オールライフマガジンALL LIFE MAGAZINE

「お年寄りのこころ学」その6

2015年09月15日

■高齢なお年寄りへの「ものごとの頼み方」 ~伝え方の工夫で行動がスムースに

 より高齢なお年寄り、とりわけ80歳代以降の親御さんにお願いしたことをやってくれないという不満が良くあります。前回のコラムで紹介したように、年齢とともにもの忘れが増えたり、同じ話を繰り返したりするようになるのは自然なことなのですが、さらに年齢を重ねると、また少し違った傾向が見られるようになります。以下は会話例です。

○あなたは、夕立がきそうなので早めに買い物を済ませようとします。出掛けにおかあさんに洗濯物の取り込みと、片付けを頼みます。

子「おかあさん、洗濯物を取り込んだら、箪笥の引出しに片付けておいてもらえます。主人のものは一番上の引出し、私のものは二番目、おかあさんのものは一番下に入れておいてください。」

母「分かったわ。気をつけて行ってらっしゃい」
けれども、あなたが買い物を終えて家に戻っても、取り込んだ洗濯物が山積みしてある状態です。『どうして、片付けまでやってくれないの』とあなたはイライラを感じます。
おかあさんが認知症になってしまったのではないかと心配にもなります。
もしお嫁さんであれば、わざとお義母さんから意地悪をされているのではないかと勘ぐり、ストレスになるようなこともあるでしょう。

でも、このお年寄りの行動は年齢を考えると特別なこととはいえません。80歳代以降になったら、音や声が聞こえにくくなることも良くあります。
あなたは、夕立が来る前に買い物を済ませたいという思いが強くて慌てており、おかあさんに対してとても早□になっていたのかもしれません。おかあさんには聞こえにくかったのではないでしょうか。また、80歳代以降になると記憶力が低下しているため、一度にいくつものことを頼んでも、覚えられない場合もあります。
 おかあさんは、あなたが早口でお願いしている途中から、こころの中で「もうちょっとゆっくり話してくれないと、どうしたらいいのか分からないいじゃあない」と思っていたのではないでしょうか。けれども、急いでいるあなたに「もう一回、説明してよ」とは言い出せなかったのでは...。こうした時には、あなたの言うことは十分理解できていないのに、あいづちを打たざるをえない状況になってしまいます。
一度の脱明で理解しきれない自分自身に、一番情けない思いをしているのはおかあさん自身なのかもしれません。

より高齢なお年寄り(80歳代以降)に頼みごとをするときは、『音や声が聞こえにくいこと』や『複数の物事を一度に理解するのが大変なこと』承知しておいてください。
たとえば、洗濯物を取り込み、片付けるためにはどれだけの動作をしなければならないか考えてみましょう。
 1 洗濯物を取り込む
 2 衣類とタオルなどを種類別に分ける
 3 誰のものであるのか考えて分ける
 4 アイロン掛けが必要なものは別にしておく
 5 たたんだものをダンスに入れる
若い世代であれば、洗濯物を片付けるという動作は簡単なことかもしれません。また、毎日やっていることであれば問題ないのかもしれませんが、たまにお願いするとしたら、お年寄りにとっては複雑な動作であるといえるでしょう。若い世代であっても、普段まったく手伝っていない夫であったとしたら、急に頼んでも妻が望む通りにはできないのではないでしょうか。お年寄りであれば、なおさらのことです。

洗濯物の片付けをお願いするのであれば、①まず取り込むことを頼み、②それができてから洗濯物を分ける ③その後にアイロンがけを頼む ④最後に箪笥に分けて入れる などの一つ一つステップを踏むなどの工夫が必要です。また言葉だけでなく、身振りや表情を加えたり、大事なことはメモ書きにしたりするといいでしょう。
 そして、頼みごとをするときのポイントは、大きめの声で、できれば低めの声ではっきりと話すこと。テレビなどを消して雑音のない環境がいいでしょう。お年寄りの顔を見ながら、ことばの文節を区切り、ゆっくり話すように心がけましょう。

(監修:アイエムエフ研究センター)