまとめている。例えば、社会再適応評定尺度(別表)を用いて自分自身の感じ方と他人の感じ方の共通点、相違点を発見することで、職員に対する理解をより深めることを試みて欲しい。それは経営者の判断を誤らないための有効な知識の一つとなろう。


別のアプローチ(良いストレス/悪いストレス)

 さらに、ストレスの理解を深めるために、次のような捉え方もしてみて欲しい。ストレスを刺激に対する反応とみると、当然、悪い反応もあれば、よい反応もある。つまり、ストレスには「悪いストレス」だけでなく「良いストレス」もあるということだ。夢、スポーツ、良い人間関係など、自分を奮い立たせ、勇気づけ、元気にしてくれるような「良いストレス」と、一方で、過労、悪い人間関係、不安など、自分の体やこころが苦しくなり、嫌な気分になり、やる気をなくし、時として他人に何らかの迷惑を及ぼすような「悪いストレス」である。 しかしながら、スポーツの好きな人には、スポーツはよいストレス状態を引き起こすが、スポーツの嫌いな人には嫌な気持ちを起こさせるであろう。このように同じストレスの原因でも、受け止める人によって「良いストレス」になるか「悪いストレス」になるかが大きく異なる。このようなことから、ストレスの量と生産性の関係を見てみると、ストレスレベルが高すぎても、低すぎても生産性は落ちるということもわかっている。このような影響力を持つ職場内のストレスに対して、いかに対処するか、職員の個人的な問題として片付けるのではなく、これを機に是非とも組織全体の基本的課題として理解していただきたい。


参考資料:社会再適応評価尺度(ホームス&レイ/引用抜粋)

1年以上にわたって200点以上が負荷された場合には、その翌年には、半数以上の者は心身に何らかの問題を生じ、300点以上の場合には80%の人々が翌年病気になることが、研究の結果見出された。つまり点数が高いほど心身に健康障害を起こしやすいと指摘されている。

 

できごとの例

ストレス 点

 配偶者の死

100

 離婚

73

 夫婦別居

65

 拘置、拘留、懲役

63

 肉親の死

63

 けがや病気

53

 結婚

50

 解雇 

47

 夫婦関係の調停、裁判ごと

45

 退職

45

 家族の病気

44

 妊娠

40

 性的障害

39

 家族構成員の増加

39

 転職

39

 経済状態の変化

38

 友人の死

37

 配置転換

36

 1万ドル/約100万円以上の借金

31

 仕事上の責任の変化

29

 息子や娘が家を離れる

29

 親類とのトラブル

29

 妻の就職や離職

26

 就学・卒業・退学

26

 生活条件の変化

25

 個人的な習慣の変更

24

 上司とのトラブル

23

 仕事時間や仕事条件の変化

20

 引越し

20

 転校

20

 社会活動の変化

18

 睡眠習慣の変化

16

 食習慣の変化

15

 休暇

13

 ささいな法律違反

11

(監修:アイエムエフ研究所)

以上