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「介護現場のストレスケア」その52.(ストレス対処法「個人」と「組織」のまとめ)

2014年05月15日

「ストレスマネジメント」は個人的な課題か?

 これまでのコラムで「ストレスマネジメント」について説明をさせていただいた中で、様々な個別ケースや不調を来した職員への対応を中心にお伝えしてきました。そこには、さまざまな方法や技法と同時に経営者および管理監督者として知っておいてほしい事実やストレスマネジメントの運営上の留意点も数多く紹介をしてまいりました。ここで、あらためてストレスマネジメントは誰にとっての課題か、あるいは誰が取り組むべき課題かということを一緒に考えてみましょう。

 よく見かける例ですが、優秀で十分な能力があるにもかかわらず、明らかに業務量超過で月に100時間を超える残業が数カ月続き、ストレスの蓄積によって睡眠のバランスが崩れ、心の健康が一時的に低下している職員がいたとしましょう。

 仮にストレスマネジメントが個人の課題であれば、この職員は自分自身の問題として取り組まなくてはなりません。そうなると自分でリラクセーション法を勉強するかもしれません。場合によっては心療内科や精神科の受診をして睡眠薬を投与してもらう必要もあるかもしれません。おそらく、リラクセーション法がうまく取り入れられた、あるいは服薬が効を奏するなら、一時的な改善は認められることでしょう。その意味では、ストレスマネジメントは個人で取り組むべき側面があります。しかしながら、根本的な改善を考えると本人が個人的に取り組んでいるだけでは、困難なことが多いはずです。この例では、業務量が多く睡眠時間を削らないといけないほど働いているわけですから、この状態が続く限り、蓄積した疲労がきれいにとれることは難しいはずです。このような場合は、まず残業時間を減らすことです。そのためには業務量の調整が必要ですが、業務量を調整するのは個人の裁量の域を超えていることが多いわけですから、少なくともその上司が対応し、部署全体の状況を把握しながら個人への業務量の配分や業務そのものの負荷の見直しをするなど組織的な取り組みが必須となります。

 これは、部署内で人間関係の問題が生じているような場合でも同じです。問題となっている各個人への対応をすると同時に、そのような問題が生じた背景について整理する組織的な取り組みが必要となります。職場の人間関係では多くの場合、組織の風土や仕組み、あるいは管理職の関わり方などのマネジメントの問題が必ずどこかに影響しているからです。

このようなことから「ストレスマネジメント」においては、個人への対応について考えるだけではなく、組織的な対応についても考える必要があります。


組織的な課題として「ストレスマネジメント」を考える

 それでは、ストレスマネジメントを組織的な課題として考えていく場合、何が大切なのでしょうか?それにはいくつかのポイントがあります。

1. その組織のトップあるいは責任者の理解
 トップに立つ人が、このことをどうとらえているかと言うことの影響は避けられません。トップに立つ人が、もし「人材はいくらでもいる、ストレスが原因でこの仕事を辞めるような弱い人がいたらすぐに辞めてもらって次の人を入れた方が良い」と考えているのであれば、その組織では有効なストレスマネジメントは成立しないと言っても過言ではありません。今後、人材(財)不足にあえぐことにもなるでしょう。ストレスマネジメントを組織的な問題として考える場合には、「職員にストレス反応が生じにくくするために、一人一人の職員を取り巻く組織・職場・人間関係をどのようにしていくか」という視点、つまり職員という個人を変えようとするのではなく、個人を取り巻く環境を変えようという視点が重要になります。そのためにはその環境(組織体のあり方・上司のマネジメント・業務バランス・サポート体制を含む人間関係など)について決定権を持つトップや責任者の理解がとても重要となります。

2. 管理者層・リーダー層の共通理解
 トップに立つ人の理解があれば、組織としてストレスマネジメントに取り組む最も重要な素地ができあがったと言えます。しかし、実際に何らかの方針により実施していくのは管理者層あるいはリーダー層ですので、この層の人たちの共通理解もやはり重要なポイントとなります。この場合の管理者層・リーダー職とは、立場的に部下を持つ全ての職員を指しています。これらの層の人たちには、ストレスマネジメントにどう取り組めばよいのか、その方法と注意点などが明らかにされ、実行できる状態になっている必要があります。

3. 組織内・外の専門家の利用
 ここでいう「利用」とは、必ずしも不調を感じている個人が受ける医師の診察やカウンセリングを指してはいません。もちろんそういう職員がいる場合には、医師の受診も必要でしょうし、専門的なカウンセリングを行う環境があれば、その本人が利用することも大切なことです。しかし、組織としてストレスマネジメントを実施した場合、そのトップや管理者層・リーダー層にとても大きな負荷がかかりますので、それらの層の職員をフォロー(専門的なコンサルテーション)するために組織外の専門家の利用が必要であるということです。ただし、これらの専門家に対応の全てを任せてしまうのはお勧めできません。「困ったことがあったら、全部専門家に任せてしまえ」(対応の丸投げ)ということでは、組織内の環境の改善には結びつかず、不調を感じた個人が自ら対処し変わっていくという枠を超えることはできないからです。多くの対策はこのような状態にあるかもしれません。重要なのは専門家が組織をフォローしながら、その組織自体のストレスマネジメントスキルが向上するという点だということなのです。この点を是非とも理解してほしいものです。

 それ以外に、ストレスマネジメントを組織的な課題として取り組む場合のポイントで、当然のことながら各職員がストレスを理解し対処することも重要なポイントです。以上、組織的な問題としてストレスマネジメントを行う場合の大切なポイントを整理しました。


(監修:アイエムエフ研究センター)