オールライフマガジンALL LIFE MAGAZINE

「お年寄りのこころ学」その22

2017年01月13日

 今回も実話での認知症のお年寄りへの対処事例・成功事例をご紹介します。見守る側の接し方や態度により、当人の心身の安定度が増し、介護する側のストレスも減ることを学びます。

■大学受験の子どもを持つ母Aさんは実母Bさん(82才・認知症に気づいて医師にはかかっていたが介護保険は使っていなかった)と同居しており、専業主婦として介護をしていました。ただ受験生を持つ母親としてBさんへの気配りと子どもへの気配りで、へとへとになり、気分が落ちこむと同時にBさんへのいら立ちが日々増してくるようになりました。一方、Bさんは外部の人間が家へ入ることを嫌がり、介護保険制度の入り口である訪問調査さえも頑として拒否していました。

(対応例) 
きっかけはテレビの番組で、認知症と上手に付き合う方法や認知症薬や訓練により認知症の進行を遅らせることができることを知り、もう一度努力してみることにしました。Bさんが数十年お世話になっている医師には信頼を寄せていることに着目して、医師に相談に行きました。打ち合わせも進み、毎月の診察(高血圧と認知症の薬を処方)時に医師から『○○さんは長生きできる人だからもっと外へ出て体を動かしたらいいですよ。おっくうでも先方から車で迎えに来てくれます。ぜひお試しでも良いから週に1度でもデイサービスに行ってみましょう』とすすめられ、介護保険を使う段取りをすすめました。かかりつけの医師に長生きできると(お世辞でも)言われたことがうれしかったようで、デイサービス利用の動機づけになったようです。週1回が現在は週2回のデイサービス利用になりました。また、家のあちこちに手すりをつけたり、風呂場に工夫をしたりと介護保険を使っています。Aさんも自分の時間が持てるのでストレスは飛躍的に少なくなりました。

また、Aさん自身が多少とも認知症を勉強したことで、Bさんの症状や発言を「わがまま」や「言っていることが変」「何度同じことを聞かせるの」という捉え方でなく、「病気がBさんをそうさせている」という捉え方ができるようになってきました。
そうなると、同じ話を聞いていても「この話をしている時は、母さんは機嫌が良いんだよね」というようにイライラせずに聞けるようになりました。この変化は家族間の『楽しみのための会話』から、認知症の
人を『支援する会話』への上手な移行といえます。

以下はAさんが参考にした「介護を楽にするヒント」です
・できることには、手も口も出さない。危険なこと以外は、見守る
・できないことは、無理にやらそうとするのでなく、手を貸す
・説得一本槍は時間の無駄となることが多い
・これまでの介護者の生活パターンはできる限り変えない
・遠くの親戚よりも近くのケアマネジャーと介護保険事業所
・自分の自由時間を持つ、介護を生活のすべてではなく、その一部にする

もう一つ、思い切った工夫としては、子どもの受験の直前数週間は、比較的近くのウィークリーマン
ションを借りて、家の中の雑音をシャットアウトして、受験に臨ませてあげました。結果、希望校に
受かったそうです。長期ではお金がかかりすぎますが、一定期間であれば十分に実現可能な支援
と言えるでしょう。もちろんすべての人に当てはまるのではなく、環境を変えない方が良い受験生
もいることは付言しておきます。

このケースは親身になって相談できる医師がいたことが幸いしていますが、患者側から壁を作らずに素直に相談すれば、きっと強い味方になってくれるはずです。もし、真剣に相談しても、木で鼻をくくるような対応の医師であれば、医療機関を代えることも必要なことかもしれません。

(監修:アイエムエフ研究センター)