オールライフマガジンALL LIFE MAGAZINE

「介護現場のストレスケア」その50.(個別事例によるストレスの検討)

2014年03月14日

~ 個別事例によるストレスの検討 ~

 今回は「ストレスの個人差」について、一見似ているように見える具体的事例を使 考えてみましょう。


★共通テーマ「利用者とのトラブルを繰り返すスタッフ」Aさん・Bさん

事例①
 ある特別養護老人ホームのスタッフAさんは30歳の男性、現在、デイサービス部門に所属しています。大学卒業後就職し勤続7年目になります。職場においては管理職やリーダーではありませんが、重要なメンバーの一人として考えられていました。もともと、とても穏やかな性格で、かつ仕事熱心でもあることから、周囲からは「Aさんは真面目すぎる」と思われています。確かに、少し真面目すぎるせいか「ほどほどに」何かをする等の加減が難しく、人と会話をするときも緊張しやすい面がありました。ただ、そのようなことで周囲とうまくいっていないということはなく、むしろ同僚や利用者などの周囲の人たちからは、そういうところを含めて可愛がられている雰囲気を持っていました。
 ところがある日、Aさんは突然ある利用者と口論をしてしまいました。その場面をたまたま見かけた施設長は、その場を収めて冷静にAさんに話を聞くと、Aさんは「この利用者さんが危ないことをしようとしたから注意しただけです」と答えます。そこで、利用者にも確認したのですが、特に危ないことをしようとしていた様子は見られません。再度、Aさんに「危ないことってどんなことだったのですか?」「それはいつのことですか?」などと問いただしましたが「危ないことは危ないこと」「(時間は)さっき」としか答えず要領を得ません。幸いにも、少し時間が経過していたので、何とか落ち着いてきたところで、とりあえず相手の利用者に対して謝ることもできたので大事にはなりませんでした。しかしながら、その後も1カ月の間に3人の別な利用者と口論をしてしまいました。その都度話を聞いてもやはり最初の時と同じように要領を得ない答えしか返ってきません。また、この頃になると同僚と話をするのも避けるようになってしまい、今まではしっかりとしていた服装や髪形は少しだらしなくなり清潔感もなくなりました。さらに、休憩時間なども一人でポツンとしている姿や、独り言を言っている姿が見られるようになりました。

事例②
 次の事例は、ある特別養護老人ホームに勤務するBさん46歳の女性です。現在は勤続12年になり2年前からユニットリーダーをしています。仕事に対して特に真面目で責任感がとても強い方であり、現在の仕事も要求された水準以上に十分にやっています。ただ、ユニットリーダーになってしばらくしたころから、回数は多くないものの感情的になりやすくなる様子が少しずつみられるようになりました。その時になると、たとえ相手が利用者であっても「予定と違うことをしてしまう」、「一見わがままな言動がある」など普段なら適切に対処できる事柄でも怒鳴りつけてしまいます。そのたびごとに周囲のスタッフたちがフォローしている状態ですが、ユニットで過ごしている利用者たちもピリピリした雰囲気になってしまいました。普段のBさんはユニットリーダーとしてスタッフたちの面倒見もよく、スタッフがやり残した仕事も黙々とこなしているようなところもあります。スタッフたちもそれを知っており、いつもはBさんを信頼し感謝もしていることから、感情的になりやすい様子が表れると「まただけど、仕方ない」とフォローしてきました。しかし、もう1年以上も変わらずにこの状態を繰り返しているため、そろそろなんとかならないかと考え始めました。

 AさんとBさんの二つの事例を紹介しました。この二つ事例は、事例共通テーマにもあげたように「利用者と繰り返しトラブルを起こしている」という点で共通していますが、背景や経過などはそれぞれ特徴があるようです。このような事例を理解するためには、まずはそれぞれの状況や背景を適切にまとめる必要があります。今回の二つの事例の違いがわかりやすいように並べて簡単にまとめてみることにしましょう。


事例

名前

Aさん

Bさん

年齢、性別

30歳、男性

46歳、女性

職歴

7年目、スタッフ

12年目、2年前からユニットリーダー

問題とされた事象

サービス利用者とのトラブルを繰り返す

発生時期・様子

比較的急に発生

2年前のリーダー就任後少し経って・徐々に発生

【問題発生前】
性格・行動

穏やか、真面目(すぎる)、仕事熱心、「ほどほど」が難しい、緊張しやすい

真面目、責任感強い、十分以上の仕事、面倒見良い、他のスタッフ仕事もこなす

周囲との関係

良好

良好

推測される背景

不明瞭

ユニットリーダー就任?

問題となる場面のきっかけ

不明・要領を得ない

予定と異なることが生じる、わがままな振る舞いがある、などの出来事


 以上のように簡単にまとめてみました。このまとめ方はひとつの例ですので、皆さんが書きやすいように工夫をしてください。簡潔かつ必要な情報を決まった形で整理できるようになるとストレスマネジメントが必要な場面できっと役に立つはずです。
 さて、このまとめを見ると問題とされた事象は同じですが二人の背景や問題の様子は大きく異なっていることがよりはっきりとわかります。事例②のBさんについては、問題が発生してきた経過も比較的緩やかで、背景やその場面でのきっかけなどがどちらかといえばはっきりしているか、少なくとも推測可能です。しかし、事例①のAさんに関しては発生の経過も急ですし、その他の事柄についても詳細な内容はよくわかりません。普段、このような場面に遭遇すると別の問題ととらえることは難しいかもしれません。しかし、このように整理して見てみると、これらの問題は現象として見えている問題が同じであっても、実は全く別な問題として取り扱わなくてはならないということが理解できるかと思います。
 次回はこの二つの事例についてさらに考察を深めながら、同じように見える問題であっても、その背景・経過・きっかけによって対応を変えていくことが必要であるということについて考えていきたいと思います。


(監修:アイエムエフ研究センター)