オールライフマガジンALL LIFE MAGAZINE

「お年寄りのこころ学」その7

2015年10月15日

「記憶」と「もの忘れ」について

■「覚えたつもり」なのに、「忘れる」のはどうしてでしょう?
 記憶とはどのような仕組みで人の脳に刻まれていくのか考えてみましょう。
人は常に新しい場面に遭遇したり、初めて見るものと出あったりしています。テレビの前に座っているだけでも次々に画面は変わりますが、ほとんどのことは忘れてしまいます。自分が目にしたこと、聞いたこと、感じたことを1から10まで記憶するわけではないということです。
 まず初めに、私たちの脳は「知覚フィルター」が働き、注意を払わなかったことは記憶されないようになっています。私たちは必要のない情報を無視することによって、重要な情報を自動的にえりすぐって記憶することができるのです。
 さらに、「知覚フィルター」によって脳に蓄えられた記憶も、印象の薄いものや、時間とともにあまり意味を持たなくなったものは徐々に忘れ去られていきます。特に必要もないのに1週間前の天気や食事の内容などを正確に覚えている人はまれでしょう。
 なぜそうなるかというと、同じようなことを繰り返して経験していると、どんどん記憶の情報が増えてひとつひとつが曖昧になってくるためなのです。よく似た情報が増えてくると、それがいつの出来事だったか見分けがつかなくなり、特に印象に残っているもの以外はその人の記憶からどんどん排除されていきます。感動や喜びをともなう記憶、初めて経験したことの記憶など、特別な価値を待った記憶は長く鮮明に残ります。けれども年を重ね、身体が不自由になって外出の機会が減ってきたりすると、日々が単調に過ぎていきます。日々の記憶はいつのことだったか分からなくなり、曖昧になっていくのかもしれません。
 子どもにとって親のもの忘れはいらいらする出来事のひとつです。けれども、子どもにとっては注目に値することだとしても、実は親にとってその情報はそれほど注目すべきことではないと判断されたのかもしれません。親にとって特別に価値のあることではなかったということでしょう。
 どうしても忘れてほしくないことであれば、子どもが工夫しましょう。メモ書きをして分かりやすい一定の場所に貼っておくなどの気配りが親のもの忘れを防ぎます。また「言った、言わない」のいらぬ親子けんかを防止するのに役立つでしょう。

■老化による「正常な範囲の物忘れ」病気による「病的なもの忘れ」、その違いは?
 お年寄りのもの忘れが、老化による「正常な範囲のもの忘れ」なのか、病気による「病的なもの忘れ」なのか、区別がつかず心配している方は多いのではないでしょうか。では、いったいどこが違うのでしょう。
 簡単に言うと、ヒントをもらって思い出せる場合は老化による「正常な範囲のもの忘れ」で心配はいりません。一方、ヒントをもらっても思い出せない場合は病気による「病的なもの忘れ」である可能性が高くなります。また、「正常な範囲のもの忘れ」では、たまに忘れる程度ですが、「病的なもの忘れ」であれば、同じ名前を短期間に何度も忘れるようなことがみられます。もう少し具体的に例をあげてみましょう。
○流行の歌手の名前や、カタカナの流行語をすぐに忘れてしまう → 心配はいりません。
興味がないから覚えようという気持ちにならないだけです。
○友人から「このあいた食べた寿司はうまかったね」などと言われたのに「最近、寿司なんか食べたかな」とすぐに思い出せない→「忘年会の二次会で行った寿司屋だよ」とヒントをもらって思い出せれば、心配はいりません。あまりおいしいと思わなかったため、印象に残っていなかっただけなのかもしれません。一方、こういうヒントをもらっても、寿司を食べたこと自体を思い出せない場合、病気が疑われます。

若年者・健常者も含めて、普段から、役者の名前や曲名が分らなくても、すぐに人に聞くので
はなく、ヒントをもらって自ら思い出す訓練をしておくと脳が活性化すると言われています。

(監修:アイエムエフ研究センター)