オールライフマガジンALL LIFE MAGAZINE

「介護現場のストレスケア」その30.(組織としてのストレスマネジメントを考える)

2012年07月11日

今回からは事例を交えながら、組織としてのストレスマネジメントの具体的な取組みについて考えていくことにします。
最近では人材確保・育成という大きな課題や、第三者評価や情報の公開の定着によるリスク管理という課題、そして制度改定への対応など介護現場をめぐる状況は、多くの面で厳しさを増しております。そこで、これらの課題に対応するひとつの切り口として、ストレスマネジメントを考えることにします。


■ストレスにつながる出来事とストレス状態

そもそもストレスマネジメントとはどのようなことを指すのでしょうか。近頃では、ストレスが蓄積することで「燃え尽き症候群(バーンアウト)」や「うつ病」、「胃潰瘍」、「心臓疾患」などの病気など心身に重大な悪影響を及ぼすことも知られてきています。職場においても業務に関してや、それ以外の人間関係などについて、さらには家庭や地域、学校などの問題や個人の健康について考える場面などあらゆる場面で「ストレス」という言葉を聞くようになりました。果てはペットのストレスなんていうことも話題になりつつあります。おそらく「ストレス」とは「体に良くない状態」や「精神的につらいこと」、もしくは「難しい問題」、「ハードな仕事」など私たちにとってあまりうれしくない状況を指して使われていることが多いようです。
では、介護現場に目を向けてみると、「日常の業務がそもそも多すぎて多忙が続き休みを取れない」、「担当の利用者のことで困難な事例が生じており、その解決方法がなかなかみつからない」、「なんとなく関係がしっくりいかないスタッフがいる」などの出来事に対してストレスという表現を使う場合、また、そのような特別な出来事に関わらず「疲れがたまって、いろいろなことが上手くいかない」、「最近体調が良くない感じする」などの自分自身の状態について説明するときにストレスという言葉を使っていることが多いことにお気づきでしょうか。一般的にはこのような出来事や状態の両方を指してストレスという言葉を使っていることが多いのですが、ここでは、「(ストレスにつながる)出来事」と「(ストレス)状態」を分けて考えることで、皆様の基本的な理解を促していくことにします。


■ストレスマネジメントにおける個人的レベルと組織的レベル

もうひとつ、マネジメント(management)という言葉の意味も振り返って考えることにします。辞書には「取り扱い」とか「経営」「管理」などの意味が載っています。つまり、ストレスマネジメントとは「個人の心身面に重大な影響を及ぼすことのあるストレスを取り扱う(管理する)こと」という意味で使われていると考えると分かりやすいでしょう。さらに、ここではストレスの取り扱いについてそれを概観する意味を含め「個人的レベル」と「組織的レベル」の2つに分けて見ることにします。

まず、「ストレス」の影響は個人の不調や疾患として現れることから、「ストレス」のマネジメントということになると個人的なレベルが強調されることが多いという事実があります。また、同じ出来事を経験しても、ある人はストレスを感じ、ある人はあまり感じないこともあります。そして、ストレスを強く感じる状況にあっても上手にストレス解消ができる人がいることも事実です。このような経験から、ストレスに関しては個人(レベル)での対処能力が重要であることは多くの方々がお気づきのことと思います。

例えば、認知症の利用者の対処をする場面において、これまで何十年もその介護にあたってきたベテランスタッフに比べ、まだ認知症利用者の対処経験の浅い新人では、当然のことながら、新人のほうがより困難を感じやすい場合が多いと考えられます。しかしながら、両者共に対応が上手くいかない場合にはストレスを感じる状態になりやすいと考えられます。また、経験のあるなしに関わらず、上手に他のスタッフに協力を求めることができる人は、多少のストレスがあっても解消して業務を遂行することができるのに対して、何でも一人で抱え込んでしまうスタッフは、常にストレスを抱えた状態になりやすいということもあります。この例からは、知識や技術、そして経験はストレスへの対処に有効な手段ですが、それだけではないことも理解できます。

つまり、たとえ一人でどんなに頑張っても、難しい問題が生じているときには周囲からのサポートがあるほうが、困難を乗り越えやすいことが多いということです。そもそも個人の力だけでは動かしがたい状況(例えば「夜勤のシフト」「人員不足による業務過多」・・・)からストレス状態になることも多くあります。このような場面では、ストレス状態にあるスタッフをいち早く発見し対処することで、より重大な事態を避けることができるのです。

これらの事実から、組織的レベルでのストレスマネジメントも個人的レベル同様にとても重要であるということになります。次表で、それぞれの例を挙げてみました。


表:ストレスマネジメントの個人・組織レベルとマネジメント(取扱・管理)内容の例

 

ストレスマネジメントのレベル

個人的なレベル

組織的なレベル

ストレスにつながる「出来事」のマネジメント内容

新しい知識をつけるために研修・訓練をする(専門知識や技術を自ら習得)
計画的に仕事にあたるようにする
出来事の捉え方を変える

スタッフの補充・育成・研修
シフトの工夫などの労働条件の調整
管理者⇔スタッフ、スタッフ間、管理者間コミュニケーションと協力関係の促進

↑両方に関連するマネジメント内容↓

自己の健康管理
生活習慣の確立

スタッフのストレス状態の把握
ケースカンファレンス(事例の検討)

ストレス「状態」のマネジメント内容

ストレス解消の活動(セルフ・ケア)
休養

相談
スタッフのストレス状態への対処


この表に記載されている組織的レベルのマネジメント内容では他の目標を持って、既に取り組んでいる項目も多く含まれていることでしょう。次回以降では具体事例をもとに、既に実施している項目をストレスマネジメントにつなげていくひと工夫について考えていきたいと思います。

(監修:アイエムエフ研究センター)