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「介護現場のストレスケア」その44.(管理職としてのストレス10)

2013年09月10日

 これまで「リーダーとして遭遇する対立的なコミュニケーション場面」について考えてきました。今回は、問題自体への対処を考えていくことにします。どのようにしたらお互いに納得できるのか、あるいはどのようにしたら一緒になって具体的に問題に取り組むことができるのかということを考えてみましょう。


■「感情的」になる要因

 ここで改めて、このような仕事の場面において、なぜ感情的になるかということについて考えてみたいと思います。私たち自身が仕事の場面で感情的になる時は、どのような場合かをそれぞれ思い出してみましょう。「そんなこと(感情的になること)はない」という方がいれば、その場合は周囲の人がどのような時に感情的になっているかを考えてみてください。
 たとえば、こんなときはどうでしょうか。「理不尽なことをいわれた」、「自分の思いどおりにならなかった」、「頑張ったのに認めてもらえなかった」、「相手の態度が傲慢だった」、「怒りなどのネガティブな感情をぶつけられた・・・」などさまざまな場面が考えられます。また、このような特定の場面だけではなく、「疲れがたまっていた」、または「特別な出来事(ショックな出来事など)があって感情的になりやすくなっていた」、などのように一場面だけではなく、もう少し長い期間の状況をあげる方もいるかも知れません。(後者の場合は、ストレス反応の一種だと考えられますので、今回は詳しく取り上げることはしません。しかしながら、疲労やストレスが蓄積すると、感情だけではなくさまざまな精神面の調節が利きにくくなる傾向があることは覚えておきたいものです。


■「感情的」になる真の理由

 さて、リーダーの方々には、もう一歩進めて考えていただきます。それは、それまでの忙しい状況の中で疲労やストレスが蓄積していたとしても、やはり実際に感情的になる多くの場面には、それなりの引き金があると考えていただくことです。たとえば、あるリーダー(管理職)が、普段からスタッフの希望を全く受け付けないわけでもなく、また、そのスタッフのことを十分に認めているとしても、仕事上でかなり理不尽に思えることを言ったとしましょう。この場合はスタッフが感情的になることは十分に考えられます。それでは、このような場面で、何が起こっているのでしょうか。その一つの原因は前述の疲労やストレスの蓄積が考えられますが、それ以外の状況を冷静にまとめてみると、スタッフ本人が「それまで培ってきた対処や思考、行動レパートリーでは対応しきれなくなった」状況であると考えられます。もちろん、これは本人だけの問題ではありません。「最近忙しすぎだ!こんなに仕事を押し付けて、ふざけるな!」とスタッフが怒った場面でも、このスタッフの能力に問題があったわけでもなく、やり方に問題があったわけでもないでしょう。現実に一人で対処するには「忙しすぎる」「仕事量が多すぎる」という本人にはどうしようもない側面を多分に含む問題があったはずです。その一方で、本人にはどうしようもない側面を含んでいながら、現実的には本人のそれまでの対処方法や思考、行動レパートリーでは対応しきれなくなっていたことも事実です。自分ではもう合理的に対処できない、このことがこのスタッフを感情的な方法での解決に向かわせていると考えられます。


■合理的な解決を導き出すコミュニケーション

 従って、この状況においてリーダーに求められるのは、スタッフが新しい合理的な解決策を得られるように支援することになります。手始めに前回の後半でまとめたように感情と訴えの内容を分け、スタッフの訴えを整理します。そこから見えてきた問題点を整理していくわけですが、この時に必要なことは以下のような項目があります。

1.目標の共有
 問題点がどのようになったらよいのかという目標をスタッフと設定して共有します。
2.目標を達成するための方法
 その目標を達成するためにどのような方法が可能かを一緒に検討します(共有)。
3.リーダーの期待の明示
 リーダーとしてどこまで望んでいるのかを明確に示します。
4.ステップの設定
 第一段階としてまずどこからどの程度できればよいか、そのスタッフが比較的容易に達成できるスモールステップを示します。(進み具合を実感できるような工夫)
5.仕事の内容や予定の明確化  出来るだけ目に見える形で何をいつまでに実施すればよいかを整理し示します。 6.可能性の明確化
以上の項目で整理できない要求などについて、それがリーダーとして可能か不可能かを 明確にします。不可能なものについてはその理由・課題などを示します。
7.表出方法の援助
不満や怒りではなく、できるだけ無理な部分が膨らまないうちに相談してよいこと、その場合の方法などを示します。

リーダーとしては、以上のような手続きでスタッフが感情的な方法ではなく、合理的な方法で問題を解決するための支援をします。この支援ができるようになれば、スタッフのリーダーに対する信頼感は確実に高まることでしょう。また、その信頼感によって職場全体の風土も良い方向に変化することでしょう。



(監修:アイエムエフ研究センター)