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「お年寄りのこころ学」その10

2016年01月07日

前回は「主なタイプ別の認知症に」ついて触れましたが、今回は認知症と「うつ病」について解説していきます。実際、うつ病を認知症と決めつけて、対処が遅くなるケースも少なくありません。最小限の知識は身に着けておきたいものです。

■うつ病になるお年寄りは多いのでしょうか?
 うつ病はお年寄りの精神疾患として最も多いものです。
誘発させる出来事のうち7~8割は、「喪失」=「生活するうえにおいて辛いと感じること」だと言われています。配偶者や友人、知人など身近な人たちの死がきっかけとなることがよくあります。その一方で、高血圧、糖尿病などの身体疾患や脳卒中などが原因になることもあります。
 一般的なうつ症状は、気分が滅入る、元気がなくなる、などですが、お年寄りの場合、自分から憂うつな気分を訴えることは少なく、「さみしい」「楽しくない」などと表現することが多くなります。表情が乏しく悲哀感に満ちた一見して「うつ」と分かるような表情をすることがあまりないため、周囲の家族もうつであることを見逃してしまいがちです。
また、もの忘れや、自分がどこにいるのか理解できなくなるといった認知症とそっくりの症状が起こることがあり、このような場合には認知症と区別することがかなり難しいと言われています。
 さらに、こころの辛さを訴えるのではなく、食欲不振、体重減少、胃腸障害、便秘、不眠、頭痛、ふらつき、肩こり、疲労感などさまざまな身体的症状を訴えることもあり、判断は一層難しくなります。

■うつ病のために自殺にいたるケースもあるのですか?
 残念ながらうつ病が原因で自殺をしてしまうお年寄りもおられます。
日本の全自殺者のうち65歳以上が占める割合は多いという統計があります。
お年寄りのなかには、薬を決められたとおりに服用しないことや、生命に関わる治療を継続しなかったりすることで自らの死を選ぶケースもあるようです。また、意図的に食べないようにしたり、故意に火事を起こすこともあります。これらの場合は事故として扱われるようですが、一種の自殺であるともいえますし、もしこれらを含めるとさらに高齢者の自殺者の数は増えることになるでしょう。
 年をとると、元気がなくなったり、暗い顔をして落ち込んでいても、「仕方がないこと」と捉えたり、普通のことのように考えることもありますが、このような症状は決して、正常な加齢の一部とはいえません。お年寄りが落ち込んでいるようなときは、気分転換を勧めてください。でも、決して「がんばってね」などとは励まさないでください。うつのときに、「がんばれ」と言われると、一層辛くなってしまいます。自殺といった悲劇を迎えないためにも、早めに老年精神科や神経内科を受診することが大切になります。

■うつ病の治療はどのように行われますか?
 例えばお父さんやお母さんが暗い表情をして、なかなか寝室から出てこないようなことが続くと、どうしたものか不安になってしまうでしょう。「一日中、ぼーっとしている」とか、「動作が鈍くなった」などの声も家族から聞こえてきます。
でも、幸運なことにうつ病は効果の期待できる治療法がいくつもあるので安心してください。
薬による治療のほか、さまざまな心理療法があります。治療では、自殺を食い止めるために、 自殺に関してどのように考えているか、これまでに未遂の経験が有るかどうか、周囲のサポート体制の有無なども参考にされます。

■ひどい幻覚や妄想がありますが、精神疾患でしょうか?
  ひどい幻覚や妄想があると、家族としてもどうしたらいいのか混乱してしまうのではないでしょうか。
 確かに精神疾患のケースも多いのですが、中には、聴覚や視覚といった感覚の喪失がそうした妄想の背景になる場合もあるようです。仮に、おとうさんの聴覚に障害があるとしましょう。聞こえないために家族はたとえば家の建替えをしようと考えたような場合、つい話し合いにおとうさんを交えないようなことがあります。意図的なわけではなく、意見を言わないから、存在を忘れてしまうという感じでしょうか...。
 でも、おとうさんにしてみると、勝手に話しが進んでいくことはなにか自分にとって良からぬ相談がなされている、と疑う気持ちが出てくるのではないでしょうか。こういった感情が、妄想や幻覚を引き起こすこともあるのかもしれません。
 でも、このようなケースでは喪失されている感覚を矯正し、障害を持つお年寄りとよい コミュニケーションを確保しようと努力することでお年寄りの気分は安定し幻覚や妄想が消失することもあります。あるいは薬の副作用で幻覚などが出るケースもあることを知っておきましょう。

(監修:アイエムエフ研究センター)