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「介護現場のストレスケア」その43.(管理職としてのストレス9)

2013年08月09日

 前回は、リーダー職として部下であるスタッフから不満をぶつけられるような対立的なコミュニケーションへの対処における第一段階として、対立的な場面だからこそ聞く姿勢を持って対処することの重要性を強調しました。私たちは誰でも、相手から不満の感情が含まれているようなメッセージを受け取った場合、冷静にとらえる前にまず感情面に反応してしまいやすいという特徴を持っています。そのために、感情面に反応してしまった場面で出される解決策は、あとから冷静に考えてみると合理的でなかったり、結論を急ぐあまり自分が無理をすることになってしまったりなどの問題を含んだものになる可能性が高いのです。ですから、このようなコミュニケーションの場面では、相手の訴えや不満を一旦しっかり受け止めることです。受け止めることができると、それだけで感情的なこじれが小さくなるということに気づくはずです。

 今回は、同様に不満などをぶつけられるような対立的なコミュニケーションの場面で、それをとりあえずしっかりと聞いた後どうしていけばよいのかについて考えていくことにしましょう。


■不満などの感情(特にネガティブな感情)を含んだ言葉を聞く時

 前にも説明したように、私たちは感情的側面を含んだ問題に直面すると、まず感情面に対して対処しようとする傾向があります。たとえば、部下であるスタッフから、「最近、業務量が多すぎて体調が悪いので、少し業務を調整していただけないでしょうか」と落ち着いた口調で相談された時の対応と、「最近、忙しすぎだ!こんなに仕事を押し付けて、ふざけるな!」と怒りを含んだ声で不満を述べられた時の対応とでは、どのような違いが考えられるでしょうか? もしかすると、まれに、まったく変わらないという人もいるかもしれませんが、ほとんど場合、両者には大きな違いが生じています。一般的には、部下であるスタッフから落ち着いて相談された場合が、リーダーとしても落ち着いて聞くことができますので、冷静に今後の対策について当事者であるスタッフと検討しやすいはずです。

 一方で、怒りを含んだ声で不満を述べられた場合はどうでしょうか。「そんなに怒っているなら、とりあえずそのスタッフの業務量を減らそう(穴埋めは自分?)」などと、「その場しのぎ(自虐的)」の対策になる可能性が高いのではないでしょうか。また、「そんなことを言ってもみんな忙しいんだよ!自分ばかり勝手なことを言うんじゃない!」とこちらからも怒りを返してしまう可能性も十分にあります。このようになってしまうと、合理的な解決策を講じるどころか、それを話し合うことさえも難しくなってしまうことでしょう。そこで、このようなネガティブな感情を含んだ言葉をぶつけられた時、どのように対処したらよいのか具体的に考えてみることにします。

 実際の場面に直面すると、確かに、ただ聞いているだけでは、ネガティブな感情をまともに受けてしまうので、こちらもあまりよい気分ではなくなってしまう可能性がおおいにあります。もし、そのようになれば、やはり良い対処につなげることはできません。そこで、相手の言葉の『内容・意味・意図』のグループと『感情』のグループを分けるという作業を行います。この作業の実施にあたり大切なことは、相手の話をしっかり聞きながら、相手の様子もしっかりと観察するということを意識することです。さらに、その際の観察のポイントは、相手の行動の具体的な表出部分「声の調子・視線・表情・呼吸・身体の状態」などに注意を向けることです。この観察するという作業ができると(もしくは観察しようと気を配ると)いつの間にか、相手の感情に直接的に反応することが大幅に減ることに気づくことでしょう。重要なのは「冷静に」とか「客観的に」と頭で考えず、前にあげたような具体的に表出する側面にひとつひとつ注意を向けてみることです。また、この時、相手のそれぞれの側面が「何を意味しているか」(怒っているようだ、不満がありそうなど)ということだけではなく、実際に「どうなっているのか」(いつもより声が大きい、視線がよく動くなど)という普段との相違点を見つけながら観察するようにしてみましょう。

 このように、具体的な表出面に注意を向けることには、ある理由があります。それは、このように相手がネガティブな感情を出している場合には「冷静に」、「客観的に」と頭で考えていても、その二つのことを頭で考えること自体は、具体的な行動を表していないために、実際にその場面に直面した場合には、どうしたらよいのか分からなくなってしまうという意外に大きな欠点があるのです。これに対し相手のひとつひとつの具体的な側面に注意を向けるということは、まさに具体的な行動を指していますので、そのような場面に直面しても頭でも取り入れやすく、明確に実行できるものです。

 次に、この作業ができるようになったら、もう一歩進んで、同じように自分の声の調子・視線・表情・呼吸・身体の状態などに注意を向けてみます。相手からの感情を含んだ言葉に対し自分がどのような状態になっているかを知ることができれば、その時には随分、相手の言葉の内容・意味・意図と感情を分けることができていると考えられます。ここまで来たら、いよいよ本来の原因となっている問題への対策を考える段階となります。


■問題への対策を考える

 感情と問題点(相手の言語内容)を分けることができたら、問題となっている点について取り扱っていきます。今回の事例では、部下であるスタッフから「最近忙しすぎだ!こんなに仕事を押し付けて、ふざけるな!」と言われていました。ここでスタッフが言っていることは「(仕事が)非常に忙しい」ことや、「押し付けられている」と感じていること、そしてこれに対して「ふざけるな」と感じていることであることが冷静に理解できます。こうしてみると、最初は怒りを含んだ言葉であっても、これを発言したスタッフの状態や考え、問題点がきちんと述べられているように見えるのではないでしょうか。そうすればリーダーとしても「そうだよね。君の言うとおりものすごく忙しいよね」とか「君だけに押し付けられている感じがしているんだね」と、リーダーとスタッフでこれらの問題を共有できるようになります。問題の共有ができたらスタッフが望んでいることを確認していきます。この場面では「どうなったらよいのか」「どのくらいなら大丈夫なのか」などの質問が有効でしょう。まさにこの時点から問題への対処が始まっていくのです。この点について、次回以降、引き続き考えていくことにします。


(監修:アイエムエフ研究センター)