オールライフマガジンALL LIFE MAGAZINE

「介護現場のストレスケア」その39.(管理職としてのストレス5)

2013年04月19日

 前回、管理者・リーダー職の人が対応する状況の中で「相手がある」「その相手に合わせる」「見通しが立たない」場面のコミュニケーションについて取り上げています。簡単にまとめると「元気がない」などそれぞれの状態・状況にある部下に対して、最初にすべきなのはその部下を何とかしようとすることではなく、その状態・状況あるいはその部下自身を「知る」ことから始めようということでした。


■なぜ「知る」ことからはじめるのか

 それは、部下から「元気がない状態」という情報発信があった時、それに対応する上司(側)が「何とかしよう」とすると、実はこれも部下に対し情報を発信しようとすることになってしまいます。そのために互いに情報を「出す(発信)」役割ばかりで、「取る(受信)」役割がいない状況となってしまいます。コミュニケーションとは、情報が「やり(出す)取りされる」ことを指しますので、両方が発信するばかりで受信者がいないということでは、コミュニケーションは成立しないのです。

 一方が情報を発信したら一方はその情報を受信することでコミュニケーションは成り立ちます。ですから、部下が「元気がない状態」などの発信をしてきたら一旦はその情報をしっかりと受信することから始めることで部下との適切なコミュニケーションが成立するようになります。

 このようにコミュニケーションの場面では、まずは相手の発信に気づき、受け止めることが基本となります。万一、受信することを忘れてしまったときには、本来は単純な問題であっても「難しい」問題に一変してしまう可能性があります。特に人の生活を支援する介護現場においては、情報が「やり取りされる」コミュニケーションの基本を忘れずにいたいものです。

 ところで、コミュニケーションでやり取りされる情報とは、どのようなものが考えられるでしょうか。たとえば、言葉や文字などで伝えられるものもありますし、「元気のない部下」の例にあるように何かの「様子」など、言葉や文字などでは伝えられない側面も持ち合わせています。また、仕事上の依頼や指示のように同じ職場の仲間であれば、誰もが明確に理解できる情報もあるでしょう。それに対して、気持ちや情緒のように、明確な表現が難しく、正確に伝えることが難しい情報もあります。このように単純にコミュニケーションと言っても、様々な側面や課題を伴っています。コミュニケーションの全体像を考えるには、まだまだ多くの記述が必要ですが、重要な点をまとめておきます。特に介護現場の管理者・リーダーとしての役割をお持ちの皆さんにとって重要な側面を中心に取り上げてみます。


■言葉ではない側面の重要性(非言語コミュニケーション)

 例えば、重大なミスをした部下が「申し訳ありません」と言いながら、ニヤニヤしていたらあなたはどのように感じるでしょうか。または、あなたが何か困った問題について、誰かに真剣に相談をしているときに、その相手が「それは大変だね」と言いながら、椅子の背もたれにふんぞり返るようにして座り、腕組みをし、よそ見をして聞いているとしたら、あなたはどのように感じるでしょうか。

 前者の場合は、どんなにその部下が反省し、きちんとした内容の善後策を話していたとしても「なんでニヤニヤしているんだ」という怒りの方が大きくなってしまうのではないでしょうか。また、後者の場合は「ああ、この人は私の話をそれほど真剣に聞いてはくれないだろうな」と不信を感じることでしょう。

 上記の例はいずれも、言葉の内容と表面上の表情やしぐさが一致しない例です。共通しているのは、双方とも私たちの判断基準が、言葉の内容ではなく表情やしぐさであるという点です。これは、とても重要なことです。たとえば部下からの相談を受けた時に「聞く」姿勢をしっかりととれていないと、相手には「聞いている」ということが伝わらないことを意味しています。管理者・リーダー職の人がどんなに一所懸命に話を聞いている「つもり」でも、身体がその状態になっていなければ聞いているということが伝わらないということになります。この事実からわかることは、人の話を「聞く」ことは技術であるということです。従って、練習をすれば誰でも上手に聞くことができるようになります。それにはさまざまな方法があり、よく研修等でも取り上げられますが、ここでは最も代表的な三点をご紹介します。

 1. 相手の目を見る:ただし数秒以内を繰り返すように、

 2. 言葉の内容にあわせうなずく:相槌を打つ、

 3. 体重をやや前方にのせる:机がある場合は机に腕をつく程度で

 もちろん聞く技術ついては、まだたくさんの項目があります。しかしながら、まずはこの三点だけ注意しておくだけでも「聞いている」ことが相手に伝わりやすくなります。「元気のない部下」とのコミュニケーションの場面でも、受信(発信を受け止める)するような場合には、聞く姿勢に気を配ることでより効果的になることが期待できます。


(監修:アイエムエフ研究センター)