オールライフマガジンALL LIFE MAGAZINE

高齢者の家庭内事故を防ぐために15

2018年06月18日

■テーマ 介護保険・通所リハビリ中のケガ
-当人の状況
 女性Aさん89才、認知症(記憶障害による)で要介護1、息子夫婦と二世帯同居、
 配偶者は6年前に他界。3年前から認知症と診断されて、調理は火の消し忘れがあることから
 3食とも差し入れまたは一緒に食べている。その他は概ね自力で生活している。
-ケガの状況
 週3回のデイサービスを利用しているが、リハビリ中に逸れたボールを追いかけて転倒した。
 その際にそばに置いてあったエアロバイクとともに倒れたため、サドルで胸を打って肋骨を
 3本骨折してしまった。家族は寝たきりになるのを恐れて、骨折が治ってからも、「リハビリはしないように」
 介護事業者に要望を出した。

■知恵と工夫
・まず、一般論で事業所の責任について言うと、当人にとってリハビリが有効と評価されている
 前提でのリハビリ中の予測できない怪我は、介護事業所に賠償責任は生じません。ただし、今回
 のケースでは、すぐ横にエアロバイクが設置してある状況(運動スペースが狭い)でのボール
 リハビリは、事業者の安全配慮義務が不足している可能性はあります。
・本質的な問題点は、家族が「転倒は困るからリハビリはさせない」という姿勢です。
 せっかくデイサービスに参加しても、1日中イスに座りっぱなしでは、体力・筋力は衰えて、
 結果的に転倒リスクを高めることに繋がります。さらにデイサービスにも出ないことになれば、
 将来、寝かせきりに近づくことにもなります。寝かせきりの少ない欧米でも座らせっぱなしに
 より「お尻や肘に褥瘡ができる」というケースもあるくらいです。
・大切なことは家族と事業者が話し合い、真の自立に向けた対策を共有することです。当人に合っ
 たリハビリの種類や強度を工夫することで、より安全に自立支援に資することが大切です。
 事業所としても、家族の要望だからリハビリはさせないという方針は、介護保険の主旨(自立支
 援)からむしろ離れていくことになります。
・さらに、「転倒の原因=動くこと」ではないという点も理解しておく必要があります。
 意外に多い転倒理由の一人に「薬の副作用」があります。降圧剤や安定剤には、ほとんどと言っ
 て良いくらい、眠くなる副作用があります。眠くなり意識の覚醒が保たれていない状況では転倒
 リスクは一挙に高まります。
 転倒した時間と服薬時間の関係等についても注視して、服薬とリハビリを考えてみることも覚え
 ておきたいものです。

 (監修:イーケアサポート 榎本三千雄  PT 志垣健一朗)