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「介護現場のストレスケア」その13.(気分転換の重要性と実践へのヒント)

2011年02月16日

気分転換が上手なタイプは仕事でも実力を発揮できる

 作年は記録的な猛暑、この冬も山陰・北陸を中心にした大雪と、気候・環境面でも強いストレスが私たちを取り巻いている。そして不安やストレスに悩み、疲れ果ててゆく人もいれば、逆境に強く困難な課題を難なく乗り越えてゆく人もいる。この差はどのようなところにあるのだろうか。

 その中のひとつに、気分転換が上手にできるという事実がある。このタイプの人は、仕事や人間関係にもしっかりと実力を発揮していくのである。事実、スポーツなどの特殊な世界に身をおく人だけではなく、「心身のセルフコントロール(心身のバランスを保つ)」という領域は、人類の必修科目であると唱える学者もいるほど、気分転換はストレスに対して効果的な手法であり、心身のバランスを保つための第一ステップと位置づけることもできる。

 さて、介護現場のストレスマネジメントの効果はなかなか見えにくい。例えば、今まで触れてきた人間関係というストレスは、受け止め方や気持ちの持ち方、考え方というある種の訓練や専門家を必要とするので、自分ひとりでは難しい。しかしながら、介護現場では時間に追われ、疲れもピークに達する中で「気持ちの持ち方」、「とらえ方」という冷静なこころ・ゆとりを持つことがなかなか難しい。また、ストレスチェックや研修を受けても、カウンセリングを唐突に受けても、瞬間的には回復するように見えるが、職場全体の環境が変わらなければ、元に戻ってしまう。だからこそ、個々のストレスをその場で軽減する方法も必要とされているのである。



設備的な側面から気分転換を考えてみよう

 気分転換の代表的な方法である飲酒や喫煙は、休憩時や業務終了後にその労をねぎらい、自分へのご褒美として適量たしなむ程度であれば、大変有効であると言える。ここで問題なのは、依存となるほどの量を摂取してしまうことであろう。また、たばこの場合、健康増進法施行後は肩身の狭い思いをしながらの喫煙で、気分転換にならない場合も多い。ただ、こんな事業所もある。休憩室には、ソファーやリラックスチェアーが配備され、ジュースやお茶、お菓子まで用意してあり、心地よい音楽も流れている。もちろん、当然、長居はできないが気分転換を図るために徹底した設備投資に踏み切ったのである。

 業務終了後は、車の運転さえなければ、小さな缶ビールを1本、柿の種のミニサイズとセットで楽しめる。もちろん、井戸端会議も公認されている。ただし、1時間以内で終了するというルールを守ることが条件だ。

 この事業所では、コミュニケーションスキル研修やストレス基礎研修などを職員に受講させている。したがって、休憩室での井戸端会議が職員の気分転換に十分な効果を発揮しているという可能性が高い。また、彼らのコミュニケーションスキルを向上させることで、ご利用者や上司との関係を円滑にするだけではなく、誤解の生じない仲間関係を築き上げたり、ストレスに効果的な対処ができる職場環境づくりにも繋がっている。一時的に金銭を必要とするが、離職率が大幅な改善を見た結果、投資は十分に見合ったことになる。



自律神経の機能低下を自分でチェックしてみよう

 しかしながら、このような設備投資ができる事業所は稀である。環境的にも資金的にも厳しい事業所は少なくない。そこで、まずは簡単な「心身のセルフコントロール」手法をお勧めする。仕事や人間関係で「あがる人」「だらける人」は、実力が発揮できない。また、「緊張しやすい人」「疲れやすい人」「ストレスに悩む人」も同様に発揮できない傾向にある。まじめな人ほど、辛い状態を我慢し、笑顔で隠すので、心身ともに疲れ果て、突如として異常を発することになる。

 このような人たちにこそ、「心身のセルフコントロール」は必要であり、その効果も見えやすい。一例をあげると、介護施設の職員のアンケート調査では、「眠れない」という回答が多い。この現象を起こす人は、研修で「リラクゼーション」を体験させると、一生懸命リラックスをしようとするので、かえってリラックスできない。同様に、眠ろうと一生懸命になればなるほど、まったく眠れないのである。実は、リラックスすること、眠ることは、頑張れば頑張るほどできないのである。

 では、どのように対策を講じれば良いのだろうか。基本的には、自分の心身の状態のモニターや、自律神経(交換神経と副交感神経の働き)についての基礎知識が必要となるが、それがなくてもこんな方法で体感してみることができる。以下、手順を紹介する。

1.秒針が付いている時計を用意する。
2.秒針の位置を確認してから30秒間、秒針を見ないで数えてから、数え終わった瞬間に秒針と見比べる。
3.秒針よりも10秒近い誤差が生じていれば、早くとも遅くとも自律神経の機能が低下している可能性が高い。2~3秒の誤差程度までが合格ラインとなる。
4.機能低下を元に戻すためには、秒針を見ながら、5秒かけて息を大きく吸い込み、5秒かけてゆっくり吐き出す。これを5~6回繰り返すと、脈拍がおよそ1秒に1回に近づくはずである。
5.再度、30秒間のゲームに挑戦すると、おそらく、ほとんどの人が2~3秒の誤差になっていくことになる。

 また、この5秒間の呼吸法を続けていくうちに、体がリラックスしていくことに気づくだろう。そして、寝不足の人であれば、いつの間にか眠くなってくることも体感できるかもしれない。

 このように、心に直接訴えるのでなく、体に伝えて体から心へ伝える方法で、リラクゼーションやセルフコントロール手法を習得していくことも覚えていておいて損はない方法である。

(監修:アイエムエフ研究所)