オールライフマガジンALL LIFE MAGAZINE

「介護現場のストレスケア」その61.(職場環境改善へのアプローチと改善活動)

2015年01月31日

 今回は、メンタルヘルス対策に取組む上で法人・事業所としての「職場環境の改善へのアプローチと職場環境の改善活動」について、厚生労働省の「職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~」に基づいて進め方のポイントを整理します。

■改善へのアプローチ
 職場環境の改善へのアプローチのポイントは、ハード面とソフト面の双方を改善することで職員のストレス軽減を図ることです。一般的に職場でよく言われているとおり、新しい課題に挑戦し、それを乗り越えるという経験は人を成長させ、職場の活性化にもつながります。しかしその一方で、慣れない仕事の負担からくるストレスは疲労感の増大や、達成感の減少、そして労働者の健康問題や、事業所全体の生産性の低下や、ミスや重大な介護事故にもつながりかねません。このような結果をもたらすストレス要因が職場環境等の改善における改善対象となります。
 たとえば、職場の照明や温度などの物理的な環境や作業レイアウトや設備・福祉用具の充実等も職員の心理的なストレスの原因になることがあります。また、会議の持ち方、情報共有の方法、職場組織の作り方なども職員のストレスに影響を与えます。このように職場環境等の改善を通じたストレス対策では、「職場環境」の意味をより広く捉えることがとても大切なことです。
 仕事のストレスに関する代表的な理論に「仕事の要求度-コントロールモデル」があります。そこでは、仕事の要求度(仕事量や責任など)と仕事のコントロール(自由度や裁量権)のバランス、特に仕事の要求度に見合うように仕事を与えることが重要であるとされています。また「努力―報酬不均衡モデル」という理論では、仕事上の努力に比べて、ねぎらいがない、あるいは将来が不安定だなど、特に心理的な報酬が少ない場合にストレスが増大することになるとしています。ですから、長時間労働や過大な作業量を避けることに加えて、作業の量や責任に見合うような裁量権や心理的な報酬をしっかりと与えるようにすることも職場環境等の改善の方法の一つになります。このほか、アメリカ国立労働安全衛生研究所(NIOSH)は、以下のとおり職場環境等の改善を通じたストレス対策のポイントを挙げています。

  1.  ①過大あるいは過小な仕事量を避け、仕事量に合わせた作業ペースの調整ができること
  2.  ②労働者の社会生活に合わせて勤務形態の配慮がなされていること
  3.  ③仕事の役割や責任が明確であること
  4.  ④仕事の将来や昇進・昇級の機会が明確であること
  5.  ⑤職場でよい人間関係が保たれていること
  6.  ⑥仕事の意義が明確にされ、やる気を刺激し、労働者の技術を活用するようにデザインされること
  7.  ⑦職場での意志決定への参加の機会があること

■職場環境の改善活動
 職場環境の改善は、外部専門機関との連携や専門家の指導、職場上司や労働者による自主的活動など、さまざまな進め方があります。また、職場環境等の改善においては、事業所内の産業保健スタッフだけに任せるのではなく、人事・労務担当者、管理監督者、職員にも参加してもらうことで効果的に対策が実施できるようになります。効果的な職場環境等の改善の手順について整理すると、以下のようになります。

ステップ1.職場環境等の評価(これがいわゆる現状把握です)
 職場環境等の改善に当たっては、まず職場ごとのストレス要因の現状を知る必要があります。管理監督者による日常的な観察や、産業保健スタッフによる職場巡視、職員からのヒアリング結果なども手がかりになります。また、専門のメンタルヘルス調査により職場単位でのストレスを数値化することもできます。
ステップ2.職場環境等のための組織づくり
 職場環境等の改善を実施するためには、外部専門機関や産業保健スタッフだけでは何も進みません。改善を実施しようとする経営層と職場の責任者(上司)の理解と協力が必要です。このためには、まず職場環境等の評価結果を法人・事業所内で報告会を実施して、職場環境等の改善の必要性と協力を依頼します。その報告会では、できるかぎり主体的に関わってもらえるような動機づけが必要となります。時には、経営層や上司向けに職場環境等の評価と改善に関する教育研修などを実施することが必要になることもあります。こうした関係者で職場環境等の改善の企画・推進を行うワーキンググループを組織し、産業保健スタッフと上司だけでなく人事・労務担当者が参加しながら効果的な運営を図ります。さらに職場環境等の効果的な推進のために、その職場の職員からも代表者を選んで参加してもらうとよいでしょう。
ステップ3.改善計画の立案
 職場のストレス調査や職場巡視の結果をもとにして、職場の管理監督者や職員の意見を聴き、ストレス要因となっている可能性のある問題をできるだけ具体的にリストアップします。また、これを職場の物理的環境、作業内容、職場組織などに分類することも必要です。リストアップされた問題に対して、関係者が議論し、職員参加型のグループ討議などを行い、改善計画をたてます。また改善計画の立案を支援するために専門機関の支援や様々な調査ツールを使用することも必要に応じて考えましょう。
ステップ4.対策の実施
 計画に従い対策を実施します。計画どおりに実行されているか、実施上の問題は起きていないかなど進捗状況を定期的に確認します。対策を実施することが職員に負担になったり、あるいは対策が途中で立ち消えになっていたりすることもあるので、対策が円滑に推進されているかを継続的に観察する必要があります。対策の実施状況や効果について、発表会などをあらかじめ計画しておくと、進捗管理が容易になります。
ステップ5.改善の効果評価
 改善が完了したら、その効果を評価します。効果評価には、2種類あります。まずプロセスの評価では、対策が計画どおり実施されたかどうか、計画どおり実施されていなければ何が障害になったかについて、数値で、あるいは事例などの質的な情報から評価します。結果・成果の評価では、目的となる指標が改善したかどうかに注目します。例えば対策の前後でメンタルヘルス調査の結果や健康診断などの健康情報を比較するなどの方法があります。職場環境改善が医療費や疾病休業の軽減に効果を示すには数年以上かかることがあるため、効果評価は急ぎすぎず、対策の継続が重要です。

 このようなステップを踏みながら着実な取組みを進めるためにも、活動の年次目標や職場環境等改善の複数年計画と明確な目標を立てることをお勧めします。

 (監修:アイエムエフ研究センター)