オールライフマガジンALL LIFE MAGAZINE

「介護現場のストレスケア」その21.(ストレスマネジメントの実践にあたって)

2011年10月08日

スタッフの問題をどう説明するか

 ヒューマンサービスとしての介護を考える時もっとも重要なことは、「顧客(利用者)ニーズを把握」とそれに対応した「的確なサービスを提供する」ことである。これを実現するための重要な方策は、個別サービスの提供者である現場スタッフの力を最大限に発揮してもらい、その力を維持・発展させることである。しかし、その具体的方法は意外に知られておらず、どの事業所においても困難を感じている点ではないだろうか。実際には、精神的・身体的疲労(ストレス)などの訴えが多い、スタッフが訳もなく突然休んでしまう、スタッフ間のトラブルがある、スタッフが全体的に短期間でやめてしまう、ミスの目立つスタッフがいる、仕事を熱心にしないスタッフがいる・・・。スタッフに関する課題は多いが、そのような課題に対しどのような説明をして、どのような対処をすれば良いか考えて行きたい。


よくある説明の方法

 それではここでストレスの訴えが多いスタッフの場合について考えてみることにしよう。仮に、このスタッフは仕事の評価や残業や夜勤を含めた労働時間・強度などは、平均的で勤務態度も悪くはないが、頻繁に周囲のスタッフや上司に対し「だるい」、「めんどくさい」、「ストレスがたまる」などと話し、職場の士気を下げてしまっているとする。そのようなスタッフがストレスを訴える原因についてどのように判断されることが多いだろうか。例えば「周りと同程度の仕事をしているのに一人だけ訴えが多いのは、そのスタッフに精神的に弱いところや甘えているところがあるから」と考えたとすると、その原因はそのスタッフの「精神的弱さ」あるいは「甘え」ということになる。


無意味な「レッテル貼り」という行為

 前述のように考え、そのスタッフに「精神的弱さ」や「甘え」があると説明したり、あるいはそのスタッフの能力に原因を求めたりすることは簡単である。一見、その説明は正しく見える。しかし、逆に考えるとその「精神的に弱い」、「甘え」ということはどのようにして分るのだろうか。それは実は「ストレスの訴えが多い」ことを見てそのように判断しているに過ぎないと言える。そうすると、これは循環論法になってしまい、何の解決ももたらさないということになってしまうのである。つまり、そのスタッフの中に原因があると考え「精神的に弱い」、「甘え」などを考えたが、ではなぜそれが分るかというと「ストレスの訴えが多い」からという説明になってしまい、結局のところ「精神的に弱い」、「甘え」はその個人にレッテルを貼っただけで何の説明にもなっていないのである。また、平均的な仕事が出来ているスタッフに対して「能力」を問題として取り上げてしまうことは明らかな間違いでる。


個人攻撃の罠

 このように職務や人間関係上でつまずいたり、失敗をしたりしている人を見たときに、その人の能力や性格、あるいは適正やヤル気などをその要因にするような無意味なレッテル貼りにより個人に責任を押し付けてしまっていないだろうか。そうすることで、一見その問題についての原因を究明したかのように見えても、実際は何の解決ももたらしていないことは、上の例でお分かりいただけるだろう。このような状態のことを「個人攻撃の罠」という。特に人をコントロールする立場(管理者)になるとその罠に陥りやすくなるのである。罠に落ちた状態では次のような問題が生じる。

1.何の解決ももたらされず問題解決のためのアクションがとられることが少ない
2.従ってスタッフも解決の方法が分らず問題の修正を図ることが困難
3.それらの結果、個人攻撃の罠に落ちた人の下ではスタッフは育たない

では、どのようにしてスタッフを育て、その力を高め、維持していけばよいのだろうか?


落とし穴"から抜け出すために

 無意味なレッテル貼りをせず、個人攻撃の罠に落ちないためにも問題の「本当の原因」を探ることが必要である。その本人に問題を帰してしまうような原因の求め方ではその後の取り組みにつなげるのは困難である。「本当の原因」はその人の外、つまり環境に目を向ける必要がある。ここで言う環境とは職場の内外、人やもののすべてである。そして職場をコントロールする立場の人(管理者)は中でもとりわけ重要な環境であるといえる。なぜなら、管理者は職場の広範囲の環境を変えることができる可能性があるのだから。つまり、個人攻撃の罠から抜け出すポイントは管理者自身がどのように行動するかということになる。

 次回から、スタッフを育て、その力を高め、維持する方法を実践的に考えていきたい。