オールライフマガジンALL LIFE MAGAZINE

「お年寄りのこころ学」その21

2016年12月12日

 前回から、認知症高齢者(軽度や疑いも含む)に対する接し方の工夫を、実話・実践から紹介しています。今回も実話での成功事例をご紹介します。見守る側の接し方や態度により、当人の心身の安定度が増し、介護する側のストレスも減ることを学びます。

■長男の奥様(Bさん)が専業主婦として、主に同居中の姑(Aさん/要介護2/認知障害あり、日常
生活も一人では困難なこともある)を介護・介助しています。Aさんは血糖値が高く甘いものを控えるよう、かかりつけ医から指導を受けています。ところがAさんは甘いものが大好きで(かつ食べたことも忘れているので)あるだけのお菓子を食べてしまっていました。かつては、「もう食べないでください」というと、ヒステリックになることもありました。

(対応例) 
ベテランのケアマネジャーの助言で、「さっき食べたばかりでしょ」は言わないで、糖尿病食のビスケットをその都度少しだけあげて、「好きなテレビが始まりますよ」などの対応で、乗り切ることにしま
した。今はヒステリックになることはなく落ち着いています。専用のお菓子は、値段は高いのですが、
病気には配慮されているので、数値管理もうまくいっています。
この対応は、介護施設などでは常識的な対応になりつつありますが、「食事を食べていない」という認知症患者に対して「食べたでしょ」は言わずに、ちょっとしたものをあげたうえで、「ちょっと待っていてくださいね。その間少し散歩に行きましょう。」などの『ご本人に拒否感を持たせない接遇』に共通するものです。

■同一人の事例ですが、もう一つ困っていたことは、たまに来る兄妹がAさんのご機嫌をとるために
お菓子を持参してくることでした。自分達はたまになのでお母さんの喜ぶ顔が見たいというところなのですが、健康管理を担っているBさんにとっては気が気ではありませんでした。加えて、Bさんに対して「お母さんを大事にしていないのでは」という誤解/不満まで抱かせていました。

(対応例) 
これも専門家からアドバイスを受けて、Bさんとご主人(長男)共同で『(仮題)健やか新聞』と題した
ニュースを作成し、「今こんな生活をしている。医師からこんなことを指導されている。血液検査の結果はこんな具合、好きなテレビは○○」などの情報を、不定期ながらも身内に提供することにしました。もちろんそこには、さりげなくBさんの工夫や苦労話も盛り込んであります。 
すると兄妹たちは、これまでのように安易にお菓子を持ってくることもなくなりました。むしろ値段が高い糖尿病食のレトルト食品やお菓子を送ってくれるようにさえなりました。もちろんBさんに対してのイメージが好転したことは言うまでもありません。 

★本対応のポイントの1つめは、一人で悩み・抱え込まずに専門家に相談したこと。やはりプロのアドバイスを受けるのと受けないのでは差がつきます。2つめは離れている家族を含めて「情報共有」した
ことです。受け取る事実が同じになれば、誤解も生じにくくなるわけです。3つ目は専用の食品を採用することで、満足度を下げずに病状管理ができたことです。福祉用具と同様「これまでと極力変わらない生活ができる」ための配慮ができた事例です。

(監修:アイエムエフ研究センター)