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「介護現場のストレスケア」その53.(ストレス対処法「個人」と「組織」のまとめ2)

2014年06月15日

 前回、ストレスマネジメントを考える上で大切なポイントとして、ストレスマネジメントやメンタルヘルスという組織の心の健康について、その組織のトップあるいは責任者がどう捉えているか、そして管理者層・マネジメント層の共通理解ができているか、さらに組織内・外の専門家の利用がなされているか、という3点を取り上げて説明をしました。今回は、組織のトップや責任者が組織的な課題に気づいていくためのポイントをさらに整理して、よくある疑問や感想にお答えする形でまとめます。


Q1.「そもそも、職場内は円滑であり問題はないから、対策はいらないと思う」

→ これは、比較的小規模な事業所でこれまでに「表立った」問題が生じていないと感じている、あるいは強力なリーダーの基に人材が集められた事業所などでよく聞かれる意見です。このような意見に対しては2つのポイントがあります。第一点は、ストレスマネジメントやメンタルヘルスの対策を進めることは、本来問題があるかないかということではなく、全体のメンタルヘルス(=心の健康)を高めて、仕事や人間関係をより円滑に、よりよい状態にしていくことが目的であると言うことです。もう一点はそのような意見を言う方が自分の職場を冷静にかつ客観的に見ることができているかということです。実際の職員の状態と管理職が感じている状態には大きな隔たりがあることが本当に多いものです。十分な注意が必要です。


Q2.問題があるのかもしれないが、どういうところから取り組んだらよいかわからない

→ このような現場もとても多いと思われます。そもそも問題の所在がわからないわけですから、取り組みが見えてこないということは当然です。このような場合は、まず現状の確認から始めてみてください。現状の確認において最も簡単で参考になるのは勤怠管理面のデータです。勤怠管理データには長時間労働や休日出勤の有無、遅刻や欠勤(特に無断や事後連絡のもの)、退職者数など、メンタルヘルス面の問題の影響が現れやすい側面を見ることができるデータが多く含まれています。その次にできるのは職員の観察です。職員間の人間関係のトラブルや周囲から孤立した職員がいないか、仕事の遅れ・ミスや事故はないかなどを見ていくことでさらに詳しい様子が見えてきます。しかし、実際に最適な対策を導き出すにはやはり職員に対する調査を行う必要があるかもしれません。調査を行うことで勤怠管理データには表れてこない職員の様子が見えてきますし、問題への対策を考える上でも優先順位をつけることができます。調査はまさに職場の状態を冷静かつ客観的に見ることができる手段と言えます。


Q3.取り組みを行っているが効果見えない・わからない

→ これは実際に何らかのストレスマネジメントやメンタルヘルスのための対策を取り入れた事業所で聞かれるものです。ここで、実際に取り入れた取り組みとは何でしょうか?多くは職員各自が受けるカウンセリングなどの相談窓口の導入ではないでしょうか?実はそのこと自体に効果が見えにくい原因があります。つまり、カウンセリングは基本的に「本人が問題を感じてから」「自発的に」受ける場合がほとんどですから、何らかの問題が起こった後の「事後対応」であり、問題をあらかじめ低減させる予防対策にはなりにくいという特徴があるのです。同時にカウンセリングは守秘性が高いために周りからどのようなことがなされ、改善が見られているかどうかわからないという欠点があります。従って、本当に効果があるのかどうかわからず投資に見合ったものかどうかもわかりにくいと言うことにもつながっているはずです。また、逆にストレスマネジメント対策を導入すると、不調者が増加すると言う事業所も多く存在します。これは、それまでの蓄積していた問題が顕在化するために一時的に増加するのだと考えられます。ただ、これらの状態が専門家や専門機関から何の説明もなく続くとせっかく始めた対策を止めてしまうと言うことにもなりかねません。経営トップとしてまたは事業所として必要なのは現在実施している対策が職場の状態やニーズに適合しているのかということを冷静に確認することです。そのためには2で説明をしたデータの確認、職員の観察、職員への調査を再度行ってみることが必要です。このパターンは大きな法人または地域全体の対策として行政や社会福祉協議会が中心となって講じる対策によく見られます。そのほとんどが専門家や専門機関に丸投げの状態で、対策を講じている事実に満足をしてしまうのが実態のようです。このパターンに陥らないためにも、管理者自らの定期的な調査や確認が必要不可欠なのです。


 以上、組織的なストレスマネジメントやメンタルヘルスの対策に対する代表的な疑問を通して大切なポイントについてまとめてみました。


(監修:アイエムエフ研究センター)