オールライフマガジンALL LIFE MAGAZINE

「介護現場のストレスケア」その48.(管理職としてのストレス14)

2014年01月18日

~ ストレス反応と対処法 ~

 前回まで、ストレスへの対策の入口として重要となる個人差について整理してきました。特に介護現場で働く職員の皆さんが成長する過程のいずれの段階においても見られる課題として、ストレスの個人差をもたらすものとしての状況や問題などの捉え方・考え方や、その状況・問題への対処などがあり、これらの多くはその人の経験の中から形作られていることについて考えました。また、ストレスの表れ方も、「身体面」「心理面」「行動面」に及び、ストレスによる反応はとても広範囲にわたるということについても説明しました。今回はそれぞれのストレス反応を整理した上で、それらの解消策について考えていきたいと思います。


■ストレス反応に気づくこと

 まず、ストレス反応の例を表(下の表)にしたものをご覧ください。いくつか当てはまるものはないでしょうか。もちろん同じ状態でもストレスによらない場合もありますので、その状態があるからと言って必ずストレスが蓄積しているとは言えません。ただし、介護現場で働く皆さんばかりではなく多くの人達が、さまざまな不調を感じていても、それがストレスによる反応であるとは、なかなか気づきにくいということは多くの調査・研究から分かっています。さらに、そのような何らかの不調な状態が自分自身に起こっているということ自体にも気づきにくいことがかなり多く見られます。もう少し詳しくお話しますと、通常は、何らかのストレス原因があり、対処困難であると感じている場合、ストレス反応としては身体的反応が最初に現れ、その後心理的・行動的反応に拡大していくのが一般的であると考えられています。しかしながら、その反面で、誰にでも表れているとされる身体的反応ですが、本人がその身体的反応に気づいていない場合が、意外に多いものであることも事実です。自分はどうかと振り返ってみてください。
 たとえば、実際の介護現場では人員不足であるとされる現場を良く見かけます。それでも、職場の全員が助け合いながら何とか仕事をこなしています。しかしながら、とても忙しく残業が続いているはずの指導職が、普通であれば当然のことながら疲労感を生じてきてもおかしくないはずですが、その疲労感を本人が感じられていないような場合です。その際のよくあるパターンは、実際に夜眠れなくなったり不安感が強まっていたりなど、実際には強い心理的反応や行動的反応が見られる職員の場合でも「身体は何ともないんですよ・・・。」と話すケースです。ただし、その職員の身体を観察してみると、肩が緊張して上がっていて、顔の表情も眉間にしわが寄ってこわばっているなど典型的な身体的反応が見られていることがほとんどです。それにもかかわらず、恐ろしいことに自分ではそれらのことに気づいておらず、同時にその緊張をほどくことさえもできなくなっているというのが現状です。
 さらに、このような状態の中でよくある光景は、ストレス反応が表出しており本人も自覚している場合でも、上司・同僚を問わず周囲の職員がそのストレス反応に対して「強い・弱い」という評価を下してしまい、ストレス反応に苦しんでいる職員は救済を受けることができずに、自分の中で解決しようと頑張ってしまいます。そのような現場では、一人の大切な介護職員がこの現場、この仕事から離れていく現実を見ることになります。介護現場で働く方は、本当に頑張ることを惜しみません。ですから、ストレス反応に気づくことはとても大切な一歩であると理解していただきたいのです。「表:ストレス反応の例」を参考に、自分自身や周囲の同僚・部下の変化に気づくようにしてください。

【表】ストレス反応の例

身体的反応

心理的反応

行動的反応

疲労感(疲れやすい)

焦り

朝いつもより早く目が覚める

体調が優れない

不安(感)

寝つきが悪い

緊張

悲しみ

仕事に集中できない

肩こり

頭が混乱している

ミスが増える

消化器系(食道・胃・腸)の不調

憂うつ(感)

仕事が上手くいかない

心臓がどきどきする

絶望感

仕事の量の変化(増減とも)

呼吸が苦しい(息苦しい)

虚無感(むなしい感じ)

何事もおっくうに感じてできない

その他、持病の悪化

怒りっぽい・イライラする

嗜好品(酒・タバコ・菓子 他)の増加

 

動揺(気持ちが不安定)

ギャンブルなどの増加


■ストレス反応に対処する

 以上のことからも、ストレス反応に対処していく場合には、第一に自分の状態に気づくこと、その次に、様々なストレス反応があるのでそれに合わせた対処をすること、この2点がとても大切なことです。そこで、この2点について解説をします。
 まず、「自分の状態に気づく」ことを考えてみます。人にはそれぞれ特徴があり、身体に反応が出やすい人、心理的に出やすい人、行動に出やすい人となりますが、前述しましたように、一般的には最初に身体の反応に出ることが考えられますので、第一歩としては、やはり身体・心理・行動の中でも特に身体の「その時」の状態に気づくことから始めることをお勧めします。たとえば、過度に緊張している筋肉はないか、呼吸の状態はどうかなどを探ってみます。ある部分の筋肉に過度の緊張が見られるのならまずその部位の緊張を取るようにします。その場合「緊張を取る」と考えてもなかなか力は抜けません。それどころか、「力を抜くぞ」と考えるとかえって力が入ってしまうということもよくあります。そのような場合は、まず緊張している部位全体に逆に力を込め、その後5秒ほどたったら入れた力を抜いてみるとよいでしょう。例えば、肩が過度に緊張しているような場合には、肩をそれ以上あがらないところまで上げ5秒ほどたったら一気に力を抜いて脱力します(椅子に座っている場合、力を抜いたときに座面に手が当たらないよう気をつけて下さい)。これを数回やると肩の力は多少抜けるようになります。 また、呼吸が乱れているような場合には呼吸を整えるわけですが、この時のコツは「息を吐くこと」をしっかりとやるということです。一度、身体中の息をすべて吐き出すようにして、しっかり吐ききった後、体をリラックスさせると必要な分の息は自然に身体の中に入ってきます。よく、落ち着くために「深呼吸してください」と言い、深く息を吸うということから始める場合がありますが、それだとかえって息苦しくなることがあります。
 以上のような、力を抜くこと、呼吸を整えることなどは単純なことですが、ストレス反応への対処の第一歩としては有効です。上記のように身体的反応の中でも身体の緊張は多くの場合に共通して見られていること、そして、これらのことは最初の段階では難しくても繰り返すうちに「自分で」出来るようになる方法であるからです。できれば初期の段階で、介護現場で活用するための工夫がなされている専門的な研修やセミナーを受けることも一つの方法です。
 ストレス反応への対処にはもう一点、様々なストレス反応に合った対処をすることが必要であると解説しましたが、次回はそのことについて、さらに考えていきたいと思います。


(監修:アイエムエフ研究センター)