オールライフマガジンALL LIFE MAGAZINE

「介護現場のストレスケア」その14.(行動特性を知ることの重要性)

2011年03月14日

「こだわり」がストレスの一因に

 前回、能力を発揮すること、そして心身の健康のためにも、適切な気分転換をすることが必要であることを説明した。そこで、さらにその効果を高めるための手法を考えてみよう。

 複数の人に同じ課題を投げかけたとしても、人によってその感じ方や捉え方が異なるので、それを困難であると感じる人と、容易にこなしてしまう人が存在する。例えば、誰か知らない人とはじめて会う場面を想定した場合、緊張して自分の思っていることが伝えられないことが多く、できれば会うことを避けたいという人に対して、はじめて会う人に興味津々で楽しみにしている人は、自分の思っていることを伝えるのは当然のことながら、相手の意見までしっかりと聞きとることができる。

 このような現象は、持っている能力によって起こるということもできるが、それだけではない。過去に何らか初対面の人に嫌われた経験があるか、伝達に失敗した経験があるのかもしれない。そして、その失敗経験が、ストレスの原因となって、次の同じような場面に対して、自分の本当の能力を妨げると考えられないだろうか。

 この種の経験のある人には、こだわりが強い場合が考えられるという。自分があることをそうであると考えるから、他の人もそう考えるに違いないと自然に考えている。その自分の行動特性が、人間関係に影響を及ぼして、相手を不快にさせ、そこからの反応を自分への攻撃であると感じてしまう。このような場合、衝動的にミスを犯してしまうことや、さらにストレスを増幅させるような行動をとる人も少なくないという。

 仮に、自分の行動特性を把握することができたとすれば、あらかじめ、自分のこだわりを理解して、相手の意見と自分の意見が異なることは当然であると冷静に受けとめることができれば、ストレスはかなり軽減するはずである。このように準備できなかったとしても、自分の特性を少しでも理解して、いざというときには、まず、気分転換をして冷静な自分を取り戻すことができれば、ストレスを増幅させることはないであろう。セルフコントロールも、このように「自分の行動特性を知る」ことで、さらに効果的な側面が現れるのである。


模範的であるがゆえにストレスを抱えてしまう

 ストレスマネジメントの目的は、病気を治すことではない。早期発見と予防が目的である。そして、より進んだストレスマネジメントは、職員それぞれの能力を十分に発揮させることができるのである。しかも、職員それぞれが、自身のために自主的にセルフコントロールを取り入れるようになるのである。

 気候の変化に備えるように、しっかりと準備ができて対処がわかり易く、具体的に実感できる。また、気持ちの持ち方やとらえ方も、一旦冷静さを取り戻すことで比較的容易に変えることができるのである。

 よく、介護職の人は真面目であると言われる。そのような表現にとどめずに、以下のようなことを確認してみる必要がある。自分は『真面目である』・『几帳面である』・『責任感が強い』・『周囲の人に気を使ってやさしく接する』・『融通が利かない』。この質問にすべて『ハイ』と答える人は、相当模範的な生き方をしている人である。しかしながら、模範的な反面、あまりにも真面目過ぎて、優し過ぎて、こだわりが強くて、何か予期せぬ反応には、うつ症状などの反応を示す場合が多いという。前出の行動特性にどことなく似ている。さらに、このように真面目な人は、情も深いという。情が深い人は、どこか見返りを求めることが多くなるので、ねぎらいの言葉や感謝の言葉に欠けると、かなりの疲労感を感じることが多いようだ。

 介護職の人、支援をする仕事に就く人(介護の仕事が向いている人)は『真面目で』、『こだわりがあって』、『情が深い』というのは、当然ではないだろうか。ということは、その傾向に合わせた職場環境の整備が必要となり、当然、特有のストレスマネジメントの必要性が出てくる。

 以前、本稿で上司と部下の人間関係について「いたわりやねぎらいの言葉がコミュニケーションを円滑にする」ことを述べたが、介護職に大部分共通する行動特性に対しても重要な意味を持つことを理解して欲しい。「看護・介護職ならこれくらい出来て当たり前、当然だ」という環境はストレスを増大させてしまうのである。しっかり仕事が出来て部下を成長させる気持ちの強い上司の皆さんには、是非そのところを理解して欲しい。思いのある厳しい指導はあって良いし、是々非々も当然あって良い。もちろん「単に甘やかす」ことと「ねぎらう」ことは違う。「きちんと(時には厳しく)指導すること」と「労をねぎらう」ことは両立するのである。


(監修:アイエムエフ研究所)