オールライフマガジンALL LIFE MAGAZINE

「介護現場のストレスケア」その45.(管理職としてのストレス11)

2013年10月10日

 今回は前回ご提示した感情的に処理してしまいそうな場面を「合理的な方法で解決するための支援策」について、より具体的に考えてみることにしましょう。


■原則となる「聞く」ことと「見る」こと

 これまでにも繰り返し説明をしてきたことですが、対立的なコミュニケーションの場面では、管理者やリーダーが自らの希望や考えを発言する前に相手(スタッフ)の話に耳を傾けること(「聞く」こと)が課題の解決に向けて大変重要な要素であり、このような場面での原理原則であるということを確認します。また、感情面に反応してしまった場面で出される解決策は、合理的でなかったり、結論を急ぐあまり自分が無理をすることになってしまったりなどの問題を含んだものになる可能性が高いことも学んでいただきました。
 これから説明する各対策もこれらの原則の上に成り立っているとご理解ください。


■7項目の支援策に沿って

 それでは前回あげた7項目に沿って具体的な対立的コミュニケーションの場面における支援策を考えていくことにしましょう。

1.目標の共有
 まず、管理者やリーダーと部下(スタッフ)の間で対立的になっているポイント(スタッフの不満・不安な点や援助を必要としていること、またはリーダーからの要求が受け入れられないことなど)が、今後どのようになれば良いのかという明確な目標をスタッフと立てて共有します。このためには、原則である「聞く」姿勢にのっとり、スタッフがどのようなことに不安や不満を抱いているのかを知ることが第一段階となります。その上で共有できる目標を探すわけですが、この段階では現時点におけるお互いの共通した考えや思いなどから、無理なく一致できる目標を立てると良いでしょう。また、この時点では相対的に「大きな目標」「長期的な目標」に近いものになることが多いことを認識しておくことが必要です。

2.目標を達成するための方法
 1で設定した目標を達成するための方法を検討します。また、その方法について、誰がいつ取り組むのかということも明確にします。スタッフだけが何かに取り組むことにする(押し付ける)のではなく、取り組むことのチェックでもよいのでリーダーがかかわるポイントを作っておくことが必要になります。また、1で立てた目標が大きな目標や長期的な目標である場合は、それに対応したやや大雑把な取組方法になる場合もあるでしょう。

3.リーダーの期待の明示
 上記の1・2の段階で目標やそのための方法について「共有」ができたら、管理者、リーダーとしての期待を表明します。目標の少し上でも良いですし、達成時期を少し早めることでも良いでしょう。または、「どのように取り組んでほしいか」ということでもかまいません。スタッフにとって大きなプレッシャーにならない程度に皆さんの期待を伝えます。上記2点がスタッフの「実現」への道標だとすると、管理者やリーダーの皆さんの期待はスタッフの持つ「可能性」を発揮するための目印となります。

 一般的に、スタッフとの取り決めをする場合は、ほとんどの場合において「いつ、だれが、なにを、どのようにするか」などが明確にし、出来るだけ具体的な内容にすることがより効果を上げるポイントとなります。しかしながら、ここで最も注意したいことは、上記の3点においては、具体的であることよりも、たとえ内容が大雑把であっても、リーダーとスタッフとの間で共有できる「合意」を形成することが第一の目的であることを忘れないことです。

4.ステップの設定
 ここからは1や2で立てた目標・方法を、より具体的に、実現可能性の高いものとして考えていきます。前述の目標を達成していくために取り組むことをできるだけ細かい行動レベルで示します「いつ(どのような状況・きっかけで)、だれが、なにを(行動の内容)、どのようにするか(行動の仕方・回数・頻度・強さ)」。また、スタッフに対してステップを示すとともに、そのステップごとの評価方法が伝えられる必要があります(慣れるまでは管理者、リーダーと一緒に評価するとよいでしょう)。

5.仕事の内容や予定の明確化
 上記のステップをはじめ、1で判明した不満や不安など対立点に関係する事柄について出来るだけ目に見える形で(図や表、文字を用いて)示します。そして、対立点に関する事柄とひとつひとつのステップや問題を解決していくことの相関関係を示し、単に対立点を解消するだけではなく、そのスタッフの成長に有益であるということも見通せることが重要です。

6.可能性の明確化
 以上のように整理してきても解消されない不満や不安があるかもしれません。その場合はその不満や不安がすべてではなくてもどの程度解決できそうか、または課題として残る事柄がある場合はなぜ解決が難しいか、その理由や背景を具体的に示してください。同時に、解決に至らないとしてもその問題の解決・低減のために可能なサポートについて明確に示すようにしましょう。

7.表出方法の援助
スタッフが怒りなどの感情的な表出方法になる前に、リーダーに直接相談することを勧めます。その場合、内容はどんなことでも良いこと、また不満がある場合はできるだけ具体的に話すことを奨励します。また、リーダー自らも日常的にスタッフとの会話の機会や積極的な声かけの場面を増やすなど努めて、現場全体のコミュニケーション面での支援をします。

 今回取り上げた手続きの目的は、対立的でかつ感情的になっていたコミュニケーション場面を、スタッフとリーダー間の協力関係に発展させていくことにあります。怒っている人に対し「怒らないで」と言ったとしても、多くの場合かえって怒りをあおってしまうことがあるように、感情的なものを直接静めることはとても難しいことです。まずは、今回整理した対策を活用して、スタッフがなぜそのような感情を持ったのかということを一緒に考え、問題点を共有し、管理者、リーダーとスタッフが共通した認識の元で取組むことのできる課題を明確にすることからはじめましょう。



(監修:アイエムエフ研究センター)