オールライフマガジンALL LIFE MAGAZINE

「介護現場のストレスケア」その33.(介護職としての成長過程とストレス2)

2012年10月13日

 前回「職業人としての成長の過程」と「それに伴うストレス」について取り上げました。第一ステップとして、新人のストレス状態(元気がない)を例として取り上げました。今回は新人のストレス対策という課題について「個人的レベル」の「原因」と、ストレスマネジメントの「組織的なレベル」についてもう少し掘り下げます。新人のストレスをまとめた後掲の表(前回も掲載)の主要なポイントを見ていきましょう。


「こんなの学校で習ってない!」個人的なレベルの「原因」

 近年、専門学校や短大、大学での専門的な教育を受けている新人が多く、基本的には介護職を生業とする上で必要な知識や技術をしっかりと学んできている新人も少なくありません。しかし、どのような学校であっても共通して学んでいないこと(学べないこと)があります。それは、自分が入職した職場特有の習慣や独特の決まりごとなどです。
 また、雰囲気や人間関係のような側面も学校では学ぶことのできないものです。さらに、どのような仕事であっても、日常的に上手く効果的な仕事をする上で、知識や技術あるいは理論的な思考とは関係のない個人間の感情面における出来事がかなりの割合を占めることがあります。そのような状況への対処は学校では学ぶことは困難です。そうなれば、新人にとって個人的感情面における出来事への十分な準備はできるはずがありません。したがって、新人たちは単に仕事がうまくできないということからストレス状態になることよりも、仕事について習熟していないばかりではなく、職場の人間関係や感情面の問題などを受けてストレス状態に陥ることのほうが多いと考えられます。
 後掲の表内の「新しい仕事」、「慣れない仕事」は、実際の仕事そのものであると同時にこのような側面も含んでいることを理解しておくと新人を育成する上での指導者の対応が少し変わるはずです。加えて、新人の生活面についても考えてみると、心身ともに健康な生活を送り、仕事の成果をあげるためにどのような習慣を身につけるべきかなど、個々の生活についてまで学校で教えることは困難です。ましてや家庭でもそれを学んでいないとすれば、例えば一人暮らしを始めたばかりの新入職員の場合には、自分の生活を組み立てていくことに困難を感じる人もいるということになります。
 また、一人暮らしでなくても身体的・精神的に健康を保つための良い生活習慣を上手に身につけていくことはとても重要ですが、これを身につけることができている人は意外に少ないものであることを私たちは感じていると思います。職場だけでなく生活面にもストレス状態の原因(あるいはストレス状態をより悪化させてしまう要因)は十分に存在するということをご理解ください。


私たちは何ができるか 組織的レベルの対応

 このような原因を抱えている新人たちにどのように対処すべきでしょうか。ここでは、問題を抱えている本人以外がその問題に対処することをすべて「組織的レベル」と考えます

■面接と声掛け
 表では上司による定期的な面接と、新人担当者による頻繁な声掛けを例としてあげました。これらは、問題を抱えた本人が積極的に質問することや周囲の考えを聞くという行動をしやすくするための環境づくりにもなりますし、しっかりと新人をフォローすることで安心感をもたらす情緒的なサポートにもなります。また、上記の「原因」で解説した通り新人が直面する問題の多くは、仕事単独の問題であるよりその職場独特の習慣や、人間関係、感情的な問題と関連して生じていると考えられることから、面接や声掛けの中でこれらの面への配慮も含めることが大切でしょう。また、表に書かれているように回数や頻度、また誰がそれをするかについて明確に決めてあるとより良いものとなります。
■ポジティブフィードバック
 ここで組織的レベルのストレスマネジメントの中に入っている「ポジティブフィードバック」という言葉について説明します。この言葉は「ポジティブ」と「フィードバック」という言葉から成っています。まず、フィードバックですがここでは「その人の行動・振る舞いの様式・やり方や結果をその人に伝えること」という意味です。たとえば椅子から車椅子への移乗介助場面についてある新人が行っているのを見て、「あなたは移乗介助をする前に腰を低くして足を少し前後に開くなど安定した姿勢をとることができてしっかりと引き起こすことができていましたが、利用者の手の位置に配慮できず利用者が辛そうな顔をしていました。」のように「できているところ」「できていないところ」、そういうやり方をして生じた結果(成果・問題点)について伝えることです。ここで注意が必要なのは「何が」「どのように」「どうなったか」という点が具体的に述べられていることが大切だということです。単に「上手にできましたね」というのでは「フィードバック」にならず、「(抽象的に)褒めている」だけになってしまいます。
 一方、「ポジティブ」とは「肯定的」ということですが、ここでは「~できていない」「ダメ」「悪い」などの表現を用いないということになります。その代わりに「~した方が良い」「次は~しよう」のように代わりの方法を伝えるようにします。上の例だと「・・・利用者の手の位置に配慮できず・・・」という部分を「利用者の手の位置にも気を配れるようになるといいですね」のような表現で伝えます。このようにその人がしたことをそのままその人に伝え、どうしたことがどのような結果を招いているのかということをポジティブに伝えるだけでも伝えられたほうは自分の課題がわかり次へ取り組むモチベーションが高まります。


表.新人のストレスのまとめ (例)

課題・問題点

入職の新人に元気がない

 

個人的なレベル

組織的なレベル

原因

新しい仕事が始まり慣れない仕事をしている、
実家を離れ一人暮らし、食生活・睡眠リズムなどの生活の組み立てが難しい

制度改正があり新人対応にこれまでほど時間を割けなかった
主任クラスが2名長期療養中で人手不足

ストレス状態の影響

落ち込みやすい、よく泣いている、ボーっとしている、あせっている
仕事でのミスが多い

ミス・事故の処理が必要だが何もできず、利用者からの苦情も増える
上司もつい声を荒げてしまう(イライラしている)

ストレスマネジメント

ストレスにつながる
出来事のマネジメント内容

先輩に積極的に質問をする
毎日自分ができたことを確認する
規則正しい生活のプログラムを立て、実行する

新人と直接の上司との2週間に1回以上の定期的な個人面談
仕事中に定期的に(例えば2時間に1回以上先輩が声をかける など)

↑両方に関連するマネジメント内容↓

先輩や同僚の体験、考えなどを聞く

ミスを見ても普段通りの声で話しかける
改善が必要なことは、後で丁寧に解説する。

ストレス状態の
マネジメント内容

週末はしっかりと休養する
週に一度は遊びに行く

状態を注意して観察
必要な時には専門医やカウンセラーを紹介する

(監修:アイエムエフ研究センター)