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「介護現場のストレスケア」その29.(効果を上げるための「環境調整」について)

2012年06月09日

 前回は、機能分析について、シート記入例にしたがって具体的に説明を行った。この分析によって取り上げた課題が取り組みやすくなるという効果が出るはずである。今回はその改善行動を継続するための『仕組みづくり:環境調整』について触れていく。


■行動をやり続ける『仕組みづくり』 環境調整

 前回のようなシート(下に再掲)を用いた方法により、ある行動の「やり方」を明確に伝え、一定のレベルでその行動ができるようになったスタッフに対して、その行動を継続するための「仕組み」を準備することを「環境調整」と表現する。環境調整とは身に付けようとする(目標となる)行動が、実行されやすいように行動の前の状況を整えることや、行動の後の状況に変化を持たせることなどを指している。以下、行動の前と後の時点での環境調整/工夫について考えてみることにする。


表1.課題取り組みシート1(例)

氏名

Aさん

所属

 

上司名

Bさん

問題点

仕事/業務がたて混むと落ち着いたご利用者対応ができない。
ひやりはっとしたケースも起きている。

事実と背景

・目の前のことで頭が一杯になり、ご利用者のことを見ていない。
・ご利用者宅で、Aさんが下剤(水への滴下式)を服用してもらうため、台所まで水を取りに行って戻ってきたところ、ご利用者さんが点眼液と間違えて目に挿そうとしていた。間一髪で事故には至らなかった

課題

忙しい仕事の最中も「業務そのもの」と「ご利用者」をどちらも落ち着いて配慮できるようにする。

 

表2. 課題/機能分析シート(例)

氏名

Aさん

 

 

課題・機能分析

(1)やるべきことばかり頭に浮かんで、混乱している。
→手順をしっかりしたもの/手順書にして習慣化する。
(本件の手順)
 ①服薬の時間であることをご利用者にお知らせする。
 ②服用の薬(種類と量)を確認する。

 本ケースのように同時服用に危険を伴う場合は順序立てて行う

  ③点眼液を用意する。涙を拭くきれいなガーゼやハンカチを用意する。
  ④ご本人に点眼してもらう。または点眼して差し上げる。
  ⑤点眼液をしまう。
  ⑥下剤用の水とコップを用意する。
  ⑦下剤を適量滴下する。
  ⑧目の前で服用してもらう。
  ⑨下剤をしまう。(目の前ではしまわない)


(2)間違えやすいリスクが潜んでいる。
→リスクを排除する。軽減する。
  ①薬の容器を替える。
  ②または毒々しいシールを張るなどして区別がつきやすくする。
  ③お年寄りや認知症の方では開けにくい容器に替える(セイフティキャップボトル/幼児用の押して開けないと開かないもの)
(3)パニックになるほど忙しい
→ケアプランの見直しを事業所内で検討し、ケアマネジャーに相談する。


■行動の前の状況を整える

 前回の事例(上記シート)では「いくつかの業務を平行してやらなくてはいけない時に目の前の利用者だけでなく複数の事象/業務にも気を配る」ということを目標とした。この機能分析は効果的であることが多いが、場合によっては課題が明確に示されているにもかかわらず、なかなか目標とする行動ができないこともある。そのような場合は、「実際の場面で利用者の様子を見るタイミングを伝える」、「モデル(見本)を見せる」、「身体的ガイダンス(指導者が対象となるスタッフをてほどきする)」などを実施することや、もしくはそのスタッフの目に入りやすいところにその行動のきっかけとなるような「サイン/張り紙など」を出しておくなど、その行動が生じやすくなるためのさまざまな工夫が必要である。

■行動の後の状況に変化を持たせる

 ここまでの対処によって、ある一定のレベルの行動が少しずつできるようになれば、次に必要なことは、それを継続させていくことである。私たちは「できないとき(こと)」や「失敗しているとき(すること)」は目に付きやすく、そのタイミングで「それではダメ」、「気をつけなさい」などの注意をしてしまうことが多い。そして、「できないとき(こと)」や「失敗しているとき(すること)」が問題であると思い込み、注意を促すことでできるようになると勘違いをしているのである。本当の問題は、どんなに注意をしても新たに学んだ適切な方法ができない、繰り返し同じ失敗をしてしまうその状況(環境)にあることが多い。このような場合は行動の後の状況に目を向けてみると意外に解決するものである。目標とする行動が確実にできた場合、考えられる行動の後の状況としては「利用者の状況がわかる」ことがあげられる。また「ひやりはっと、事故が起きない」ということも揚げられる。
 新たな行動を身につけようとしている人にとっては、自分が新たに挑戦していることが果たしてできているのかどうかということはとても気になることであり、人によってはそのことに不安を感じることも多い。したがって、新たな行動に取り組んでいる人にその行動を続けさせるためには、その行動ができているときには明確にほめることがとても大切である。またそれと同時に、たとえできていない場合であっても、その状況を明確にフィードバックしてあげることも大変重要な環境調整である。
 効果的なフィードバックについてのポイントを整理しておく。
・フィードバックは単発的ではなく、定期的(最初は比較的こまめに、次第に間隔をあけていくとよい)にする。
・フィードバックをする際には、抽象的なものではなくできるだけ具体的にする
 例)「○○の部分に配慮が現れていた」など
・可能であれば観察記録を付けて、目に見える形(共有物)で示す。

以下に行動前後の環境調整フローを例示する。

cpj29.jpg

(監修:アイエムエフ研究センター)