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「介護現場のストレスケア」その22.(適切な仕事を増やせばストレス状態は縮小する)

2011年11月08日

 前回、問題に直面したときの"落とし穴"として、問題の原因を相手に押し付けてしまう「個人攻撃の罠」と、問題の解決に結びつかない「無意味なレッテル貼り」について触れた。今回は、実際に管理者はどのように行動することが求められているのかということを念頭に置きながら、適切に仕事が成し遂げられるための条件・ポイントを整理し、その基本について考えていくことにする。


適切に仕事が達成されるために・・・

 仕事を続けるために必要となるものは何か、また、仕事を適切に成し遂げるためには何が必要なのだろうか。特に介護・保健・医療などのヒューマンサービス領域では、多くのスタッフが強いストレスの原因となる出来事に遭遇しやすい職務や職場にあると感じているという。その結果スタッフの流動性を不適切な水準にまで押し上げ、燃え尽き症候群を招き、場合によっては集中力を妨げミスや事故を起こしやすくなっており、この独特の環境が現場におけるリスクを高めていることは、今までの複数の調査報告でも指摘されていることである。従って、厳しいストレスにさらされながら働くスタッフへの様々なサポート体制を構築していくことが、個々の事業所に限らず介護業界全体で取り組むべき課題なのである。

 ヒューマンサービスの仕事を適切に成し遂げることの対策と、ストレスをコントロールすることの対策が、個別のものであると捉えられていることに、対策が進まない原因のひとつがある。そこで、適切に仕事が成し遂げられるためさまざまな条件・ポイントからストレスをコントロールする対策につながる事柄を整理してみることにする。


【職務内容・技術に関する十分な理解や専門知識】

 介護領域に置いて個々のスタッフは専門職として雇用されており、その職を成し遂げることが求められている。そのためにさまざまな過程を経て、専門的な教育を受けてきている。しかし、その水準が一様ではないことは明らかである。その仕事を成し遂げる上で、必要な知識を十分に備えた職員ばかりとは限らない。例えば認知症について何も知らない家族は、認知症の方が繰り返し物忘れすることに対しイライラしてしまうことがある。これは認知症が障害(病気)であることを適切な情報として得ていれば、熱が出ることやせきをすることと同様に冷静に受け入れることができる。このように十分な理解や専門知識が不足していることが、大きなストレスになるということもある。


【知識・技術を適切に活用する方法】

 前述のようにさまざまな専門的な教育を受けてきた職員が、すぐに現場で何の問題もなく十分に活躍できるかというと、そうではないということも明らかである。多様な専門的知識・技術を適切な場面で適切な手法で行うことができて初めて知識・技術が活かされたということができる。適切な方法を適切な場面で行うことが出来れば、その結果は良い状態であることが容易に想像できるはずである。また、その時の職員の精神状態も自信に満ち溢れた満足度の高い状態となることも同様である。


【適切な評価】

 課題を持つスタッフに対して、前述の"落とし穴"のひとつ「個人攻撃の罠」にはまってはいないだろうか。それはないとしても、日頃から仕事上での「失敗」や「トラブル」は良く目に付いてしまうのだが、日頃、さりげなく行われている良い活動は注意が払われることなく見過ごされる。このような環境では良い活動(=適切に仕事が成し遂げられている状況)の価値が下がってしまう。


【良い状況を継続すること】

 良い状態は知らず知らずのうちに達成されていることが多い。また、あるときには努力して良い状態を達成した途端に安心してしまい、その努力を止めてしまうこともある。これでは、せっかくの努力が報われない。管理者は良い状況を作り出している要因をしっかりと把握して、段階的な目標を明示して、それをコントロールしていくことが大切である。


【職務の内容・質・量及びその配分・基準の透明性】

 職員各人に対して、適切な質や量の職務が配分されていることが望まれる。しかし、すべてのスタッフが満足するような配分を行うことは、困難であることも確かである。その場合は、それぞれのスタッフの職務内容・質・量がひどく偏らないようにするために、職務の配分・基準の透明性を確保しておくことが必要である。サービス基準書〔手順書〕などを活用して作業の標準化をしておくことは、とても役に立つのである。


【適切な仕事とストレスマネジメント】

 適切な仕事をする上で必要とされるポイントは、他にもあるはずだが、ここでは代表的なものを整理した。これらのポイントがすべて上手く機能している場合は、職務関連のストレスは生じ難いということになる。適切に仕事が成し遂げられることと、ストレス状態の関係は次の図のように、逆相関関係にあるということができる。前述のいくつかのポイントがうまく機能し適切な仕事が増加することでストレス状態は縮小していくという考え方である。もちろん、ストレス状態に陥った際にはストレス対処は大変重要であるが、今回は、適切な仕事をするための対策とストレスマネジメントは決して別のものではないということを強調するために、あえて適切な仕事の進め方について話した。

 さて、管理者の役割として、問題に直面したときの落とし穴に陥ることなく、逆に通常の職務をより良く評価する取り組みであれば、ストレスへの対処も、よりスムースになってくるものである。管理者自身の思考を少し変えてみることをお勧めする。


(監修:アイエムエフ研究センター)