オールライフマガジンALL LIFE MAGAZINE

「介護現場のストレスケア」その40.(管理職としてのストレス6)

2013年05月15日

 前回は、管理者・リーダー職におけるコミュニケーションの留意点について説明しました。管理者・リーダー職になると上司として、また職場の先輩として部下の様々な相談に乗る機会が増えます。相談を受ける場面では、相手の要求に関係なくアドバイスが必要となる場合もあれば、相手から積極的にアドバイスを求められる場合もあります。そして時には、責任者としてご利用者やご利用者家族との直接のコミュニケーションが必要になることもあります。このようなコミュニケーション場面での大切なポイントとして、まず自分が「話をする」前に相手の話をよく聴くことが第一段階として必要なことでした。そしてこの段階での具体的なスキルとして「わたしはあなたの話を聞いています」ということを相手により上手に伝えるために言葉以外の非言語面の基本的な「聞く姿勢」について整理をしました。

 今回は、管理者・リーダー職としてのコミュニケーションにおけるその他の留意点を踏まえながら次の段階に進んでみましょう。


■意図しないコミュニケーションを意識する ~「聞く」ことの積極性~

 コミュニケーションのひとつの側面として、言葉だけではなく、しぐさや姿勢、表情などからも様々な情報が伝わる可能性があります。第一段階としてこの側面を上手に活用することで、話を「聞いている」ことを相手に伝えやすくなることは、これまでのコラムからもご理解いただけたと思います。

 コミュニケーションの場面においては、話し手が話す内容を聞き手が「受信する」と同時に、話し手は自分の話しを聞いてもらえた、自分の話しが伝わったと感じることで、話し手が安心感や満足感を得ることができます。ですから、聞き手がよく「聞いている」姿勢を話し手に上手に伝えることは、話し手の安心感や満足感を得ることに直接的につながるので、コミュニケーションの場面では大変重要なことであることが分かります。しかしながら、日常のコミュニケーションの場面においては、聞き手が特別に「安心感を与えよう」と考えていることはおそらくないでしょう。日常的な場面でも、「聞く」ことが自然にうまくできているとすれば、話し手も自然に安心感を得ていることが多いはずですが、残念ながら私たちがよく見るのは、その逆の場面ではないでしょうか。

 第一段階で整理した「聞く姿勢」に注意を払いながら相手の話を聞いていたとしても、安心感どころか場合によっては戸惑いや怒りなどを相手に感じさせてしまうことも少なくありません。そのような事態になってしまう理由には、①気を配っているはずの「聞く姿勢」が一貫していない場合、②「聞いている姿勢」とは異なったメッセージを言語的あるいは非言語的に出してしまっている場合が考えられます。①についてよくある例は、話す相手の目を見てうなずきながら、やや前傾で聞いていたとしても、途中から次第にその姿勢の一部が崩れてしまうこと、さらに話すときの声のトーン、話す早さなどがころころ変わってしまうケースなどが当てはまります。

 皆さんも想像をしてみてください。あなたが話をしているとき、聞き手の返す声が突然高くなったり、低くなったりしたとするとどう感じるでしょうか。「よく聞いてくれているように見えるけれど・・・、本当に理解してくれたのかな」と戸惑う気持ちになるかもしれません。②についてよくある例では、「聞いている姿勢」はできている(=「あなたの話を聞いていますよ」というメッセージが出ている)のに、口を開くと同時に「あなたは間違っている」と大声で言われたとしたら話し手はどう感じるでしょうか。
おそらく「結局、この人は私の話を聞いてくれていなかったのか」と怒りや失望感などを抱くことでしょう。

 このように、話し手は聞き手の姿勢や言葉を含めた反応など様々な情報を自然に受信しています。
そして、話し手はその情報に影響されてさまざまな印象を持ってしまい、聞き手に対する気持ちまで変化してしまいます。言い換えると、話し手は自由気ままに話しているように見えますが、その一方で、聞き手がどのように聞いているかということの影響を強く受け、「聞き手に合わせて」話しをしているということになります。ですから、「聞くこと」は決して受動的な作業ではなく、とても積極的な働きかけであると言えるのです。コミュニケーションの場面では、話し手は聞き手(自分)の影響を受けながら「聞き手に合わせて」話しをしていることを理解して、「聞くこと」は積極的な働きかけであると認識をしてください。この意図しないコミュニケーションを意識することが第二段階となります。


■聞き手としての失敗を減らすために

 さて、ここまでコミュニケーションの中の「聞くこと」について説明してきましたが、「聞く」ことは結構面倒なことだという印象を持たれた方も多いのではないでしょうか。また、管理者・リーダー職になったら面倒な特別な聞き方をしないといけないのかと疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら、そんなことはまったくありません。ここまで「聞く」ことについて考えてきた理由は、管理者・リーダー職にとって「聞く」ことが、当然の役割として求められているからです。当然の役割とされている以上は、できる限り「失敗がないように」聞くことができて当たり前と考えられます。
それでは、管理者・リーダー職の方々は失敗なく聞くことができているのでしょうか。残念ながら、その役割が十分果たされていないことで、職場環境の悪化などが発生しているのではないでしょうか。さらに、管理者・リーダー職には「聞く」ことを当たり前の能力として求めている管理職層の方々は、その当たり前の役割を適切に指導することができるでしょうか。誰が悪いということではなく、そこには、なかなか難しい現実があるように思います。

 では、「間違えのない」聞き方とういうのはあるとすれば、どうすればよいのでしょうか。「間違えのない」ということでは、前回説明をした「聞く姿勢」は、かなり高い確率で「間違いない」方法のひとつであると思います。しかしながら、「確率」の問題であり「絶対」ではありません。
間違えのない聞き方として唯一の正解は、話し手の観察を通して、話し手に合わせた対応をする」ということになります。言い換えると、手がかりは話し手その人自身にあるいうことです。次回は、聞き手としての失敗を減らすために、話し手から手がかりをみつけるための工夫を具体的に考えていきましょう。


(監修:アイエムエフ研究センター)