オールライフマガジンALL LIFE MAGAZINE

「介護現場のストレスケア」その26.(目標を達成するための具体的な行動指針)

2012年03月14日

 前回は新しい業務に取り組む際の環境作りについて考えた。そこでは、行動の前後にある環境の調整が、別の行動を引き出す要因となることを説明した。今回からは数回に分けて、環境調整と調整後のスタッフの行動や状態を引き上げる方法について考えてみる。まずは、大前提となる、行動と環境の関係および行動の定義について知っていただきたい。


行動と環境の関係:相互作用

まず「行動」と「環境」という言葉を整理しておこう。前回の例では「行動」としてあげられていたのは(あるスタッフが)「記録をつける」ということであった。これに対し「環境」は、その行動の前後にあって、その行動に影響を及ぼしている様々な条件を指していた。スタッフが記録を付けるためには、必要な環境があって、スタッフが記録を付けることで、その記録用紙に記録が書き込まれるだけではなく、その他の環境面での変化も生じているのである。従って、そこでの環境はその後の行動に影響し、さらにそこで行われた行動によって環境に変化が生じるということになる。まさに、環境と行動は互いに作用しあっているのである=相互作用。
もう一歩進めて次の例を考えてみよう。管理職がスタッフにある行動(仮に「レクリエーションの立案と実施」とする)をさせたいと思い、いろいろな準備(立案の仕方や注意点のレクチャー、資料の例示、他施設に見学に行かせる、など)をし、さらにそれができたら食事をごちそうするということにし、これがうまく機能したとする(以下は行動の流れ)。

環境:行動の前①(管理職)
・立案の方法/留意点のレクチャー
・資料の例示
・他施設への見学
・「終わったら食事に連れていってあげよう」
     ↓

行動②(スタッフ側) レクリエーションの立案・実施
     ↓

環境:行動の後③ ・レクリエーションの成功
・食事に連れて行ってもらう

実はこの行動の流れにはもう一つ別の面があることにお気づきだろうか。それは、「スタッフに何かをやらせるときには『準備をしてあげる→うまくいったら食事』の流れでやらせた」管理職としての計画である。このような計画を企画し実行することも行動である。この行動を考えてみると、スタッフが自分の計画によってうまくレクリエーションを立案・実施したという結果は、いつのまにか管理職にとっての環境となっている。そしてスタッフの行動は、彼らの環境であったはずの管理職にも、少なからず良い影響を及ぼしていることになる。


目標とする行動は具体的であれ

上記の例では「何をどのようにしたら良いか」を示した上での「レクリエーションの立案・実施」であった。このように、「行動」とは「何を(どういうふうに)どうするか」という具体的な内容を含んだものであると考えられる(一方、「環境」とはその具体的な行動に対応する個別の状況ということになる)。つまり、何らかの行動をさせようとする際、また分析しようとする際には、その行動とその前後の環境は具体的にとらえる必要がある。

少々耳の痛い話ではあるが、時折、介護事業所では「年度の行動指針」と称し「ご利用者様(お客様)の立場に立って、一人一人が最善を尽くそう」のような標語が掲げられているのを目にすることがある。このような標語はおそらく随分昔から使われていたと考えられるが、このような標語を掲げることで、スタッフや社員が皆一斉に「最善を尽くす」ようになり、問題がなくなったという話を聞いたことがない。しかしながら、このような標語に意味がないと言いたいのではない。この標語は行動指針ではなく「理念」「経営指針」といったものである。この標語を達成しようとする時に、スタッフや社員一人一人が、どのように振る舞ったら良いのかが「行動指針」なのである。そうでなければ標語はただのお飾りになってしまう。
そこで、目標とする行動を決める場合の「具体的な」指針の「決め方」をあげておく。

目標とする行動を定義する場合
・基本的には、対象となる人すべてが、その定義を見れば同じことができるようにする。
・それができるようになるためには、その行動の動き、強さ、回数を決めることが必要である。
・さらに、行動だけではなく、その行動の前の環境(つまりどういう状況の時にそれをすれば良いかということ)と、後の環境(つまり、どうなれば良いかということ)を極力具体的に述べておくことが必要である。

次回も引き続き、適切な行動を引き出すためのものについて考えていく。

(監修:アイエムエフ研究センター)