オールライフマガジンALL LIFE MAGAZINE

「介護現場のストレスケア」その16.(「気働き」の重要性)

2011年05月13日

介護現場における気働きの能力(前稿続き)

 介護現場における事例検討会をいかに成功させるかという意味では、いくつかの重要なポイントがある。まず、何といっても司会役のスキルが問われる。ゆえに、司会役を務める管理者のコミュニケーションスキルは、大変重要なのである。介護現場におけるストレスマネジメントを実践していると、よく勉強している人は、「ソーシャルサポート」の重要性と「コミュニケーションスキル」の習得を説くものである。それは重要であることに違いはないが、この習得すべきコミュニケーションスキルが、どのような意味を持っているのか全体的な理解が必要になる。その理解とポジティブなストレスマネジメントを実践するために取り上げたいことの一つが「EQ(Emotional Intelligence Quotient)」である。仕事で優れた業績を上げるための要因は、「IQ(知能指数):10%~25%」、「EQ(心の知能指数):~75%」であるとする説もある。いかなる職場でも同様に仕事を効果的に相手に満足を持たせることができ、結果として業績を伸ばすには、IQばかりではなく、実はEQが重要な役割を果たすというものである。


 このEQとは、「気働きの能力(コンピテンス)」といわれるものであり、そこには「個人的な気働きの能力=自分自身をマネジメントする能力」と「社会的な気働きの能力=諸問題を解決する能力」の2つの能力が含まれる。前者の代表格は「モチベーション」だが、そのほか「自己認識」や「自己統制」という自分自身をマネジメントするためのメニューが並ぶのである。そして「社会的な気働きの能力」は、「共感性」と「社会的スキル」という題目が並び、この「社会的スキル」がコミュニケーションに代表される「社会的状況や関係を正確に読み取り、人間関係における感情をうまく操作し、他の人から望ましい反応を引き出すスキル」を指すのである。


 このようにすべての業界・業種で共通していることとして「コミュニケーションと心の知能指数(EQ)の重要性」が取り上げられている。介護現場では「チームケア」などの用語に見られるように、一般の業種に比べても個人技ではなく、チームプレイによって質の高いサービスを提供しなければならない。その意味では、介護現場におけるスタッフ(特に管理職)は、いくら経験年数が多くても、資格を保有していても、自分自身をマネジメントする気働きの能力と社会的な気働きの能力が備わっていなければ、経営者が望むような業績(満足度の高いサービスの提供)を挙げることができない。


「気働きの能力」の中身

 気働きの能力とはどのような内容であるのか、介護現場のスタッフに有効なのか、また効果的なものであるのか、そして身につくものであるかどうか見てみよう(下図参照)。EQに含まれる能力は、個人的な気働きの能力と社会的な気働きの能力に区分される。個人的能力には「自己認識」と「自己統制・自己管理」、そして「モチベーション」の3つを含んでいる。さらに、これらを細分すると「自己認識」は「感情の理解」「正確な自己評価」、そして「自己確信」の3つを備えているのである。


 次の「自己統制・自己管理」は、「自己コントロール」「信頼性」「誠実性」「適応性」、そして「イノベーション(革新)」という5つを備えている。もうひとつの「モチベーション」に関しては、「達成意欲」「コミットメント(目標明示)」「率先行動」、そして「楽観的見方」という4つを備えている。


能力開発の意味を考える

 個人的な気働きの能力がこれだけ備わっていればかなり成功しそうであるが、実はそれだけでは優秀な管理者ではない。そこに社会的能力(諸問題を解決する能力)が必要である。それは「共感性」、そして「社会的スキル」の2つなのである。これをさらに細分すると「共感性」は、「他人を理解する」「他人を育てる」「サービス重視」「多様性を活かす」、そして「政治(グループの力関係)の理解」という5つが含まれている。


 そして、最後に「社会的スキル」は、「コミュニケーション」「相手に影響を及ぼす」「対立マネジメント」「改革の触媒」「連携を築く」「協調と協力」そして「チーム能力」という7つの要素を含むのである。


 現在、EQという言葉もかなり一般化し、書店の書棚にはたくさんの入門書が並んでいる。本稿は盲目的にEQをすすめるものではないが、特に管理職の方が興味を持つことは決してマイナスにはならないだろう。


 望ましくは、このような能力を備えた管理者ばかりであれば、事例検討会ばかりではなく、介護現場全体の環境整備体制まで安定することは間違いないだろう。しかし、現実には多いとは言えない。それは、個人の能力開発に任せて、組織全体の人材マネジメントに注力しなかった結果である。今後は少なくとも、能力開発のために組織全体で考え、積極的に受講するものについては、スキルを習得する意味を認識させることが必要である。


(監修:アイエムエフ研究所)

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