オールライフマガジンALL LIFE MAGAZINE

「介護現場のストレスケア」その28.(問題解決をはかるための「機能分析」)

2012年05月14日

 今回は、前回に引き続きスタッフが適切な仕事のやり方を身につけ、それを続けるための方法について考えてみる。「説明や注意、研修の内容や方法」を考える上で有用な「機能分析」について具体的な利用方法を見ていくことにしよう。


機能分析を利用する

機能分析とは、あるまとまりのある行動についてどのような行動(動き)をどのような順番でする必要があるかということを細かく分析することである。「細かく分析する」といっても具体的には分かりにくいので一つのツールとして、ここでは仮に下記の「表1」のようなシートを使い具体的に説明することにする。

このシートは何らかの問題や課題を抱えたスタッフについて、一つ一つの課題ごとに一枚のシートを利用していくことになる。このシートに記入する事項は、対象となるスタッフの氏名・所属・マネジャー・背景・課題・具体的場面・課題分析についてである。この中でマネジャーについては、必ずしも上司でなくても良いが、対象となるスタッフ に随時、協力・指導できる立場の人が望ましい。また、このシートを作成する際のポイントとして、対象となるスタッフとその上司や管理者が必ず同席し、共同でシートを作成することがあげられる。これは、共同でシートを作成する過程にもスタッフの気づきを引き出せることもあるという理由からである。作成の手順は以下に示す通りである。

(1)問題点としてそのスタッフ自身が「うまくできない」「やりにくい」あるいは「(全く)できない」と感じており、かつできる必要がある理由について記入する。基本的には、スタッフ自身がそう感じている事実を取り上げるが、場合によっては周囲がそう感じている事実を取り上げても良い。
(2)その背景について考える。スタッフ本人の特徴や不足している内容等をできるだけ詳細にあげる。
(3)問題点や背景から、スタッフが「どのようなことができたらよいか」という視点を持って課題を設定する。
(4)課題を達成することが望まれる場面の中から、具体的な場面を取り上げてみる。同じ問題が複数の場面に渡っている場合には、他の業務等の関係から時間的に取り組みやすい場面から実施するのも良いだろう。
(5)課題分析を行う。これは、①スタッフ自身がその具体的場面において、現在どのような手順で行っているか明確にリスト化してみる、②マネジャーがそのリストをもとに手順や方法を加える、または変更した方がよい点をあげ提案していく、③基準書(作業手順書)などを参考にして、より確実かつ実施しやすい方法はないか検討してみる、④対象となるスタッフが、自分で見ればその行動ができるようにリストを作成するという手順からなっている。そして、最後に作成されたリストがシートに載る課題分析になる。


行動を分けて分析する

以上のような方法で課題に取り組むことで、個々のスタッフは具体的場面の問題の解決、つまり適切な仕事のやり方を身に付け易くなることであろう。
しかしながら、これだけで課題の解決がすべて図れるわけではない。「解決されるのは一つの場面にすぎない」のである。ここで、管理者としての真価が問われる。それは、画一的な全体研修と、個別の対応とを上手に使い分け、融合させることの重要性を再認識することである。ここで紹介した手法は、全体研修や従来の方法ではなかなか解決しない時に特に有用な方法である。(研修をやってそれだけで解決できる問題である場合は研修を実施すべきである。)

 注意点として、この方法を取り入れる場合は「自らの問題解決に(この方法を利用して)取り組んだ」ということが、スタッフにとってプラスの評価を得られるように環境設定をする必要がある。


表1.課題取り組みシート1(例)

氏名

Aさん

所属

 

上司名

Bさん

問題点

仕事/業務がたて混むと落ち着いたご利用者対応ができない。
ひやりはっとしたケースも起きている。

事実と背景

・目の前のことで頭が一杯になり、ご利用者のことを見ていない。
・ご利用者宅で、Aさんが下剤(水への滴下式)を服用してもらうため、台所まで水を取りに行って戻ってきたところ、ご利用者さんが点眼液と間違えて目に挿そうとしていた。間一髪で事故には至らなかった

課題

忙しい仕事の最中も「業務そのもの」と「ご利用者」をどちらも落ち着いて配慮できるようにする。


表2.課題取り組みシート2(例)

氏 名

Aさん

 

 

課題分析

(1)やるべきことばかり頭に浮かんで、混乱している。
→手順をしっかりしたもの/手順書にして習慣化する。
(本件の手順)

  1. 服薬の時間であることをご利用者にお知らせする。
  2. 服用の薬(種類と量)を確認する。

 本ケースのように同時服用に危険を伴う場合は順序立てて行う

  1. 点眼液を用意する。涙を拭くきれいなガーゼやハンカチを用意する。
  2. ご本人に点眼してもらう。または点眼して差し上げる。
  3. 点眼液をしまう。
  4. 下剤用の水とコップを用意する。
  5. 下剤を適量滴下する。
  6. 目の前で服用してもらう。
  7. 下剤をしまう。(目の前ではしまわない)

(2)間違えやすいリスクが潜んでいる。
→リスクを排除する。軽減する。
①薬の容器を替える。
②または毒々しいシールを張るなどして区別がつきやすくする。
③お年寄りや認知症の方では開けにくい容器に替える(セイフティキャップ
ボトル/幼児用の押して開けないと開かないもの)
(3)パニックになるほど忙しい
→ケアプランの見直しを事業所内で検討し、ケアマネジャーに相談する。

(監修:アイエムエフ研究センター)