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介護保険制度改定のポイントと今後の動向

2015年03月07日

2015.3月トピックス  介護保険制度改定のポイントと今後の動向

 2015年度の介護保険制度改定の内容が確定した。大きな話題を呼んだことは「介護報酬の引き下げ(▲2.27%)」である。引き下げは9年ぶりである。国側は「儲けすぎている事業者がいる」という理由を引き合いに出しての引き下げであるが、認知症をはじめ介護問題が取り沙汰されているなかで批判も多くある。一方で、業界水準として低い賃金水準にある介護現場の賃金に配慮して、1万2千円の処遇改善加算も盛り込まれている。また、低所得者層への負担配慮も盛り込まれている。いずれにしても介護保険制度スタート時から3倍近くになった介護給付費を抑制する意図を明確に読み取ることができる。ここでは具体的な改定のポイントを抜粋して解説し、かつ今後の方向性を見ていきたい。

■2015年度改定のポイント

1.サービス利用負担額の引き上げ(1割→2割 *一定以上所得者対象)
これまで一律1割に据え置いている利用者負担について、相対的に負担能力
のある一定以上の所得の方の自己負担割合を2割とする。

・自己負担2割とする水準は、モデル年金(厚生年金)や平均的消費支出の水準を上回り、かつ負担可能な水準として、被保険者の上位20%に該当する合計所得金額160万円以上の者(単身で年金収入のみの場合280万円以上)を想定している。厚生労働省は現在の在宅サービス利用者の約15%、特別養護老人ホームの入居者の約5%が2割負担になるとみている。

今後については、一律2割負担になっていくと捉えるのが自然である。今回の改定はその前哨戦と捉えることもできよう。

・補足給付の見直し
平成17年から特別養護老人ホーム等にかかる費用のうち、食費及び居住費
は自己負担が原則となっているが、低所得者に関しては補足給付を行い負担
を軽減している。今回の改定からは預貯金もチェックし、たとえ所得が低くても、単身で1,000万円、夫婦で2,000万円を超える預貯金を持つ場者は、補助の対象から外されることとなる。
ただし、自己申告に基づく方法で調査が行われるので、実効性には疑問が残る。

2.高額介護サービス費の上限が引き上げ
介護サービスは要介護度ごとに、1カ月の1割負担で利用できる上限額が決まっている。例えば、要介護5なら約36万円だが、自己負担割合は1割のため、月の自己負担額は約3万6,000円となっている。しかし、年金収入が少なかったり、夫婦で介護サービスを利用していたりすると、家計の負担が重くなることもある。こうしたときに役に立つのが「高額介護サービス費制度」。公的医療保険における「高額療養費制度」同様に、所得に応じて1カ月の自己負担限度額が決まっていて、それを超えると払い戻される仕組みになっている。

・「高額介護サービス費」では、一般の課税世帯の限度額は月3万7,200円であるが、2015年8月から新たに所得区分が1つ増え、公的医療保険制度で現役並み所得(単身で年金収入のみで383万円以上、2人世帯で同520万円以上)に相当する人がいる世帯は、「高額介護サービス費」による自己負担限度額が従来の3万7,200円から4万4,400円へと引き上げられる。

       高額介護サービス費制度における自己負担限度額

区分

自己負担限度額

現役並み所得

44,400円

一般

37,200円

市町村民税世帯非課税等

24,600円

 

年金収入80万円以下等

15,000円(個人)

生活保護被保護者等

15,000円(個人)等

(参考資料:厚生労働省)



3.低所得層への保険料負担軽減
1号被保険者(65歳以上の高齢者)が支払う介護保険料は保険者(市町村)によって基準額が異なるが、所得が低い人は段階的に保険料が軽減される仕組みになっている。この軽減率が2015年4月から拡大される。
軽減の対象になる人は、世帯全員の市町村民税が非課税か、本人が非課税であることが前提。対象となれば次のように保険料負担が軽くなる。

       介護保険料軽減の対象者と軽減率

2015年3月末までの保険料

2015年4月以降の保険料

生活保護被保護者、世帯全員が市町村民税非課税の老齢福祉年金受給者等

基準額×50%

基準額×30%

世帯全員が市町村民税非課税かつ本人年金収入等80万円以下等

世帯全員が非課税かつ本人年金収入等80万円超120万円以下

基準額×75%

基準額×50%

世帯全員が市町村民税非課税かつ本人年金収入120万円超等

基準額×75%

基準額×70%

(参考資料:厚生労働省)


4.特別養護老人ホームへの入所基準の厳格化
介護保険の施設である「特別養護老人ホーム」の入所待ちは全国で約52万人とも言われており、深刻な施設不足に陥っている。そのため、2015年4月から入所条件が設けられ、原則新規入所は要介護3以上の人に限定されることとなる。
なお、この「要介護3以上」の制限は新たに特別養護老人ホームに入所する人の基準で、現在すでに特別養護老人ホームに入居中の人は、要介護1、2であっても、そのまま住み続けられる。また要介護度が1、2と低くても、所定の「やむをえない事情」に該当する場合は、新規入所できることとしている。
「やむを得ない事情」の例
・認知症高齢者であり、常時の見守りや介護が必要
・知的障害や精神障害なども伴って、地域で安定した生活を続けることが 困難
・家族等による虐待が深刻であり、心身の安全・安心の確保が不可欠
などが挙げられている。

ただし現実には、各保険者はすでに入居の優先順位を点数化(要介護度、日常生活動作や家庭内介護力、経済力等を点数化して合計)して運営しており、現時点においても、要介護度2以下では入居条件の点数が足りず入居できないのが実情である。今回の改定はそれを明文化したと捉えることもできよう。
したがって、国側は「在宅サービス」の一層の拡充、「サービス付高齢者住宅」(在宅サービスの範疇)を推進していくことになる。特別養護老人ホームは救貧型の施設に近づき、中間層は、24時間サービスを用いた在宅サービスやサービス付高齢者住宅を選択していくことが想定される。

 5.予防訪問介護・予防通所介護サービスが市町村の「総合サービス事業」に
移行(3年以内)
「要支援」は介護予防と言われている領域で、予防リハビリや買い物や調理等の生活面支援を行うものである。予防給付のうち、予防訪問介護と予防通所介護についてのみ、2015年4月より3年という猶予を設けて「医療介護総合確保推進法」を基に、「市区町村が取り組む地域支援事業」に移されることになった。
移行後は「総合事業」と呼ばれるサービスになり『多様なサービス』『多様な事業者』によるサービス提供で、選択の幅が広がるとしている。

具体的には以下のイメージが例示されている。
「予防訪問介護」
   ①既存の事業者による身体介護・生活援助
   ②NPO、民間事業者による生活支援
   ③住民ボランティアによるゴミ出し等の生活支援    

「予防通所介護」
   ①既存の事業者による機能訓練等の通所介護
   ②NPO、民間事業者によるミニデイサービス
   ③コミュニティサロン、住民主体の交流等
   ④リハビリ、栄養、口腔ケア等専門職が関与する教室

これまでは、全国一律のサービスだったものが、市区町村に移行することで、市区町村の財政状態や運営者により、サービス内容や利用料に差が出る可能性が出てくる。また、NPOやボランティアの力も動員するため、多様なサービスの提供が可能になる。したがって、地域により実施スピードも含めてサービスに差が出てくることは避けられないだろう。さらに言えば今回の「要支援サービスの地域移行」から「要支援」が介護保険から外れる可能性を読み取ることができる。

(参考資料:厚生労働省)