オールライフマガジンALL LIFE MAGAZINE

「お年寄りのこころ学」その12

2016年03月10日

 今回は、在宅介護に関しての家族の役割や、よくある疑問について考えていきます。

■老親に対する家族の役割
 最近は男性が介護に参加するケースが増えてきましたが、それでもなお多くの部分を担っているのは女性です。妻や息子の妻、娘など。なぜこういう現実があるのでしょうか。家族の関係を考えるには、昔の日本にあった「家(いえ)制度」の仕組みをもう一度検証する必要があります。「家(いえ)制度」とは、日本固有の考え方。もう50年以上も前に法律からは姿を消したのですが、特にお年寄りのこころには今なお根付いているといえるかもしれません。
それは「長男夫婦が老親を介護するのは当たり前」という固定的な考えにも通じます。
そもそも「家制度」とは、家を代表する家長の権限は絶対であるというもの。日常生活においても、座る位置、入浴の順序など、家長あるいは長男と他の家族との間には格差が付けられていました。また、財産や職業は家業として長男が後を継ぎ、同居することが建前でした。
 戦後、「家制度」は廃止されましたが、長年にわたって培われた考え方や生活意識は急に変わるものではなく、今の家庭生活の中にも深く横たわっているといえます。
 とはいえ、現在の日本の社会構造は大きく移り変わりました。必ずしも長男が家業を継ぐわけでなく、自分で仕事を探し、親から独立し、まったく異なる生活を営むことが増えています。親の財産相続においても、現在の民法では兄弟姉妹皆平等です。
 このような状況であるのに、長男夫婦に対し、「親の世話をするべき」という考え方を押し付けることがあれば、納得がいかないという思いになるのも当然のような気がします。もらう財産は平等、けれども出す労力は不平等とはおかしな話かもしれません。親のことは兄弟姉妹皆で考えなければならないことでしょう。それぞれの都合で、それぞれにとって必要なときだけ「家制度」を持ち出すことは避けたいものです。このような考え方が、時として介護をする人を孤立に追い込んでしまうこともあるのではないでしょうか。

■「長男の嫁」について
 現代の感覚では、想像することさえ難しいのですが、「家制度」のあったころ、長男は幼いころからその他の子どもとは違った待遇で育てられていました。すべての優先権がありました。
 その長男と結婚する女性は、そのことを自覚し、長男とではなく[家]と結婚したのです。
 このような背景を持つ長男の妻は、周囲から「嫁」と呼ばれることはごく一般的なことであり、「嫁」自身も不満を表すことはなかったのだと考えられます。というよりはその時代ではそういう役割を担うことは自然なことだったのでしょう。
 けれども、日本の法律から「家制度」が消え50年以上の年月が流れ、人々のライフスタイルは大幅に変わりました。この現代の社会を生きる女性が「嫁」と呼ばれることに抵抗を感じるのはもっともなことです。
 昔の家的秩序では、父や息子が外で働き、妻や嫁が家庭を守り、家事、育児に専念するという関係がありました。その延長として、お年寄りの介護を担うのも当然のように妻や嫁、という構造があったのです。
 今思うとなんだかおかしな話かもしれません。けれども、50年以上前はこの考え方が普通だったので、今のお年寄りはこういう社会で教育を受けてきました。今の若い世代とお年寄りの間に考え方の大きなギャップが生じるのはある意味、仕方のないことなのかもしれません。
 現在においても嫁姑の確執などが生じやすいのも、このようなことが一因なのではないでしょうか。
 社会的構造が大きく変化した今、新たな形の夫婦、家族の関係を築いていけばいいのですが、お年寄りに理解を求めるのはなかなか難しいことです。彼らの意思とは別のところで、社会が変化してきたのですから。「今はこうなの」と押し付けることは、酷なことともいえます。若い世代がそのギャップを理解してあげることだけでも、自身も含めてストレスを減少させることができます。

■核家族化と介護保険制度
 まわりをぐるりと見わたすと、家族暮らしの場合でも、3人家族や4人家族が多いように思われます。
 50年ほど前は日本の家族の平均人数は5人でした。が、平成8年には初めて3人を下回り、平成25年には2.49人と半分にまで減っています。(国民生活基礎調査 厚生労働省平成26年)
 家族人数が少なくなるのと並行するように、65歳以上の人と子との同居率も低下の一途です。平成2年は子と同居する人は59.7%、それが平成12年では49.1%、平成25年42.3% となっています。
 昔は3世代で暮らすことはごく普通で、お年寄りは大家族のなかでも「家制度」のもとしっかりとした地位を持ち生活していたといえるでしょう。特におじいちゃんは、絶対的な存在だったのです。けれども高度経済成長期に、農村部から都市部への人口移動が激化し、世帯は分裂。その結果、核家族が増えていきました。核家族が増えるに従い、お年寄りの介護を若い世代が行いにくくなり、妻、夫という配偶者が担わざるをえない状況になってきています。けれども配偶者自身、高齢で健康上の問題を抱えている場合が少なくありません。
 また、子どもの人数が減ってきたことで、ひとりの子どもが複数のお年寄りの介護にかかわらなくてはいけない状況にもなってきています。きっと、夫婦2人で4人の親をみなければならない、と不安に思っている方も多いでしょう。結婚をしていない、もしくは子どもがなく配偶者を亡くした叔母さん、叔父さんがいる場合には、介護に関わらなくてはならない人数はさらに増える可能性があります。そうなると、若い介護者も精神的・肉体的な負担だけでなく、経済的にも負担を背負うこととなります。
 これらの負担を軽減するために、介護はだれか個人だけで背負うのでなく、社会全体で背負おうという考え方で生まれたのが、「介護保険制度」と考えることもできます。
 核家族がこれだけ増えてきた現在の社会では、介護者の負担を軽減するためにも、介護保険サービス、地域サービスを上手に活用して、介護を行うことがとても大切なこととなってきています。

(監修:アイエムエフ研究センター)