オールライフマガジンALL LIFE MAGAZINE

「お年寄りのこころ学」その9

2015年12月08日

前回は「病的なもの忘れ/認知症」について触れましたが、今回から主なタイプ別の認知症について解説していきます。

■アルツハイマー型認知症って、どういう認知症なのでしょう?
 老年期の認知症にはアルツハイマー型認知症、脳血管性認知症(血管性認知症ともいう)、レビー小体型認知症などがあります。欧米ではアルツハイマー型が多いといわれていますが、日本でもその傾向は同じです。(かつては脳血管性認知症が多いといわれていました。)
それは生活習慣などの改善によって、ある程度脳血管性認知症は原因となる脳血管疾患を減少させ予防することができるのに対し、アルツハイマー型認知症は現在、予防法が確立されていないからです。
 アルツハイマー型認知症の原因はまだ分かっていないのですが、脳の中でさまざまな病的な変化が起こるようです。脳は萎縮して小さくなり、記憶、思考、および行動に変化が現れます。
 症状が進んでいく進行性の病だといわれており、現在のところ症状の改善を見るケースは極めてレアケースと言えます。
 アルツハイマー型認知症という病名は、ほとんどの方はとこかで聞いたことがあるのではないでしょうか。認知症という病気の代名詞のように使われていることもあります。おそらく怖い病気というイメージが強いでしょう。
 確かに、完治のための治療はまだないようなのですが、進行を遅らせるための治療薬で効果が期待できるものが開発され、すでに広く利用されています。また、日々治療法に関しての研究は進められており、今後の研究成果が期待されています。

■アルツハイマー型認知症を発症するとどういう変化が現れるのか?
 アルツハイマー型認知症の発症と共に、さまざまな症状が現れます。初期の段階では、記憶およびその他の認知機能に変化が生じることが一般的です。神経細胞が減っていくことと関係があると言われています。
 記憶の障害が高まるにつれ、猜疑心、妄想(誤った思い込み)および、幻覚(実際には存在しない物、人などを見る)などが生じてくることもあります。「誰かが、私のお金を盗んだ」とか、「殺される」といった考えにとらわれることもあるようです。
 また、配偶者のことや子どものことが分からなくなるようなこともあるでしょう。真実を理解してもらおうと、あれこれ説得を試みても無駄骨に終わることも少なくおりません。
 こういった精神面での変化に加え、行動面の変化もみられるようになります。
 一般的な変化としては、徘徊(目的もなくうろうろ歩き回る)、不穏状況(大声を出したり、落ち着きがなくなる)、睡眠障害(夜眠れなくなったり、昼夜逆転したりする)などがあります。その他、独り言を言う、叫ぶという行動や、性的行動の変化、ならびに攻撃的な姿勢がみられることもあり、家族としては戸惑ってしまうこともあります。
 でも、もしおとうさんやおかあさんにこのような症状が現れても、それは決して意図的なものでなく脳の変化が原因で起こっているのだと理解してください。少し工夫した関わり方によって、困った行動を軽減することもできますので、ぜひ専門家に助言を求めてください。
 一方、感情面でも影響が現れます。もっとも多くみられる気分の変化はうつ状態のようです。集中力がなくなり、興味や喜びの感情が消失したり、不安や倦怠感にみまわれます。なかには絶望感のために死について考えるようになる場合もあるようです。これらの精神症状には薬物などさまざまな治療法があります。

○具体的な記憶障害
・短期記憶障害
「今日の日付が分からない」「どこに物を置いたか忘れる(いつも探し物をしている)」「何度も同じことを聞く」 など
・長期記憶障害
一般的に知られている「祝日の名前」や「自分が通った学校の名前」「子供の消息」「自分の過去の職業」についてなど、本人なら当然知っているはずの出来事についても、認知症が進行すると忘れてしまい、最終的には家族の名前や顔も忘れてしまうこともあります

■対応はご本人に不安を与えないことが大切
 記憶障害は、本人に自覚がありませんし、進行性の障害ですので、周囲の人や環境を本人に合わせる必要があります。本人に体験そのものが抜け落ちてしまっていると、本人にとってその体験(事実)は存在しないことになります。こうして本人が認識している世界と、周囲の人が認識している世界にズレが生じます。本人にとっては、自分の認識している世界こそが真実なので、周囲の人が事実を伝えても、本人はウソを言われていると認識します。
つまり、本人の言動を訂正することは、本人からしてみれば、自分の言動を否定されたり、抑制されている感覚になります。周囲の人は、本人の言動を訂正しがちになりますが、それをすればするほど、本人の不安や不信は高まり逆効果になります。周囲の人が本人に合わせる必要性があるというのは、こういう理由です。 まずは、本人の言動を笑顔でいったん受け止めて、安心してもらうことが対応の第一歩となります。「ここに居ていいのですよ」というメッセージを発信することで、言動が落ち着くことが多いようです。
 併せて、かかりつけ医の管理の下での薬物の使用、本人が嫌がらない範囲での脳トレーニングなども効果があると言われています。
次回以降、脳血管性認知症や類似の病気について触れていきます。

(監修:アイエムエフ研究センター)