オールライフマガジンALL LIFE MAGAZINE

「介護現場のストレスケア」その31.(ストレスを個人・組織の両面でとらえる)

2012年08月12日

 ストレスマネジメントには、それぞれの人が自分の問題としてストレス状態を解消・解決したり長期化・増大させないようにしたりする「個人的レベル」と、施設や事業所単位で取り組む必要のある「組織的レベル」があることについて前回触れました。「組織レベル」の取り組みには、ストレス状態になりにくい環境づくりや、早い段階でのストレス状態の発見・対応、スタッフ一人ひとりへのサポート体制の充実などを図っていくなどが代表的なことです。今回はそれらを深堀りしていきます。


どういう時にどのような対策を行えば良いのか?

ストレス対策としての取り組みを考える場面では、多くの現場から「効果的な対策はあるのか?」という声が聞こえてきます。そこで、どのような問題が生じているときにどのような対策を行うと効果的なのか検討してみることにしました。ここで重要なことは、まず、ストレス状態の原因となりやすい出来事やストレスから生じてくる問題についても考えてみることです。まず、ストレス状態から生じる問題について考え、次にその原因について触れるという順序で実施しています。

◆ストレス状態から生じる問題
プロのカウンセラーがカウンセリング業務をしていると、実際には睡眠困難や食欲不振、またはその他のストレス性疾患が認められても「ストレスっていっても思い当たることは何もないんです」とお話になる職員さんにお会いすることがよくあります。一方で、ほんのちょっとした出来事ですぐに落ち込んでしまったり、逆に怒り出してしまったりする方もおられます。このようにしてみると、その影響の出方は人それぞれです。現実には本人が自覚していても自覚していなくても、ストレス状態が続くとさまざまな影響が出てくるのです。その影響の例としては前回もご紹介したように、燃え尽き症候群のような状態や、うつ病、胃潰瘍などの疾患、また睡眠困難や食欲不振などもその影響です。そして、長期間続くイライラや気分の落ち込み、集中力の低下や興味の減退、何事もおっくうな感じなど、さまざまな心身の症状を挙げることができます。

 では、ストレスの影響はそれだけでしょうか? 実はここまで挙げたのはまさに「個人的レベル」の状態なのです。施設や事業所のスタッフのうちの一人が、仮に上記のような何らかの心身の症状を持ったと仮定します。それは組織にとってどのような影響が出るでしょうか?おそらくその人を介した、もしくはその人を含めた形での意思疎通は不十分になってしまい、その人ができる仕事量が減ることで周囲の人の負担が増し、さらに組織としてもっとも避けなければならない状況として、集中力が低下することによるミスや事故の発生が考えられます。そうなると、まるでその組織自体がストレス状態になってしまったかのように、機能不全を起こしてしまうこともあるのです。また、このような状態が続くことで、個人のストレス状態が組織に影響するだけではなく、組織自体が歪み、さらに大きな問題を生じさせていること考えられます。

 さらに、このような状態になると、その中にいる個人は軒並みストレス状態になってしまうという悪循環を生み出すことも考えられます。このような経験を通して、そこで働く個人のストレス状態を注意深く捉えることも重要ですが、「組織のストレス」状態にも十分な注意が必要であると考えてください。


原因は個人レベルに限らず組織や地域にあることも少なくない

◆ストレスの原因となりやすい出来事
ストレス状態の原因はどんなことがあるでしょうか? これはひとりひとり違うことが多く、そこには、たくさんの項目が挙がることでしょう。皆さんも、イライラやいやな感じがなかなか頭の中から抜けずに、何となく倦怠感を持ったり、いつの間にか疲労が溜まったりするのは、どのようなときが多いかを考えてみるといくつか思い浮かぶ場面があることでしょう。ここでも「思い当たることは何もない」とおっしゃる方も少なくないはずです。その内容は、仕事の場面(部下がいうことを聞かない、休みがまったく取れないほど忙しい、責任が重い、など)だけにとどまらず、家庭(子どもとの時間が持てない、仕事との両立が困難、夫婦間の問題、など)や地域(近所との問題、地域の役割が重荷であるなど)、さらには自分自身の健康上の出来事などもストレス状態の原因になりえます。また、これまでと同様に個人とは別に組織自体のストレス状態(歪み)の原因もあると考えられます。

組織はそれぞれの地域社会にあり、人と人のつながりによって成り立っているわけですから、そのストレスの原因としてはそこにいるスタッフ・管理者・ご利用者および関係者の人間関係と地域社会との関係(その背景として社会制度・法令や社会情勢)などをあげて考えることが必要となります。

これらを整理する方法として「見える化」して客観視することをおすすめします。
下表を記入することからはじめてみましょう。

 

個人的なレベル

組織的なレベル

ストレス状態の原因

仕事場面(            )
家庭・地域(            )
自分自身(            )

人間関係(            )
地域社会との関係
(            )

ストレス状態の影響

さまざまな心身の症状:
燃え尽き症候群
うつ病、胃潰瘍などの疾患
睡眠困難、食欲不振、長期間続くイライラ・気分の落ち込み、集中力の低下、興味の減退、何事もおっくうな感じ・・・
その他(                        )

組織の機能不全:
管理統制がうまくいかない
スタッフ間のコミュニケーション・意思疎通の減少
利用者・関係者からの苦情の増加
事故・ミスの頻発・・・
その他(                        )

次回も、個人的レベル・組織的レベルの整理をすすめていきます。

 (監修:アイエムエフ研究センター)