オールライフマガジンALL LIFE MAGAZINE

「介護現場のストレスケア」その41.(管理職としてのストレス7)

2013年06月11日

■「聞くこと」のまとめ

 前回、介護現場での部下とのコミュニケーション場面における失敗を減らすための工夫・留意点について解説しました。この問題は、日常的、基本的という認識の中で忘れがちになりますので、現段階までのポイントを再度振り返っておきます。

 まず、コミュニケーションの場面において「聞くこと」は、常に受動的な行動であると考えてしまいがちです。しかし、「聞くこと」は、話をする側の態度や話の内容に大きな影響を与える能動的な行動であり、コミュニケーションの場面では、実はかなり積極的な働きかけであることを理解してください。

「聞くこと」の意味を理解すると、現場で課題の残ったような場面を冷静に振り返ることができて、有効な対処方法が見えてくることも増えるでしょう。対処方法と発想してしまうことで、とても困難なイメージが先行してしまう方もいらっしゃるかもしれません。そこで、漠然とした対処方法ではなく「聞き手」として「失敗」を減らす方策として捉えます。するとその方策のポイントは「話し手を観察し、話し手に合わせた対応をする」ことに尽きるので、少し気楽に対処できるようになります。

 さて、実際の介護現場における日常的なコミュニケーションの場面では、多くの管理者・リーダーの皆さんが、積み重ねてきた経験をフル稼働させて、部下との円滑なコミュニケーション場面に望んでいる一方で、多くの若い管理者・リーダー職が、自分より経験の長いベテランのスタッフと円滑なコミュニケーションが図れずに、課題を抱えながら日々の現場の運営に忙殺されていることも珍しくありません。何より心配なことは、円滑なコミュニケーションによる効果的な現場の運営は、管理職や管理者・リーダーの資質にかかっているのではないかと周囲が勘違いをすることです。これでは、介護現場の人員不足は解消どころかさらに深刻な状況になるように思われます。最初から何でもできてしまう人材が多くいれば、それは素晴らしいことかもしれませんが、現実的ではありません。現実的には、それを人材育成という考え方に変えてみることをお勧めします。育成という考えに基づけば、コミュニケーション力も大切な管理者・リーダーとしての要素ですが、資質ではなく知識や技術の習得と訓練の結果で向上するものと前向きになってもらえます。


■「聞くこと」について失敗しないための「観察して対応する」という具体的な工夫・留意点

 コミュニケーションの場面では、まず相手の細かな変化に気付くことから始まります。そのためには、管理者・リーダー職の人は、普段から部下の様子を心に留めておきます。そうはいっても、部下の様子に普段と異なる変化を感じたとしても、それを適切に言い表せないなどの課題が残ります。そこで、まずは「なんか変だな」とか「どことなく変った」などに気づいた場合、その本人と話してみることで「実際」の状態を確認することから始めます。上司として、気になることがあれば黙っているよりは、とりあえず声をかけることで後々生じる問題を予防できる可能性もあります。
とりあえず声を掛けたときには、相手が何を言ってもまずは肯定(「うん」、「そうなんだ」、「そうか」、「そんな風に感じているんだね」など)から入ること、また、相手が話したことを単純に繰り返したり重要なポイントを要約してあげたりすることも有効であり、行き詰っているときなどには押し付けにならない程度に別な見方を提示することも大切です。

 では両者の立場が「対立的」なケースを考えて見ます。比較的若い管理者・リーダー職の場合、この「対立的」なコミュニケーション場面を苦手にしている人が少なくありません。その理由としては、これまではひとりの職員(部下)としての立場でしたので「対立的」な場面があっても「言いっぱなし」が許されていました。しかしながら、管理者・リーダーになるとそれでは済まされないということがあります。言い換えれば、管理者・リーダー職には対立的な中からもお互いの共通点を探り、何らかの妥協案や解決策をたてるという「新しいスキル」が求められているということです。
また、人よりも早めに管理者・リーダー職になる人に多い特徴的なパターンは、対立的な場面が苦手(得意ではない)な結果として、「対決するよりも自分でかぶってしまう」という解決策を取ってしまう人が多いように感じます。さらに、介護の現場で管理者・リーダー職を任される人には「仕事熱心」、「真面目」、「パワフル」などの特徴を持った人が多いことも事実です。しかし、このような特徴はどれもリーダーとしての仕事には必要かつ非常に大切な側面ではありますが、仮にそれだけでリーダーとしての仕事をすると、必要以上に対立的な場面を避けて、何でも自分でかぶってしまうということになりかねません。その結果、抱え込みすぎて多忙となり、燃え尽きてしまう人がとても多いように感じます。
ですから、対立的な場面でも『自分でかぶらずに共通点を探り妥協案・解決策を立てる』というスキルは、管理者・リーダー職が自らを守る大切なスキルとして、管理者・リーダー職が身につけておきたいものです。


(監修:アイエムエフ研究センター)