オールライフマガジンALL LIFE MAGAZINE

「お年寄りのこころ学」その20

2016年11月11日

 2014年統計によると、日本人の平均寿命は男性が80.50歳 、女性が86.83歳にまで伸長してきました。それに伴うように認知症患者数も増え続け、2025年にはその数が700万人、65歳以上人口の5人に1人が相当するとされています(厚生労働省推計)。今回から何回かにわたり、認知症高齢者(軽度や疑いも含む)に対する接し方の工夫を、実話・実践から紹介していきます。見守る側の接し方や態度により、当人の心身の安定度は大きく差がでます。良い接し方は徘徊を防ぐことにもつながるとされています。

★自分はボケていない(注:本人の言葉をそのまま掲載) と言い張る92歳女性への適切な対応例を見ていきます。

■2世帯住宅の1階に一人暮らし。(夫は5年前に死亡)以前は老人会や町内イベントに出ていたが、友達が減ったこともあり(長寿のため中の良い友達が先に亡くなる)室内に閉じこもり気味。日常生活は一人で一定できるものの、記憶障害は目立ってきていた。習慣化していることはできるが、数十秒 前の記憶もおぼつかない状態。主治医からは家族以外の人とも接することをすすめられていた。介護保険を使うための診察(主治医に検査を受ける際に)、「私は絶対に大丈夫」と受診を拒否していた。

(対応例)
肯定的に「そうだね。母さんは多少のもの忘れはあるけど認知症ではないよね。最近では研究も進んでいて運動やトレ、リハビリなどでも認知症を防ぐことができるらしい。介護保険というのは予防介護というのがあって、保険制度が使えると10分の1の負担で予防のためのサービスも使えるそうだ。母さんも100歳まで認知症にならずに元気に生きるために、また我々夫婦のためにも予防サービスを検討してみようよ」というアプローチで本人が了解し主治医に連れて行った。

その際の簡易診断でも認知症の傾向が見られたので(事前に主治医に状況を話しに行っていたので)、「大丈夫だと思うけど、念のため頭の中を病院で検査しておきましょう。そうしたら安心でしょう」という主治医の指示の流れで認知症専門病院で検査を実施。検査はMRIと口頭・筆記による専門的な認知症検査を実施。本人は長い検査終了後も「私は課題を全部できた。やっぱり問題ないのよ」と自信満々で機嫌も良かった。実際には『軽度を超えて立派な認知症』という診断であった。アルツハイマー型と診断。結果は主治医にフィードバック。

家族とケアマネジャーが相談して、まずは短時間のリハビリ型デイサービス(3時間)を使う方針を決めて訪問調査の手続きをとり訪問調査を実施。判定結果は想定よりも重く、要支援ではなく要介護1であった。

まず1度目のデイサービスから帰ってきた際には「もう2度と行かない。私以外の人はみんなボーとしていたり、どこかおかしい。やることもなかだか私が全部できることばかり。あの医者にはもう行かない(注:本人の言葉をそのまま掲載)」と意思表示をした。そのことを言った記憶は残らないので(ここだけは記憶障害を逆手に取り)、次の通所の時にも何もなかったかのように周りで自然に出かける用意をさせた。多少の抵抗はあったが、リハビリすると呆けにくい(注:言葉をそのまま掲載)そうだから、このまま頑張ってね・期待しているよ というようにその都度送り出した。事情を事業所にも伝えて、なるべく誉めてもらうようにした。(当人は褒められるのが大好きで、実際に体はよく動いた) 家に着いても「連絡ノートにもすごく優秀と書いてあるよ」と誉めることで、行くことが楽しみになってきた。カレンダーにしるしと出発時間を書いてあるので、通所当日には1時間前には準備ができているくらいになった。半年後には週2回を週3回利用に増やすほどになった。サービス開始から2年が経過しても、記憶障害は治らないものの、記憶力以外の理解力・判断力などの能力は維持できていて、1人での日常生活は一定程度維持できている。もちろん現在でも当人 に認知症の自覚は無い。(決して認めようとはしない) ただし、「もの忘れは年齢とともに進んでいるから、大事なことはすぐにメモしよう」という合意の下で、本人はメモをマメにとることで日常の不便を最小限に抑えている。現在の合言葉は「100歳まで元気でいて表彰状をもらおう」としている。

★本対応のポイントは、本人の「もの忘れはあるけども認知症ではない」という強い意志に逆らわず家族も含めて関わる人皆が、本人の世界の中に入って「もの忘れはするようになった」が「認知症にならないように頑張ろう」を合言葉/ポイントにして、同じ目線で対応していることにある。
 また、自分でできることは自分でするようにさせているので、日常生活動作のレベルも維持できている。ただし、ヤカンをかけ放しにするなど典型的な記憶障害がみられるので、このお宅ではガスを電磁調理器に代え、かつ夕飯を差し入れするなどして、火の元に留意し、栄養不足にも留意している。(栄養不足は認知症を進行させると言われている)
 追加するとこのケースでは、認定結果を待たずにサービス利用を開始した。(認知症の進行を一刻も早く止めたかったため) 償還払い(全額払っておいて認定後に9割戻してもらう)を予定していたが、介護事業者が配慮してくれて、すべて認定後の請求となった。
さらに介護サービス利用の効用としては、1日おきに通所しているので、通販で無駄に買い物をしなくなったそうである。通所前は時間を持て余すのと、人と電話で話せるのが楽しいようで、とにかくマメに注文していたという。

(監修:アイエムエフ研究センター)