オールライフマガジンALL LIFE MAGAZINE

「介護現場のストレスケア」その47.(管理職としてのストレス13)

2013年12月07日

~ どの成長段階においても共通するストレスに影響を及ぼす問題・課題 ~

 前回は、これまで説明をしてきました新人・入職後数年・リーダー職の各段階におけるストレスについて振り返りました。また、その後半でキャリア上の段階には関係なくどの段階のキャリアの発達やステージにおいても共通して見られるストレスに影響を及ぼすと考えられる問題・課題(個人差)について取り上げました。今回はその続きを考えていくことにしましょう。


■どの段階においても見られる課題①【ストレスの個人差をもたらすもの】

 ストレスにおける個人差というものについて、もう少し詳しく見ることにしましょう。前回コラムでも説明したとおり、どのような問題や課題・出来事・状況であっても、それを受け止める人の捉え方や考え方によって、その結果として生じる「ストレスの状態」には大きな違いがでます。
その違いを生み出しているものは、専門的な言葉で表現をすると「認知的評定」と言われるものです。少し大げさに言えば、この認知的評定こそがストレスにおける個人差を生み出す入口にあたると言えるかもしれません。単なる入口ではなく、対策における重要なポイントとなることも付け加えておきます。
 たとえば、どのように進めれば良いのかわからない仕事を十分な説明もなく突然任される、残業が続く、そりが合わない人と一緒に仕事を続けなくてはいけないなどの出来事は、人によってはそれらの出来事がストレスの原因となることもあります。しかし、まったく同様の出来事を経験するような状況であっても、別な人には全く問題にならないことがあるということは、容易に想像がつくことでしょう。
皆さんが日常の業務を振り返ってみても「なぜ、あの人はあの状況で平気でいられるのだろう」とか、その逆に「なぜ、あの人はその程度のことであれほどの影響を受けてしまうのだろう」などと感じる場面に良く遭遇していることでしょう。このような個人差(認知的評定)に焦点をあてて考えてみると、ストレス(特に仕事に関連するもの)の対策を考えるような場合、その時点の問題や課題・出来事・状況などそれ自体について理解し対策を練ることはとても重要ですが、その対策が画一的なものだけになった場合は、個人差の影響で人によっては十分な対策とならない可能性が大いに生じるはずです。これが、ストレスにおける個人差を生み出す入口であり、対策のポイントであるということです。
 さらに、「認知的評定」の他にも、個人差を生み出す可能性の高い課題として「問題への対処」をあげることができます。仮にある状況についての認知的評定において「これは自分にとって重要な出来事であり、非常に負担でもある」と評価される出来事があったとしましょう。「問題への対処」とは、このような出来事があった場合に、その負担に対して何らかの対処を講じるか、講じるとすればどのような対処をするかということになります。そして、これにも当然のことながら個人差があることでしょう。「やり方がわからない仕事を十分な説明もなく突然任された」場合に、人によっては「いろんな人に相談する」かもしれませんし、またある人は「周りにいる人に(実際に)手伝ってもらうように依頼する」かも知れません。中には、「その仕事自体はあきらめて、飲みに行って憂さ晴らしをする」という人もいるかも知れません。いずれにしても、このような個人差があることを理解しておくことは、今後このことを理解する上でも大変重要なことになります。


■どの段階においても見られる課題②【個人差へのサポートのポイント】

 さて、前述の二つの側面(認知的評定と対処)において個人差を作りだしている最大の原因は、どのようなことなのでしょうか。実は意外に単純なことで、その人がそれまでにどのような困難な状況に遭遇し、どのように取り組み、どのような結果を得てきたかという、それまでの経験による部分が大きいと考えられます。前回までの事例の中でも触れた「否定的にとらえやすい」とか「被害感を感じやすい」などの個人の特徴も、過去の経験によって形成されている部分が大きいということです。
 そのように考えてみると、一人ひとりの経験は当然のことながら異なりますので、多くの部分が経験によって形成される個人の特徴には、それなりの差があるということも自然なこととして納得できるのではないでしょうか。もう一歩踏み込んで言い換えてみると、個人差が経験から形成されている面を持っているということは、今後、私たちがその個人差をサポートするような取り組みをしようとする場合、単にあれこれ言葉での指示をするだけではなく、何らか異なった「経験」をさせることが重要になってくるということも明確になってきます。
 つまり、皆さんの職場の中でよく見られる光景で「そんな風に考えないでもっと気軽に」とか「この場合にはこうやって対処したら良いよ」というだけでは個人差の部分は変化しにくいものです。そうではなく、「もっと気軽に考える」と、または「こう対処する」とその問題が、どうなっていくのか(どのように変化するのか)というところまで一緒に体験することが、上手くサポートをする秘訣なのです。
 管理者やリーダー職の皆さんは、是非とも今までの職場での光景を振り返ってみてください。今までは、このような体系的な手法をリーダー人材の育成の中に取り入れていなかっただけのことです。決して皆さんの個人の能力や意欲の問題ではありません。今すぐにでも体験をしてみてください。皆さんの職場は、OJT(職場教育)が根付いていること、仕事の多くを個々の経験によって支えていることなどの特徴を持っています。このような職場だからこそ、工夫してたくさんの良い体験をしていただくことも、放置して悪い体験をさせてしまうこともできてしまいます。
 もし、忙しいと言う理由から、一緒に体験するような手をかけたサポートが難しい場合には、その手前のところで工夫をしてください。たとえば、新しい認知的評定(その事柄について、新たにどう捉え、考えようとするか)や新しい対処方法と、とそのように捉え、考え、対処するとどうなるか、あるいはどのように変化したかということを書き留めてもらうことも、とても有益な方法のひとつです。


■どの段階においても見られる課題③【ストレスの表れ方】

 ストレスの個人差をもたらすものとその個人差へのサポートについて解説をしてきましたが、ストレスを考える上で、もうひとつ人によって異なった表れ方をする(個人差のある)部分があります。それは、ストレスの原因によってさまざまな捉え方や考え方をした結果、何らかのストレス状態に発展した場合、どのようなところにその影響が表れるか(ストレスの表れ方)ということです。ストレスの影響が出る部分については、このシリーズで以前に少し触れたきりなので、ここで、もう一度確認しておきます。まず、ストレスの影響が出るのは「身体面」、「精神面」、「行動面」の3通りです。身体面で最初に実感されるのは体の芯に残るような疲労感や何となく体の調子が悪い感じがする、などがあります。介護職の皆さんからは、肩こりや腰痛、高血圧や潰瘍、便秘や下痢などさまざまな症状が訴えられています。また、精神面ではイライラや落ち着かない感じ、あるいは憂うつな感じで、表情がつらそう、おどおどした様子、ボーっとしたなどです。そして、行動面では仕事上のミスが増える、トゲトゲしい態度になる、消極的な態度になる、嗜好品の量が増えたりするなどの変化が見られることがあります。これらの影響は自覚されている場合でも、疲労感は出ないがイライラしがちになる人や、身体面・精神面はあまり自覚されなくても、いつもよりたばこの量が増えている人もいるなど、人によってさまざまです。当然のことながら、この表れ方の違いによっても対処の方法が異なる部分もあります。次回は、それらについて考えていくことにしましょう。



(監修:アイエムエフ研究センター)