オールライフマガジンALL LIFE MAGAZINE

「介護現場のストレスケア」その49.(管理職としてのストレス15)

2014年02月08日

~ 具体的なストレス対策 ~

 前回までの内容を振り返ると、ストレスへの対策の第一歩としてストレス反応に自分で気づくことについて、ストレス反応の例をあげて説明しました。そして、さまざまな場面に共通して効果的な自分自身でできる対処について、簡単な筋弛緩法や呼吸法を紹介させていただきました。今回はさらに掘り下げて、様々なストレスに応じた対処について考えてみることにしましょう。


■それぞれのストレスにあった対処

 まず、ここではストレスにあった対処とは、どのようなことなのか考えてみることにしましょう。たとえば、皆さんは「ストレス解消」というとどのようなことを思い起こすでしょうか。多くの皆さんがストレス解消法としてあげるものは、「同僚や友人と飲みに行く」、「カラオケに行く」、「趣味に没頭する」、「家族・パートナー(夫婦・恋人)と過ごす」、「マッサージをしてもらう」、「お風呂にゆっくり入る」、「好きな音楽を聴く」、「おいしいものを食べる」、「旅行に行く」、「スポーツ・運動を楽しむ」、「とにかく眠る」等々、その時の光景が目に浮かぶようです。当然、この他にもその人ならではの方法もあることでしょう。これらのことは、確かにストレス解消にはつながっていることが多いようです。しかし、その反面で、そのストレス解消方法をいつもと同じように実施していたのに何となく疲れが余計に出てしまったなどの経験もあるのではないでしょうか。例えば、「温泉に行ってきたのだけど、なんだかそのあと疲れが出てしまった」とか「気晴らしに友人と飲みに行ったもののかえって疲れてしまった」などです。
 このように、実は一見ストレス発散法に見えるような活動であっても、それが常にストレスの解消や軽減につながるとは限りません。その理由を考える場合には、前回の解説の中で使用しましたストレス反応のリストを思い出していただけると分りやすいと思います。(再掲/下表) 下表で整理したようにストレス反応には身体・心理・行動の三つの側面があり、さらに、その中には非常に多くの状態が含まれています。先ほどの介護現場の皆さんが実施しているストレス解消のための活動も、よく見てみると活発に「発散」を図るもの、体調を整える「(身体的)調整」を図るもの、そしてあくまでも「休養」を図るもの、まで様々なタイプがあります。これらのストレス解消のための活動を、その時の状態によって使い分けてみることや組み合わせをするなどの調整ができると良いわけですが、一方で「このストレス反応ならこの方法で」といった誰にでも共通となるような「ストレス反応と対処法の組み合わせ」はありません。たとえば、ある人にとっては最高のストレス解消法と捉えているカラオケも、他の人にとってはそれがかえってストレスの原因になることが往々にしてあります。要するに対処にもやはり個人差があるということになります。
 また、身体的反応に目立った変化が表れている人、特に疲労感が強まっているような人は、どのような活動をするかは別としても「休養」型や「調整」型の対処が有効なことが多いということは事実です。イライラしているときのように気分的な問題である場合には、気分の切り替えができるような「発散」型の対処が有効なこともあるでしょう。また、嗜好品の量が増えたり、ギャンブルの機会が増えたりしている人はそれ自体が「発散」的な対処になっているのかも知れませんが、将来的なことを考慮して「別の方法」を探す方が良いでしょう。
 いずれにせよ、いくつかの解消法を持っておくということと、ある方法を試みてもうまくいかないこともありますが、その時は、別の方法を試みてみるという柔軟な態度がストレスの解消・軽減にはより重要なことです。また、自分の状態に気づくことも説明しましたが、その時のストレス反応にあった、適切な解消法を行うためにも、まずは何よりも「自分の状態に気づく」ことが大切な一歩なのです。

(表/前回に続き再掲)

身体的反応

心理的反応

行動的反応

疲労感(疲れやすい)

焦り

朝いつもより早く目が覚める

体調が優れない

不安(感)

寝つきが悪い

緊張

悲しみ

仕事に集中できない

肩こり

頭が混乱している

ミスが増える

消化器系(食道・胃・腸)の不調

憂うつ(感)

仕事が上手くいかない

心臓がどきどきする

絶望感

仕事の量の変化(増減とも)

呼吸が苦しい(息苦しい)

虚無感(むなしい感じ)

何事もおっくうに感じてできない

その他、持病の悪化

怒りっぽい・イライラする

嗜好品(酒・タバコ・菓子 他)の増加

 

動揺(気持ちが不安定)

ギャンブルなどの増加


■原因への働きかけ

 ここまで、ストレス反応への様々な対処について考えてきましたが、対処法は果たしてこれだけなのでしょうか。何かストレスに感じることがあった場合に、発散して気分転換したり身体的な調整をしたり休養をしていけば解決するのでしょうか。残念ながらそうとは言えません。たとえば、過剰な忙しさで体調不良になり、数日しっかりと休養と調整をして体調を回復して復帰したとしても、数日間休養したせいでその分の仕事もたまってしまいかえって忙しさが増し加わってしまっていたとしたら、それは本当の意味でのストレスへの対処をしたとはいえないのではないでしょうか。当然のことながら、そのように休養することはとても意味のあることです。しかしながら、原因となっていることがはっきりとしているならば、原因への積極的な働きかけも必要になるでしょう。介護現場のストレスの原因として、人の生活の支援という責任ある仕事であり夜勤などの不安な時間帯を抱えること(質)、量的な面には人が足りない状態での仕事量や残業などが含まれ、さらに良質なヒューマンケアサービスの十分条件である職場内の対人関係が大きな原因として存在しています。もし、質的な問題であるなら問題を理解するための学習や上司・先輩職員への質問・助力の依頼などが有効となる可能性が高いでしょう。また、量的な問題である時には、他の人の協力を得る、他の部分の業務調整をするなどの対策を立てる必要があります。そのどちらであっても原因に働きかけることはストレスへの対処から考えても大切なことになります。つまり自分自身でできるストレスケアと根本的な原因を解決していこうとする行動や勇気の両方が備わることが理想と言えます。


(監修:アイエムエフ研究センター)