オールライフマガジンALL LIFE MAGAZINE

「介護現場のストレスケア」その36.(管理職としてのストレス2)

2013年01月13日

■管理者・リーダー職に求められる役割への準備

 前回は「管理者・リーダー職」に求められているいくつかの役割について考えました。その中で、一言で「管理者・リーダー職」といっても様々な役割があり、対応しなければならないことは多岐にわたるということを説明しました。しかも、その中にはそれまでの積み重ねた経験だけでは対応できない、全く異なった新しい能力を必要とする役割も含まれていました。前回説明した役割の分類(1.マネジメント:マネージャー役、2.ベテラン:仕事の熟練者、3.コーチ:仕事の指導者、4.コンタクト:連絡・調整役)に沿って考えると、2の「ベテラン」というのは、それまでの仕事の積み重ねの結果辿り着く領域と考えられますが、その他の役割は、管理者・リーダー職に就くまではあまり担わない役割として分類できます。言いかえれば、それまでの積み重ねや経験だけでは管理者・リーダーに求められる役割の1/4しか身についていない可能性があるということになります。しかし、人によっては管理者・リーダー職に就いた時から、これらの4つの役割をてきぱきと上手にこなすことができる人もいるのですが、それは「たまたま」その人が「できる」人であったと考えた方が良いでしょう。おそらく誰しもが急に街頭演説をしろと言われてもなかなかできないのと同様に、新しい役割を果たすためには、そのための準備と訓練が必要なことは言うまでもありません。今いる職員が「管理者・リーダー職ができるようになっていく」のではなく、「管理者・リーダー職ができるように育てていく」と考えて取り組んでいく組織の姿勢が必要です。


■各役割のストレスとその対処

 様々な役割からそれぞれストレスを感じることがあることは説明しました。したがって、役割が多い管理者・リーダー職の場合は、それまでとは比較にならないストレスにさらされる可能性があります。

 しかも初めて管理者・リーダー職に就いた人であれば、不慣れな役割を担うわけですから、一見当たり前の何の変哲もない仕事までもがストレスの原因となっていることがあります。したがって管理者・リーダー職への「ストレス対策」の第一歩としては「管理者・リーダー職」に求められている役割に含まれる業務を分析し、その業務を習熟させていくことが重要となります。これは、一般的な管理者・リーダー研修でもよく取り上げられますが、ストレス対策の視点からは「不明確なまま残すこと=ストレスの原因になる可能性」があると考えますので、そのための訓練や準備は、より丁寧なものにすることが大切です。

 以下では、各役割に関連する仕事とその対策について考えていきますが、同時に皆さんの事業所で、その役割にかかわる具体的な業務をあげて整理してみてください。


1.マネジメント:マネージャー役

 管理者・リーダー職の職能として最大のものとも捉えられているのが、この「マネジャー役」なのではないでしょうか。ここでは、自分の担当するグループ(組織)や領域が適切に機能するように仕切り、構成員に対して指示や支援をする役割が求められています。組織を仕切ることや指示・支援したりするための業務を挙げてみましょう。


2.ベテラン:仕事の熟練者

 これは他の役割と異なり、それまでの積み重ねと経験によって到達する領域です。多くの場合、同じ仕事ならばはじめての時より習熟してからの方がストレスはなく、比較的楽にできるものです。ところがこの「熟練者」ということがひとつの役割になった途端にストレスになることが生じます。それは周囲からの過度な期待によります。「ベテランなのだから」とどのようなことが期待されるかを挙げてみましょう。


3.コーチ:仕事の指導者

 これまでの繰り返し述べているように自分ができることとそれを人に教えることは全く違う技能です。一方で、管理者・リーダーには新人教育やその他のスタッフの育成、新しい知識や技術の伝達、知識・技術レベルの維持など人に「教える」ことが多く求められます。適切な指導法を知らずに指導者としての職能を求められた場合、上手に教えられず、教えた相手にも何も伝わらないということになりかねません。事故防止上大切な視点は、手順だけを教えるのではなく、「なぜそうするか。なぜその手順になっているのか」を説くことが、人を育てることに繋がると考えてください。


4.コンタクト:連絡・調整役

 人と人の調整をするということは、時に非常に大きなストレスを感じるものです。特に、利害が一致しない人との調整は大変です。職場内の別な部署との調整では、本来大きな利害は一致するはずなのですが、往々にしてどちらがどの程度何をするか(あるいはしないか)という話し合いになると目先の利害が一致せず(つまり一方の部署が多くなるとか少なくなるとかということ)難しい調整が生じます。また利用者家族との調整でも家族の思いと事業所の方針が一致しないことも少なくなく難しい調整を強いられることがあります。これらの場面では時に感情面のぶつかり合いも生じてしまい、非常に強いストレスを感じることが少なくありません。

次回はより具体的なケースについて取り上げていくことにします。


(監修:アイエムエフ研究センター)