オールライフマガジンALL LIFE MAGAZINE

「介護現場のストレスケア」その27.(適切な行動を引き出す「課題分析」)

2012年04月14日

うまくいかない原因は何か

 前回は、「行動」と「環境」は相互作用すること、相手の行動を引き出すためには環境を調整することが重要であること、そして、引き出そうとする行動についてもできるだけ具体的に定義することが必要であると「行動」と「環境」の関係について説明した。今回は、スタッフが適切な仕事とその手順を身につけ、いかに継続させるかという方法を基礎的な部分から考えてみることにする。

スタッフに質の高いケアをしてもらおうとして、言葉を尽くし説明したはずなのにやってもらえなかった、もしくは何度注意しても同じようなミスを繰り返す、適切な仕事ができるようになるために研修をやったが改善されない・・・、などの場面に出くわしたことがあるリーダー・管理職は少なからずいるだろう。このような場合、私たちはどのような思考パターンをとるのであろうか。説明・注意・研修を受けたスタッフの意識の問題や理解力のせいにするのだろうか? しかしながら、これでは過去のケアポートマガジンで紹介した「個人攻撃の罠」にまんまとはまってしまうのである。前述の基本的な方法を適応するならば、「①.説明や注意、研修の内容や方法が不十分だった」、「②.その説明、注意、研修の内容を実際の場面で実践していく際の環境設定が不十分であった」、もしくは「①と②両方にその原因がある」ということになる。そこで、スタッフが適切な仕事や行動を身につけ継続するために、マネジャー側ができることを①、②それぞれの視点から見ていくことにしよう。


スタッフへの「個別対応」

 ここで最初に考えておく必要があるのは、説明や注意、研修の内容において万人に同じだけの効果をもたらす内容や方法はないということである。これも誰もが経験していることであると考えられるが、あるスタッフにはやってもらいたいことの概要をかいつまんで話をするだけで、十分に伝わりこちらが考えていた以上にしっかりとやるスタッフもいると思えば、一方には考えられるだけ詳しく、しかも繰り替えし話してもできないスタッフもいるのである。当然ながら、個々のスタッフは、経験や考え方等の背景が異なっている。また、指示を耳から聞いた方がよく理解できる人もいれば、目で見た方がよく理解できる人もいる。また、体験を通して体で覚える人もいる。ただし、このようなスタッフひとりひとりの経験等の背景の違いや向き不向き等の特徴を理解しておくことは大切であるが、これらをうまくいかない原因と考えることは管理職としてタブーである。(そう考えてしまうのではまさに「個人攻撃の罠」にはまってしまっている)。背景や特徴についての理解は、その先にある「そのような背景・特徴を持ったスタッフに対し、どのようにしたら適切な仕事行動を引き出すことができるのか」という課題を考える材料の一つになるものである。私たちは、ご利用者に対してその人の背景や特徴にあわせた個別対応をとっているが、スタッフに対しても同様に個別的に説明・注意・研修内容や方法をアレンジする方が高い効果を得られる場面が少なくないのである。


行動を分けて分析する

 次に重要な点は、前回も触れたが、引き出そうとする行動をできるだけ具体的に示すことである。前回はその指針をあげたが、その指針に従い、さらに引き出そうとする行動についてさらに細かく分析する必要がある。仕事上における行動のほとんどは、多くの細かな行動の集まりからなっていると考える。例えば入浴介助の場合考えてみると、ただ単に浴槽に入っていただくだけの行動ではなく、声賭けやキャリーを使っての移動などに始まり、その手順は非常に多くの行動がそこに含まれているということがわかるだろう。最近ではその手順は、標準手順書や介護マニュアルと言った形で多くの項目が挙げられている。しかしながら、場合によっては、それでも不十分であり、さらに細かく分析される必要があるかもしれない。また、ひとつひとつの作業については手順書のような形で明確になっているにもかかわらず、実際の場面で事故やミスにつながっているのは、単純なミスや基本的な安全対策の欠如などであるという。肝心の手順書にはそのような状況については、あまり詳細ではないことが多く、感と経験に頼る体質がスタッフ、そして自分自身を苦しめている。従って、今後はどのようにして単純なミスを防ぐのか、基本的な安全対策を忘れることなくその場面で適切な行動をすることができるのかなど、各項目について分析すると良いだろう。このようにある行動をさらに細かい行動に分けることを「課題分析」といっている。例のように一つの行動を分けて分析し提示することで、スタッフと管理者の双方が「どこがうまくいかないか」ということを理解できるようになり、職場内の共通認識として根付くのである。

 次回は、課題分析をふまえ、「環境設定の工夫」について具体的に述べる。

例「美味しいお茶を安全に入れる」
①湯呑、急須、茶葉を人数分用意する
②茶葉を人数分適量はかる(1名分は専用スプーン1杯)
③茶葉を急須に入れる(4杯)
④茶葉の入った急須にお湯を適量入れる(一回4名分)
⑤急須のふたをし、少し待つ
⑥急須の柄を持ち必ず空いた手でふたを押さえる
⑦湯呑に順番に小分けにして繰り返し注ぐ
 などに分けることができる。

(監修:アイエムエフ研究センター)