オールライフマガジンALL LIFE MAGAZINE

「お年寄りのこころ学」その8

2015年11月05日

「病的なもの忘れ/認知症」について

 前回コラムでは「記憶」と「もの忘れ」について触れましたが、今回から「病的なもの忘れ/認知症」について説明していきます。
 老化によるもの忘れでなく、病気が原因だとしても、早めに気付いて治療を行えば、症状の進み具合を遅らせることができる場合も多くあります。また、似たような症状でも、お年寄りの病には認知症のほかにもいろいろな病気があります。家族や介護者は認知症だと考えていても、実は認知症以外の病気が原因で、なかには、治療を行うことで症状がすっかりなくなるようなこともあります。だからこそ、早期に適切な診察を受けて、病気についての情報をよく知ったうえで、対処したいものです。

■認知症の初期症状について
 病気による認知症はどのように見極めればいいのでしょう。誰もが最も知りたいことだと思うのですが、それほど簡単ではありません。病気の経過観察をしなければ、正確に診断することは困難であるといわれています。
 そこで、「正常な範囲のもの忘れ」と「病的なもの忘れ」があることを理解しておくことも大切になります。その上で常に注意しながら観察しておくことと、気になったり心配になったりした時には、すぐに専門医に相談して、適切なケアについての支援を受けることが重要です。
 経過観察するにあたり、認知症という病気の基礎知識を知っておきたいものです。
 まず、認知症になりやすい年齢は何歳くらいだと思いますか。
 65歳~69歳人口での有病率は1.0%~1.4%、85歳を超えると(85~90歳)22%~35%に上昇します。年齢が上がるほど増えていきます。(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 平成26年資料より) もちろんすべての人が長生きすると認知症になるわけではありません。
 主な認知症の徴候としては、一般的には記憶力の著しい減退がみられます。
大切な約束や知り合いの名前が思い出せなくなったり、大切なものを失くすことが増えたりすると要注意。また、計算する能力やここがどこなのかといったことを認識する能力、会話についていく能力などの低下がみられることもあります。
 早期の段階ではもの忘れが増えたり、計算能力が落ちたりといった自分自身の症状に戸惑う場合もあります。でも、記憶力が低下するに従い、自分自身が戸惑っている理由さえ、簡単に忘れてしまうようになります。以下に家族が気づきやすい主な認知症の初期症状例を挙げておきます。あくまでも例であり、一つでもあったら認知症というわけではありません。
・同じことを言ったり聞いたりする
・物の名前が出てこなくなった
・以前はあった関心や興味が失われた
・置き忘れやしまい忘れが目立った
・日課をしなくなった
・時間や場所の感覚が不確かになった
・だらしなくなった
・財布を盗まれたと言う
・ささいなことで怒りっぽくなった
・慣れているところで道に迷った
・以前よりもひどく疑い深くなった
・処方薬の管理ができなくなった

■筋の通った話をするのに、認知症ということはあるのか?
 認知症は進行と共に前述したさまざまな症状が現れるようになりますが、変化の大半は意識のはっきりとした状態で発生します。現在の瞬間での意識はしっかりしているので、限定された状況などでは、一見「筋の通った会話」を行うことは可能です。一般的に、軽度の認知症の方は、対話している相手が記憶を要する話題を切り出さない限り社交的な会話を行うことができます。
 たとえば、誰かが「おかあさん、今朝は何を食べたの?」と聞くとします、事実としては、おかあさんはトーストを食べたとします。
でもおかあさんは、記憶がないので「今日は、まだ何も食べていないのよ」「昨日の残り物で済ませたわ」と答えるかもしれません。その答え方に不自然さが感じられないため、トーストを食べたという事実を知らない人は、ごく普通の応答として受け取ることでしょう。
 また、施設で認知症の方同士で会話している場面などは、楽しそうな会話が続いていて、旧友なのかと思ってしまうようなことがあります。でも、よく聞いていると、会話の意味はまるで成り立っておらずチンプンカンプン。これは会話自体が楽しいということで、内容や言葉の意味で楽しんでいるのではないということです。
 こんなところからも、専門職でさえ、受け持ちの患者が遠い昔の出来事を克明に覚えているな、という印象を持つことがあるそうです。ただし、大半の場合その専門職は、患者が話している出来事が本当に起こったことかどうかは知らないのです。
 これが認知症の診断が難しいと言われる所以なのですが、筋の通った会話、好感の持てる態度、感情的な問題がないということだけでは、認知症という病気ではない、とは言い切れないのです。

(監修:アイエムエフ研究センター)