オールライフマガジンALL LIFE MAGAZINE

「介護現場のストレスケア」その38.(管理職としてのストレス4)

2013年03月13日

■管理職のコミュニケーション(部下とのコミュニケーションについて)

 前回までに、新たに管理者・リーダー職につく人のストレスへの対応を考えるあたり、管理者・リーダー職の仕事には様々な役割が含まれていることを整理してきました。また、それぞれの仕事に含まれるストレスの原因について、分析し対策を立てることの有効性やその方法についても説明してきました。そのストレスの原因の特徴を整理すると、1.相手があること、2.その相手からの働きかけに即した反応が求められること(=相手に合わせること)、3.見通しが立ちにくいこと、などがあげられます。そこで今回は、これらのことについて少し詳しく見ていくことにしましょう。


■コミュニケーション自体は多くの場合ストレスの原因ではない

 まず、特徴としてあげた「相手がある」、「その相手にあわせる」、「見通しが立ちにくい」ということは、一般的にはどのような状況があるのでしょうか。たぶん一番わかりやすい例は、誰かを相手にしたコミュニケーションの場面でしょう。日常生活の中で、私たちが誰かと会話する場合でも必ず相手がいます。その場面では、こちら側も相手が話す内容に応じて、相手に合わせた返事をしなければなりません。皆さんも、何気なく会話が進むうちに、最初には想像もしていなかった結果になって驚いてしまった、または困ってしまったなどの経験もあるのではないでしょうか。

 そのように考えてみると、コミュニケーションの場面というものは、以外にも見通しが立ちにくいと考えることができます。では会話など他者とのコミュニケーションを図る場面は、私たちにとってストレスの原因になっているのでしょうか。私たちの日常を振り返ってみると、コミュニケーションは決して「ストレス」を感じるものではなく、多くの場合、むしろ「喜び」や「癒し」などを感じることができる場面となっているのではないでしょうか。従って、コミュニケーションそのものがストレスの原因になるわけではないのです。では、何がストレスの原因になっているのでしょうか。

 そこで、「元気のない部下の様子に気を配る」という状況について考えてみることにしましょう。この「元気のない部下」に関わろうとする際、あなたなら最初にどのように考えてその部下に接しようとしますか。まず「少しでも元気になってもらいたい」と考えて接することを優先してしまうのではないでしょうか。「少しでも元気に・・・」というのはごく当然の気持ちで、できることなら上司として何とかしてあげたいと思うことでしょう。そして、いろいろ話しかけたり、働きかけたり、気を遣ってみたりするのです。このような場面で特に強くストレスを感じるのは、そのようにしてこちらが何かしているのに、当人は全く変わらなかったり、一瞬元気そうな表情はしてもすぐに元に戻ってしまったり、場合によっては余計に調子悪そうな表情をしたりという時ではないでしょうか。そのような時は誰でも「コミュニケーションって難しい」、「人に対応するのはストレスがたまる」ということになって行くのです。


■コミュニケーションで大切なのは「聴く姿勢」

 ところで、当人(部下)の元気がない状態にはどんな原因があるのでしょうか。また、どうしてほしいと思っているのでしょうか。そして、そもそも「元気がない」ように見えますが本当にそうなのでしょうか。この部下がどうしてそうなっているのか、またどうして欲しいのか、どういう状態なのかはわかりません。皆さんが実際に部下に接する時であっても、このように「何も分からない」という状況は意外にも多いのではないでしょうか。そんな時は「少しでも元気に・・・」と何かをする前に、その部下の状態やその原因、現在の思いなどに耳を傾けてみてはいかがでしょうか。実は、よく見ていると、状態や原因、そして今の思いに『耳を傾けるからこそコミュニケーションが成立する』ことに気づきます。そもそも、コミュニケーションは情報などが相互にやり取りされることを指します。また、より良いコミュニケーションに必要なことは、相手から伝えられた情報を誤解なく受け止め正確に理解することです。この原則にのっとって「元気のない部下」への対応場面を捉えなおしてみると、次のようなことがわかります。最初に部下から「元気のない様子」という状態が発信されています。ですので、それに対して最初にするべきことは「何とかしよう」ではなく、まず相手の状態や発信している情報を正確に受け止めるということになります。もし最初から「何とかしよう」としているのであれば、これは相手から発信された情報を受け止めていないことになり、その時点でコミュニケーションが十分に成立していないということになります。きちんとしたコミュニケーションを成立させるためには相手から発信された情報を受け止めることから始めるのが重要なのです

 さて、「何とかしてあげよう」としてうまくいかないと、それがストレスになっていく可能性があることを説明しましたが、これはまさにコミュニケーションが十分に成立していないことから生じる問題だといえます。そうであるならば、相手に合わせるということは、「何かをする」「何かをしてあげる」のではなく、まずは相手の状態を受け止めることから始めると良いということになります。今回は管理者・リーダー職が直面する可能性のあるストレスのうち、事前の対処が難しいものとして「相手がある」、「その相手にあわせる」、「見通しが立ちにくい」という条件があり、これらにあてはまる場面としてコミュニケーション場面について『耳を傾ける』ことの意義を説明しました。次回はさらにこのコミュニケーション場面について考察し、その場面での「ストレスを感じる」という状況そのものについて考えていきたいと思います。



(監修:アイエムエフ研究センター)