オールライフマガジンALL LIFE MAGAZINE

「お年寄りのこころ学」その11

2016年02月05日

 今回は、身近な人に先立たれるお年寄りの気持ちの変化と対処について、考えていきます。
 お年寄りは身近な人の死に直面する機会が、若い世代に比べてどうしても多くなります。短期間のあいだに、複数の人に先立たれてしまうことも起こりがちです。
 お年寄りはいすれ訪れる自分自身の死について気にする以前に、周囲の人の死に対して悲しむことが一般的で、それが深刻なケースとなる場合もあります。特に、ずっと連れ添った配偶者の死はとても大きな嘆きにつながります。その死に対し、罪悪感を抱いてしまうようなこともあります。身近な人を亡くすことが誘引となるうつ病が多いという現実もあります。そういったことを防止するためにも、家族は周囲の人の死と直面したときのお年寄りのこころを理解しておきたいものです。身近に起こりがちな例で見ていきます。

■母親を亡くして父親の塞ぎこみようが半端ない状態・・・
 お年寄りにとっては配偶者や子ども、兄弟姉妹などの身内、友人などの死に対する悲嘆が深刻な問題となっている場合が多いようです。特に自分の子の死を先に迎えてしまったときの悲しみは計り知れないものとなります。
 おとうさんにとって、おかあさんとは何十年と連れ添ってきた空気のような存在であったことでしょう。居て当たり前の存在。居てくれないと困る存在。
 現在の高齢者世代の多くは身の回りのことは妻がすることが多いといえます。おとうさんは家事のあらゆることをおかあさんにまかせ頼ってきたかもしれません。
 一般的に、お年寄りは、自分が感情を表すと家族が心配したり、戸惑ってしまったりすると思っていることが多いようです。また、年をとっているのだから、周囲の人間が亡くなることは予測できることだし、自分だってまったく予測していなかったわけではない、と自分を納得させようとすることもあるでしょう。本当は納得できないのに。家族に自分の胸の内を打ち明けるのもはばかれるのかもしれません。
 こうした理由で、おとうさんは、おかあさんが亡くなって悲しくて苦しい、持っていきようのない気持ちを、自分ひとりで抱え込もうとしているのかもしれません。一般的に、自分のなかで消化しきれていない悲しみは、長い年月を経ても、尾を引きやすいようです。
 こういったケースではカウンセリングを受けることが有効な場合があります。カウンセラーはお年寄りの中で抑圧されている感情を体の外に出すという作業を行います。傾聴と呼ばれる技法で、お年寄りの話しに耳を傾けます。特に老年心理を学んだカウンセラーであれば、お年寄りは、「この人に話してもいいんだ」という安心感、信頼感を抱き、今まで誰にも話せなかった胸のつまりを外に出すことができるようにしてくれるでしょう。

■母親は亡くなった父の喫煙を止められなかったことをとても悔やんでいる・・・
 人は愛する人を亡くしたとき、さまざまの側面に罪悪感を持つことがあります。おとうさんは病に悪影響があるからと、飲酒と喫煙を主治医からきつく禁止されていました。けれども、おとうさんは医師との約束を守れず、とうとう命を落としてしまいました。このようなケースで、そばに居ながら喫煙と飲酒を止めきれなかったのは自分のせいだとおかあさんが配偶者の死に対し、罪悪感を抱くようなことがあります。
 一般的に愛する人を亡くすと、亡くなった人の良い面ばかりが頭に蘇ってくるので、悔いの気持ちはいっそう大きくなりがちです。
 でも、罪の意識には自分自身を責め過ぎるような筋の通らない考え方が含まれていることが一般的です。そこで、非合理な考え方を明確にすることが悲嘆を解決するのに役立つことがあります。
 「おとうさんの喫煙をやめさせるのに、他に方法はあったの?」「おかあさんはやめさせようとしたけれど、どうしても言うことを聞いてくれなかったんでしょうね。」などと、やさしく声かけをしてあげましょう。
 ゆっくりでも対話を通し、こころの中で混乱している思いを吐き出してもらって、立ち止まらず、これから先の人生を進んでもらうように支えます。亡くなった方を悼むことは大切なことですが、残された者が前向きに生きていくこともとても大切なことです。
 その意味では、日本で一般的に行われている「通夜・葬儀・納骨・法事」の一連の流れも、死者を悼むことであり、同時に遺族、家族に慰めや安心感をもたらすもの、そして自らの人生の確認と報告の大切な機会であるともいえるでしょう。

(監修:アイエムエフ研究センター)