オールライフマガジンALL LIFE MAGAZINE

「介護現場のストレスケア」その51.(個別事例によるストレスの検討2)

2014年04月19日

~ 個別事例によるストレスの検討2 ~

 前回、「ストレスの個人差」について理解を深めるために、一見すると同じ問題が生じているように思われる二つの事例を挙げています。そして、二つの事例を整理すると異なった問題である可能性があることに気づきはじめるというところまで説明しました。今回は、これらの事例から、たとえ同じように見える問題であっても、その背景・経過・きっかけによって対応を変えていくことの必要性を理解するために、一緒に考えることにしましょう。

それでは、最初に前回のケースをまとめた表とともに見返してみましょう。

事例

名前

Aさん

Bさん

年齢、性別

30歳、男性

46歳、女性

職歴

7年目、スタッフ

12年目、2年前からユニットリーダー

問題とされた事象

サービス利用者とのトラブルを繰り返す

発生時期・様子

4か月前・比較的急に発生

2年前のリーダー就任後少し経って・徐々に発生

【問題発生前】
性格・行動

穏やか、真面目(すぎる)、仕事熱心、「ほどほど」が難しい、緊張しやすい

真面目、責任感強い、十分以上の仕事、面倒見良い、他のスタッフ仕事もこなす

周囲との関係

良好

良好

推測される背景

不明瞭

リーダー就任?

問題となる場面のきっかけ

不明・要領を得ない

予定と異なることが生じる、わがままな振る舞いがある、などの出来事


 表面上の問題はいずれも利用者とのトラブルを繰り返すということでしたが、上記表のようにまとめるとその背景や経過、きっかけは全く異なっていることがわかります。もちろん、通常、何か問題が生じるときは、ひとりひとり別々に起きるのが普通ですから、上記のように事例を「並べて」整理することが大切なわけではありません。そうではなく、個々の問題を客観的にとらえ整理しておくことがとても重要なことなのです。それは、事後対応を考えていく上で、状況分析としてとても重要です。そして、このような客観的な視点でまとめておくことで、個人としても組織としても恒常的な問題点が明らかとなり、予防の面からも大変有益な情報になる可能性もあります。


職場全体の問題として考える

 これまで、取り上げている二つの事例を含め様々な事例を挙げながらストレスについて、そしてストレスマネジメントについて考えてきました。そこでは、主にそれぞれの「状況」や「問題」もしくはそのような状況や問題に直面している「個人」に対して、どのように対応するかという視点を中心に対策について説明してきました。しかしながら、実は「個人」への対応だけでは一定の限界があります。単に個人が個人に対して行うサポートだけはなく、むしろ組織・職場全体で取り組んでいく必要があるということに気づいていただけていると思います。今回の二つのケースについても、もちろんそれぞれの取り組に違いはありますが、職場全体の取り組みが大変重要になります。
 たとえば、事例②のBさんに対してですが、問題の原因の一つとしてリーダーの就任、あるいはリーダーとして職務を継続すること自体があるのかもしれません。そうすると、その部分の問題解決にあたっては、本人が自らのスキルアップのために外部研修に行くとか、自習するなども必要でしょう。ところがそれだけでは十分ではありません。前回のケースをよく読むと周囲のスタッフが協力しフォローしている様子がうかがわれますが、Bさんの上司によるサポートについては不明です。もし、Bさんがリーダー職をやっていく上での不安な気持ちを持ち続けているとしたら、あるいは十分なリーダー職としてのスキルを身につけることができていないとしたら、上司によるサポートや組織的にBさんを支える体制作りは必須のものとなるといえるでしょう。
 また、事例①のAさんにつても同様です。Aさんの事例をみると周囲の状況からの影響が不明確な中で問題が生じているように見えますし、経過がかなり急な様子が見られます。また、問題となっている場面以外でも、前回の事例内容をみると清潔感がなくなり、独り言をいっている姿がみられるなどの変化も観察されています。このような場合、何らかの疾患である可能性もあり、まずは受診を勧めることが必要となります。そうすると、まずは本人の治療が優先され、「本人」の問題であると考えられやすいのですが、たとえば休職をする、その後復職をするといった場合などには、特にそれぞれの段階の対処をより適切な形で実施するためにも、休職・復職のプログラムを考え、実行していくなど組織としての対応が求められます。また、周囲のスタッフに対しても理解を促しておくことが、よりスムーズな対応に結びつくと理解してください。


ストレスへの組織的対応について考える

 以上のように、事例それぞれの背景・原因・きっかけなどによって、内容を変えながらも、組織的に対応をすることは職場としてストレスへの対策を考える上で大切なポイントとなると考えられます。しかし、各団体・企業・事業所等において的確な組織的対応を実施するということは難しいとお感じになる方も多いかもしれません。もしくは、実際に取り組もうと思っているものの何をしたらよいかよくわからないという方や、これまでにいくつか取り組んでみたが、効果的な取り組みになっているかどうかわからないという方も多いことでしょう。そこで、次回以降、ストレスマネジメントについてのまとめとして、この組織的対応について考えることにします。


(監修:アイエムエフ研究センター)