オールライフマガジンALL LIFE MAGAZINE

「介護現場のストレスケア」その34.(介護職としての成長過程とストレス3)

2012年11月10日

 前回、前々回と新人を題材としたストレスの原因とそれに対する組織的な対処(マネジメント)方法について取り上げました。今回は、個人的なレベルの対処について取り上げます。
前回、表で示した新人のストレスの中で新人が自分でできるストレス対策を整理すると(1)先輩などの周囲とのコミュニケーションを増やすこと、(2)自分自身の仕事・生活を振り返ることの2点に集約されます。この2点を個人的なレベルの対処のポイントとして考えることで、意外に容易で日常的に取り組める対策であることに気付きます。


コミュニケーションを増やすこと

 周囲とのコミュニケーションを増やすことに関しては、出来事のマネジメントとして「先輩に積極的に質問をする」ということが挙げられます。一方、出来事・ストレス状態両方に関連する対応として「先輩や同僚の体験、考えなどを聞く」ということが挙げられます。

 何らかの出来事が、その人にとってストレス状態の原因になるかどうかは、その人の置かれた状況や立場、その人の技術、知識などさまざまな要因によって左右されます。たとえば「介護記録の記入」という仕事があった場合、何年もそれを記入している人にとっては、どのような着眼点で、何について、どの程度記入すればよいということが、経験の中で感覚的に分かっていることでしょう。そうなるとこの仕事は日常的な活動であり、何か苦痛を強いられる仕事には感じられないかもしれません。しかしながら、初めてそれに記入する人や、記入するという経験の浅い人などからすると、何を、どのように、どれくらい記入すればよいものか分からず(自信を持てず)書くこと自体が億劫に感じられるということもあるでしょう。

 このような場合、もちろん研修や書籍などで勉強することもできますが、新人にとって最も気軽で効率的な学習方法は直接先輩に聞いてしまう方法であることが往々にしてあるようです。実際の業務の流れをみると、ほとんどの仕事がその職場のご利用者や職員、道具の置き場所などのさまざまな事情やその環境に合わせて独自にアレンジされています。また、介護記録内容を見ても事業所内の物の置き場所や職員の氏名や職位、介護方法などその職場独特の呼称が微妙に用いられていることも多いようです。そして、記録をつけるタイミングや場所もさまざまです。そうなると、やはり経験がものをいますので、記録が日常の業務としてできるようになるには、先輩に聞くという学習方法が書籍での勉強よりも効果的であることは明白です。また、これら事業所独特の事柄について先輩にさまざまな質問をしていくことは、結果的に「その職場に親しんでいく」過程を考えると非常に重要な項目となります。

 もうひとつの「先輩や同僚の体験、考えなどを聞く」というのもコミュニケーションに関連したストレス対処の方法に挙げました。一般にストレス状態に陥った際に、それが重態化する場合には必ずといってよいほど自分の失敗やうまくいかないこと、困難なことを考え続けてしまい、考えれば考えるほど落ち込んでいく...、という過程を経ることが多くあります。このような場合には自分ひとりではなかなか出口を見つけられないことが多いので、その部分を先輩同僚などに手伝ってもらい、その人の経験や考え方を教えてもらい、それまで一人では見えなかった「別な考え」を身につけていけるようにしていくことが必要になります。その意味でコミュニケーションに関連したストレス対処の項目としています。


自分自身の仕事・生活を振り返ること

 もうひとつの個人的レベルの対処のポイントは「自分自身の仕事・生活を振り返ること」です。これには「毎日自分ができたことを確認する」、「規則正しい生活のプログラムを立て、実行する」、「休日はしっかりと休養する」、「週に一度は遊びに行く」などがあてはまります。この中で「毎日自分ができたことを確認する」ということについて考えてみます。

 多くの新人が入職後数ヶ月~半年くらい経過すると壁にぶつかることが多いようです。特に気をつけなければいけないのは、仕事熱心でまじめな新人職員であればあるほど共通している悩みが「(自分は)いろいろなことができない」ことに関連していることです。

 新人は職場内でもっとも未熟な存在であり、いろいろなことができないことは、ある意味当然といえば当然なのです。しかしながら、自分はこれくらいできるだろうという見込みや、先輩職員のスキルとの大きな差に愕然としたり、先輩に「できないこと」を指摘されて落ち込んでしまったりするパターンが多いようです。このような状況になると多くの人は、できていない部分をクローズアップしてしまう傾向があります。全体的にはできているにもかかわらず、少しでも失敗してしまうと、その失敗に目が行ってしまい「自分はこんなこともできない」と自分を責めてしまうのです。できていること(毎日の単純作業なども含む)があるということを忘れてしまうのです。

 したがって、ここでは毎日の仕事を「○○した」、「○○できた」という表現を使いながら振り返ると良い方向に向います。場合によっては指導係の人がそれを聴いてあげることも良いことです。その時には
(1)今日実施したこと
(2)その中でこれまで苦手だったことでできるようになったもの・初めてやったこと
(3)今日の反省点(ただし「~まではできたが、~が課題」のようにできた部分を必ず入れる
などの形式をとると整理しやすい。

 生活面のことについては詳しくは述べませんが、近年一層夜型ライフスタイルをとる若者が増えていることや、無理なダイエットやエネルギー過多など栄養面の問題などについても配慮が必要な場合も増えています。また、人の命をお預かりしているというプレッシャーや耐えることの多い仕事をしているので、精神面を平常に整えるためにも、仕事のことばかりではなく、時にはしっかりと仕事との距離をとることや休息がこの業務にとっては非常に重要であることをもっと認識すべきでしょう。


(監修:アイエムエフ研究センター)